【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.49】2.3-2 Managing Difficult Situations & Diverse Learnersーーーなぜ「難しい参加者」は、排除すべき存在ではないのか
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発"を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。
※CPTDとは
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
本記事は、CPTDの能力要件に基づく
2.3 Training Delivery & Facilitation の各論:Managing Difficult Situations & Diverse Learners 編です。
1. 「難しい参加者」という言葉の罠
研修やワークショップの現場で、よく聞かれる言葉があります。
発言しない人
批判的な人
話を独占する人
斜に構えた態度の人
これらはまとめて「難しい参加者」と呼ばれます。
しかしCPTDの視点では、
難しいのは「人」ではなく、その人と場の相互作用
です。
2. 抵抗は「敵」ではなく「情報」
参加者が抵抗を示すとき、
腕を組む
発言しない
批判的になる
といった行動が見られます。
これを「やる気がない」と判断すると、ファシリテーションは止まります。
しかし学習科学では、
抵抗は、その人の前提や不安を示す重要な情報
と考えます。
3. 難しい状況を生む3つの要因
Difficult Situations は、主に次の3つから生まれます。
心理的安全性の不足
目的の不明確さ
役割や期待の曖昧さ
これらは個人の問題ではなく、
設計と運営の問題
です。
4. 批判的な発言への対応
批判的な発言が出たとき、ファシリテーターは防御的になりがちです。
しかし重要なのは、
その発言の背後にある意図を探ること
例えば、
「現場では無理です」
→ 現実とのギャップへの不安「理想論ですね」
→ 実装可能性への疑問
といった背景が隠れています。
5. 発言しない参加者をどう見るか
沈黙している参加者を、
非協力的
消極的
と決めつけるのは早計です。
熟考している
発言のタイミングを測っている
心理的安全性を測定している
可能性もあります。
重要なのは、
発言を強制するのではなく、参加の選択肢を増やすこと
です。
6. 多様性(Diversity)は難しさの源泉か、資源か
Training Delivery における多様性は、
年齢
役職
文化背景
学習スタイル
など、多岐にわたります。
多様性がある場では、
認識のズレ
解釈の違い
が起きやすくなります。
しかしCPTDでは、
多様性は摩擦の源ではなく、学習を深める資源
と捉えます。
7. インクルーシブな場づくり
Diverse Learners を扱うためには、
全員が発言できる場ではなく、
全員が「存在していていい」と感じられる場
をつくることが重要です。
具体的には、
ルールの明確化
発言方法の複線化(口頭・チャット・個人ワーク)
少人数対話の活用
などがあります。
8. ファシリテーターの立ち位置
Difficult Situations では、
中立を保つこと
すぐに解決しようとしないこと
が重要です。
ファシリテーターは、
問題を解決する人ではなく、
問題が扱える場を守る人
です。
9. 組織開発プロフェッショナルが立てるべき問い
Managing Difficult Situations & Diverse Learners の視点から、
HR・組織開発プロフェッショナルは次の問いを立てます。
今、誰の声が聞こえていないか
抵抗の背後にある前提は何か
自分はどの意見に反応しているか
この摩擦は、学習につながっているか
これらの問いが、難しい場面を学習の機会に変えるのです。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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