【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.44】2.2 Instructional Design(導入編)ーーーなぜ「良い内容」だけでは、人は学ばないのか
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発"を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。
※CPTDとは
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
本記事は、CPTDの能力要件に基づく
2.1 Learning Sciences の各論:Practice, Feedback & Learning Transfer です。
1. Instructional Designとは何を扱う領域か
Instructional Design(ID)とは、
人が学び、行動を変えるための学習体験を、
再現可能な形で設計するための理論と方法論
です。CPTDでは、IDを
教材づくり
研修設計のテクニック
としてではなく、
Learning Sciences を実務に翻訳するための中核能力
として位置づけています。
2. なぜ「内容が良い研修」は失敗するのか
HRがよく直面するのは、次のような状況です。
専門家が作った内容
情報としては正しい
受講者の満足度も高い
それでも、
行動が変わらない
現場で使われない
という結果になる。これは内容の問題ではありません。
学習体験として設計されていない
ことが原因です。
3. Instructional Designは「順番」を扱う学問である
IDの本質は、
何を教えるかではなく、
どの順番で、どの体験をさせるか
にあります。同じ内容でも、
先に考えさせるか
先に答えを示すか
で、学習効果は大きく変わります。
4. CPTDがIDを独立領域として扱う理由
CPTDでは、IDを
Learning Sciences の一部
Training Delivery の下位概念
には置いていません。理由は明確です。
IDは、理論(Learning Sciences)と実践(Delivery)をつなぐ「設計思想」だから
です。
5. 良いIDと悪いIDの違い
良いIDには共通点があります。
学習のゴールが明確
行動変化から逆算している
実践とフィードバックが組み込まれている
一方、悪いIDでは、
内容が先に決まっている
時間割ありき
受講者は受動的
という特徴が見られます。
6. Instructional Designは「型」から始める
IDというと、
センス
経験
職人技
だと思われがちです。しかしCPTDでは、
IDは、再現可能な「型」から始めるべき
と考えます。代表的な型が、
ADDIE
SAM
Backward Design
といったフレームワークです。
7. なぜHRにIDが必要なのか
HRがIDを理解する意味は、
研修をうまく作るため
ベンダーと話すため
だけではありません。
学習施策を、「なんとなく」から「説明できる設計」に変える
ためです。IDがあることで、
なぜこの順番なのか
なぜこの方法なのか
を説明できるようになります。
8. 組織開発の視点から見たInstructional Design
組織開発の文脈では、IDは
個人学習を、組織の変化につなぐ設計技術
です。
個人で終わらせない
現場と切り離さない
行動と成果に戻す
この視点が欠けると、学習は組織に残りません。
9. 組織開発プロフェッショナルが立てるべき問い
Instructional Design の視点から、HR・組織開発プロフェッショナルは次の問いを立てます。
最終的に、何ができるようになってほしいのか
それは、どこで使われるのか
どんな体験が、その変化を生むのか
実践とフィードバックは組み込まれているか
これらの問いが、研修を「イベント」から「変化の装置」に変えます。
10. 本ブログにおける2.2の位置づけ
このブログでは、Instructional Design を
教材作成論
研修設計ノウハウ
としてではなく、
学習を成果に変えるための中核設計思想
として扱います。
次回予告
次回は、2.2-1 ADDIE Model & Needs Analysisとして、
なぜ分析(Analysis)から始めるのか
ADDIEは古いのか
HRが押さえるべきニーズ分析
を解説します。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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