【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.48】2.3-1 Facilitation Skills & Group Dynamicsなぜ「場が重い」とき、ファシリテーターは焦ってはいけないのか
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発"を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。
※CPTDとは
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
本記事は、CPTDの能力要件に基づく
2.3 Training Delivery & Facilitation の各論:Facilitation Skills & Group Dynamics 編です。
1. ファシリテーションは「うまく回す技術」ではない
多くの場合、ファシリテーションは
スムーズに進めること
時間通りに終わらせること
参加者に発言させること
だと理解されます。しかしCPTDの視点では、
ファシリテーションとは、
集団の中で起きている“力学”を扱う専門性
です。
2. Group Dynamics(集団力学)の前提
2人以上が集まると、必ず「力学」が生まれます。
発言が偏る
影響力が集中する
暗黙の役割が生まれる
これは個人の性格ではなく、
集団という構造そのものが生み出す現象
です。
ファシリテーターは、この力学を「消す」のではなく、
可視化し、扱う
役割を担います。
3. 沈黙は「失敗」ではない
場が静まり返ると、
多くのファシリテーターは焦ります。
話題を追加する
すぐに答えを出す
説明を増やす
しかし学習科学の視点では、
沈黙は、思考が動いているサイン
であることも少なくありません。
重要なのは、
この沈黙は「思考の沈黙」か、
「恐れの沈黙」かを見極めること
です。
4. 介入の3つの選択肢
ファシリテーターの介入には、
大きく3つの選択肢があります。
促す(Encourage)
構造化する(Structure)
待つ(Hold)
多くの失敗は、
常に「促す」を選んでしまうこと
から起きます。
5. 支配的な発言者への対応
どの集団にも、
よく話す人
影響力の強い人
がいます。
これを「止める」のではなく、
場全体の学習機会を守るために、バランスを取る
のがファシリテーションです。
例えば、
「他の視点はどうでしょう?」
「今の意見に違和感がある方は?」
といった問いで、力学を調整します。
6. 衝突は「問題」ではなく「資源」
意見の衝突が起きると、場は緊張します。しかしCPTDでは、
衝突は、深い学習が起きる入り口
と捉えます。
ファシリテーターの役割は、
衝突を止めることではなく
人格攻撃にならないように守ること
です。
7. ファシリテーターの自己管理
場の力学を扱うためには、
ファシリテーター自身の感情管理
が不可欠です。
不安
焦り
防衛
が強いと、
過剰介入や説明過多
に陥ります。これは、1.2 Emotional Intelligence とも接続します。
8. 「場を見る」ための観察ポイント
CPTDでは、ファシリテーションにおいて次の観察を重視します。
誰が話しているか
誰が話していないか
表情や姿勢の変化
笑いの質
これらはすべて、
集団力学のシグナル
です。
9. 組織開発プロフェッショナルが立てるべき問い
Facilitation & Group Dynamics の視点から、
HR・組織開発プロフェッショナルは次の問いを立てます。
今、この場でどんな力学が働いているか
自分は何に反応しているか
介入すべきか、待つべきか
学習は深まっているか、止まっているか
これらの問いが、
ファシリテーションを「技術」から「専門性」に変えます。
10. 次につながる視点
Facilitation Skills が整理できると、次に問われるのは、
「多様な参加者をどう扱うか」
です。
次回は、
2.3-2 Managing Difficult Situations & Diverse Learners
として、
難しい参加者への対応
抵抗の扱い方
多様性を活かす場づくり
を解説します。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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