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【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.95】3.7-2 Data Analytics Project:最初の一歩をどう踏み出すかーーー「クイック・ウィン」を勝ち取る5つのステップ

なぜ書くか

様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。

Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。

本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発"を軸に、

  • なぜ今、その理論が重要なのか

  • 組織で何が起きているのか

  • HRはどのような問いを立てるべきなのか

を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。

※CPTDとは

ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。

本記事は、CPTD能力要件 "3.7 Data & Analytics" の実践・プロジェクト管理編です。 「データが大事なのはわかった。でも、膨大なデータの前で何から手をつければいいのか?」 そんな悩みを持つ方に贈る、分析プロジェクトを「確実に成功させる」ための実働ガイドです。


1. 最初のプロジェクトに「壮大な計画」はいらない

データ分析を始めようとすると、つい「全社的なデータ基盤の構築」や「AIによる高度な予測モデル」といった壮大なプロジェクトを想像してしまいがちです。しかし、CPTDでは**「Quick Win(短期間で得られる確かな成果)」**を最優先します。

なぜなら、データ活用がまだ浸透していない組織では、まず「データはこれほどまでに意思決定の役に立つ」という成功体験を経営陣に示すことが、その後の予算やリソースを確保するための絶対条件だからです。


2. 成功するプロジェクト選定の「3条件」

最初に取り組むべき分析テーマを選ぶ際、以下の3つのフィルターを通してください。このフィルターを通らないプロジェクトは、途中で迷走するリスクが高まります。

  1. 明確なビジネス課題(Identify a business problem): アウトカム(結果)が明確なものを選びます。「なんとなくエンゲージメントを知りたい」ではなく、「なぜA部門の生産性が急落しているのか?」といった、解決すべき具体的な問いがあるか。

  2. データへのアクセス(Access to data): 現時点で手に入るデータを使います。新しいシステムを導入したり、大規模なアンケートを設計したりする前に、既存の勤怠、評価、採用データでできることを探します。

  3. クイック・ウィン(Quick Win): 3ヶ月以内に洞察(インサイト)が得られ、経営層が「それは面白い、もっと詳しく知りたい」と身を乗り出すようなインパクトがあるか。


3. データを成果に変える「5つのステップ」

実際に分析プロジェクトを動かす際、ATDは以下の体系的なプロセスを推奨しています。

ステップ1:問いを定義する(Define the question)

分析の成否はここで決まります。「何を知りたいか」ではなく、「何を決めるために、どのデータが必要か」を言語化します。

ステップ2:測定基準を定める(Set clear measurements)

「活躍」や「生産性」といった曖昧な言葉を、どの指標(KPI)で測るのか、ステークホルダーと事前に合意します。

ステップ3:データを収集する(Collect the data)

必要なデータを集めます。ここでは、前回のVol.94で触れた「データの整合性(Integrity)」を保つことが、分析結果の信頼性を左右します。

ステップ4:データを分析する(Analyze the data)

Vol.93で学んだ4つのスペクトル(記述・診断・予測・処方)を使い、数字の裏にあるパターンを読み解きます。

ステップ5:結果を解釈し、提案する(Interpret the results)

数字から「意味」を抽出します。単なる結果報告ではなく、**「ビジネスにとってどのような意味があり、次に何をすべきか」**というストーリーを構築します。


4. ステークホルダーを味方につける「パワー分析」

分析プロジェクトは、人事だけで完結させることはできません。 CPTDでは、ステークホルダー(経営陣、IT部門、現場マネジャーなど)のパワー(権限)と影響力を事前に分析することを求めています。

  • 誰がこの分析結果を切望しているのか?(強力なスポンサー)

  • 誰の協力があれば、データへのアクセスがスムーズになるのか?(ゲートキーパー)

  • この結果によって、誰が「不都合(既得権益の侵害)」を感じる可能性があるか?(潜在的な抵抗勢力)

これらを把握し、適切に巻き込むことで、分析結果が「机上の空論」で終わるのを防ぎます。


5. 組織開発プロフェッショナルが立てるべき問い

  • 私たちが計画しているプロジェクトは、**3ヶ月以内に「Quick Win」**を出せる規模ですか?

  • データの収集(Step 3)に時間をかけすぎて、**問いの定義(Step 1)**がおざなりになっていませんか?

  • その分析結果が示されたとき、**経営陣の「反対意見(Objections)」**を想定し、先回りしてデータを用意できていますか?


次につながる視点

データを収集し、分析し、ステークホルダーを巻き込んでプロジェクトを動かす術を学びました。これで「3.7 Data & Analytics」の主要な武器は揃いました。

しかし、データによって導き出された「未来の予測」や「あるべき姿」に対し、組織そのものが変化に適応できなければ、宝の持ち腐れです。

次回からは、いよいよSection 3の最終章、 👉 Vol.96:3.8 Future Readiness ーーー不確実な未来を「強み」に変える組織のOS を扱います。 イノベーション、アジャイル、ワークプレイスのデジタル化。加速する未来に対し、HRはどう先手を打つべきか。その全貌を解き明かします。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 まずは手元のデータから、小さな「問い」を立てることから始めてみましょう。


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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。

2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。

保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他


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