【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.10】1.1 Communication 統合・実践編ーーー組織開発において「コミュニケーションを武器にする」とはどういうことか
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発*を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。
※CPTDとは
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
1. Communicationを「スキル」ではなく「介入」として捉え直す
ここまで、1.1 Communicationでは以下の7つの理論を扱ってきました。
Authentic Communication(真正性)
Strategic Message Design(戦略的メッセージ設計)
Relationship-Based Communication(関係性)
Data Storytelling(データと意味)
Emotional Regulation & Anger Defusion(感情と怒り)
Feedback as a Developmental Intervention(介入としてのフィードバック)
Questioning & Dialogue(問いと対話)
これらに共通する前提は一つです。
コミュニケーションは、
中立的な手段ではなく、
組織に影響を与える“介入”である
という考え方です。
2. 7つの理論は「順番」に意味がある
これらの理論は、好きなものを単発で使うためのものではありません。
積み上げ型の構造を持っています。
Communicationの階層構造
Authentic Communication
└ 信頼の前提がなければ、何も始まらないStrategic Message Design
└ 目的・相手・行動が設計されていなければ、伝わらないRelationship-Based Communication
└ 単発の説得では、変化は持続しないData Storytelling
└ 感情と論理をつなげなければ、意思決定は起きないEmotional Regulation & Anger Defusion
└ 感情を扱えなければ、対話は止まるFeedback as a Developmental Intervention
└ 行動に触れなければ、学習は起きないQuestioning & Dialogue
└ 問いがなければ、組織は自ら考えなくなる
この順番を飛ばすと、Communicationはテクニック化します。
3. 実践で使うための「統合フレーム」
組織開発の現場でCommunicationを使う際、
次の5つの問いを自分に投げかけます。
① 信頼はあるか(Authenticity)
この場で、自分は本音と責任を一致させているか
② 目的は明確か(Design)
何を変えたいのか
誰のどんな行動を想定しているか
③ 関係性は積み上がるか(Relationship)
このやり取りは、次の対話につながるか
④ 感情と意味は扱われているか(Emotion & Data)
今、どんな感情が存在しているか
データは「意味」として語られているか
⑤ 学習は起きているか(Feedback & Dialogue)
行動に触れているか
問いが、相手の思考を引き出しているか
この5つの問いは、Communicationのセルフ診断ツールになります。
4. よくある失敗パターンと理論的処方箋
ケース①
「説明はしたのに、現場が動かない」
問題:Strategic Message Design不足
処方:
Bottom Lineは明確か
相手にとっての価値は語られているか
ケース②
「反発や怒りが強く、議論にならない」
問題:Emotional Regulationの欠如
処方:
怒りを情報として扱っているか
防衛的になっていないか
ケース③
「合意は取れるが、変化が続かない」
問題:Relationship-Based Communication不足
処方:
信頼残高を消費していないか
対話可能性は残っているか
ケース④
「フィードバックが形骸化している」
問題:Feedbackが評価化している
処方:
行動と人格を分けているか
学習の選択肢を示しているか
5. Communicationが強いHRとは何者か
CPTDの文脈で言う「Communicationが強いHR」とは、
話がうまい人
説明が分かりやすい人
ではありません。
組織の“意味の流れ”を設計し、
感情と関係性を扱いながら、
学習と行動を引き出せる人
です。そのためには、話す前に考えるべきことが増えます。
6. Communicationは「最も地味で、最も強力な介入」
制度を変えなくても、人を入れ替えなくても、
問いが変わる
フィードバックが変わる
データの語られ方が変わる
だけで、組織は確実に変わります。
Communicationとは、日常に埋め込まれた組織開発装置です。
7. 1.1 Communicationのまとめ
Communicationはスキルではなく介入である
7つの理論は統合して使う
問いと対話が、組織を学習させる
HR自身の在り方が、最も強いメッセージになる
ここまでが、CPTDが定義するCommunicationの全体像です。
次回予告
次回からは、
1.2 Emotional Intelligence(感情知性) に進みます。
なぜ感情知性は「優しさ」ではないのか
リーダーシップと感情の関係
組織開発における自己認識の重要性
を、Communicationと接続しながら解説していきます。
最後まで読んで頂き有難うございました。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座を展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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