【組織開発プロフェッショナルを目指す方へーVol.97】3.8-1 Cultivating Innovation:創造性を「個人の才能」から「組織の習慣」に変えるーーーデザイン思考とプロトタイピングの実装
なぜ書くか
様々な情報が飛び交う現代において、人事(HR)に求められる役割は年々高度化しています。一方で、日本に住む約1億人の多くが、グローバルでの最新のHRの取り組みやアカデミックな知見に体系的に触れる機会を十分に持てていないのが現状です。
Every Inc.では「日本のHRをもっとグローバルに」というビジョンを掲げ、グローバルな取り組みや学術的文献、先端企業の実践事例をもとに、HRに関する知見を発信しています。
本ブログでは、「日本ならでは」「日本では難しい」という枠組みではなく、“グローバルスタンダードとしてのHR・組織開発"を軸に、
なぜ今、その理論が重要なのか
組織で何が起きているのか
HRはどのような問いを立てるべきなのか
を整理していきます。本ブログでは、CPTDの能力要件を軸に、
組織開発を支える理論と実務をつなぐ視点を提供しています。
少しでもこの領域を楽しんでくださる方が増えたら嬉しいです。
※CPTDとは
ATD(Association for Talent Development)は、世界最大の人材開発(Talent Development)に特化したプロフェッショナル団体であり、個人・組織の能力開発に関する国際的な標準をリードしています。そのATDが提供するCPTD(Certified Professional in Talent Development)およびAPTD(Associate Professional in Talent Development)は、人材育成・組織開発・学習設計・パフォーマンス改善といった領域において、実践力と専門性を証明する世界有数の資格です。
本記事は、CPTD能力要件 "3.8 Future Readiness" の実践編です。 「うちの会社にはクリエイティブな人材がいない」 「イノベーションなんて、一部の企画部署が考えることだ」 もし組織にそんな空気が流れているとしたら、それは個人の能力の問題ではなく、組織の「設計」の問題かもしれません。
1. イノベーションを支える「デザイン思考」の5ステップ
グローバルスタンダードな組織開発において、イノベーションを形にするための強力なフレームワークが**デザイン思考(Design Thinking)**です。これは単なる「おしゃれなデザイン」の手法ではなく、未知の課題に対して解決策を導き出すための「思考プロセス」です。
Empathize(共感): ユーザー(顧客や従業員)が本当に困っていることは何か、観察と対話を通じて徹底的に理解します。
Define(定義): 集まった情報から、「解決すべき真の課題(問い)」を絞り込みます。
Ideate(概念化): 批判を排し、質より量でアイデアを出し合います。
Prototype(試作): 完璧を目指さず、まずは形にします。
Test(テスト): 実際に使ってもらい、フィードバックを得て改善を繰り返します。
HRの役割は、このプロセスを「人事制度の設計」や「社内課題の解決」に自ら取り入れ、その文化を現場に波及させることです。
2. 創造性を加速させる「リーン・アプローチ」
デザイン思考とセットで語られるのが、**リーン(Lean)**な進め方です。 「時間をかけて100点の計画を作る」のではなく、「最小限の機能(MVP: Minimum Viable Product)」で素早く市場や現場に問い、学習を積み重ねる手法です。
Build(構築): 最小限のコストで試作を作る。
Measure(計測): 反応をデータで測定する。
Learn(学習): 予測と結果のズレから学び、次に活かす。
このサイクルを高速で回すこと自体が、組織の「学習能力(Learning Agility)」を高め、不確実な未来への最強の備えとなります。
3. HRが「創造性の土壌」を作るための3つの仕掛け
組織の中にイノベーションを定着させるために、HRが設計すべきインフラは以下の3点です。
① 「失敗のコスト」を劇的に下げる
失敗を叱責する組織では、誰も新しい挑戦をしません。
アクション: 失敗を「不成功」ではなく「有効なデータの獲得」と定義し直します。前回扱った「実験マインドセット」を評価制度や表彰制度に組み込みます。
② 心理的安全性と多様性の担保
似たような考え方の人ばかりが集まっても、イノベーションは起きません。
アクション: 異なるバックグラウンドを持つ社員が衝突を恐れずに意見を戦わせる場を設計します。反対意見が「個人への攻撃」ではなく「アイデアへの貢献」として扱われる心理的安全性を醸成します。
③ インセンティブ(報酬)の再設計
「既存の業務をミスなくこなすこと」だけが評価される仕組みでは、イノベーションは阻害されます。
アクション: 成果だけでなく、「挑戦のプロセス」や「他者のアイデアへの貢献」を認める加点主義的な評価軸を導入します。
4. 組織開発プロフェッショナルが立てるべき問い
私たちは、現場の「違和感」や「不満」を、**イノベーションの種(共感のフェーズ)**として捉えていますか?
私たちのプロジェクトは、時間をかけて「壮大な失敗」をしようとしていませんか? **小さく試して早く学ぶ(プロトタイプ)**仕組みはありますか?
組織のトップは、自ら「正解を持っていないこと」を認め、実験の文化を後押ししていますか?
次につながる視点
創造性をプロセスとして管理し、イノベーションを生む土壌を整えました。しかし、これらすべての活動を支えるのは、働く「場所」と「テクノロジー」の進化です。
次回は、 👉 Vol.98:Digital Workplace & Performance ーーー「物理的な場所」を超えて成果を最大化する を扱います。 リモートワーク、ハイブリッドワーク、そしてAIツールの浸透。変化し続ける「ワークプレイス」において、HRはどうエンゲージメントと生産性を両立させるのか。その解決策を探ります。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 個人の才能に頼るのではなく、プロセスと文化で未来を切り拓くHRを目指しましょう。
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執筆者紹介:松澤 勝充

神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供する Berkeley Hass Global Access Program にJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。
2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発したプログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座などを展開している。
保有資格:
SHRM-SCP(SHRM)
CPTD(ATD)
Senior Professional in Human Resources – International (HRCI)
Global Professional in Human Resources (HRCI)
The Science of Happiness(UC Berkeley)他
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