見出し画像

環境特性からアンケート結果を読み直す

▪️「肯定的だが、伸びない」結果は何を示しているのか

ここまで、
人口、歴史、産業、そして現在の環境特性という順に、
赤平という地域を取り巻く条件を整理してきた。

この回では、
それらを踏まえた上で、
改めて全国学力・学習状況調査に含まれる
アンケート結果を読み直してみたい。

これまで見てきたように、
赤平では学力、特に中学校数学において
全国平均を下回る傾向が長く続いている。

一方で、同じ資料の中には、
次のような項目が比較的高い水準で推移している。
・ものごとを最後までやり遂げた達成感
・将来の夢や目標を持っている
・人の役に立ちたいと思っている
・規範意識・道徳に関する項目
・自己肯定感に近い設問

一見すると、
「学力は低いが、自己評価は高い」という
ちぐはぐな結果にも見える。

しかし、9本目で整理した
赤平の環境特性を前提にすると、
この結果は必ずしも矛盾ではないように思えてくる。

▪️「できるか」ではなく「どう振る舞うか」を問う設問

まず押さえておきたいのは、
これらのアンケート項目が測っているのは
能力そのものではない、という点だ。

これらは
「どれだけできるか」ではなく、
「自分をどう捉えているか」
「どう振る舞うことが望ましいと感じているか」
を問う設問である。

つまり、
環境に適応した結果としての
“自己の捉え方”が反映されやすい。

▪️赤平の環境で合理的になりやすい回答

9本目で整理したように、
赤平には次のような環境条件が重なっている。
・人口規模が小さく、比較や競争が前面に出にくい
・失敗が目立ちやすく、回復ルートが見えにくい
・無理に挑戦しなくても、生活が大きく破綻しにくい
・関係性を壊さない振る舞いが重視されやすい

この環境においては、
・他者と競い合うよりも
・与えられた役割を無難にこなす
・波風を立てずにやり遂げる

といった振る舞いの方が、
心理的にも社会的にも合理的になりやすい。

そう考えると、
・「最後までやり遂げた」
・「人の役に立ちたい」
・「規範を守る」

といった自己認識が高く出ることは、
この環境への適応の結果として
十分に説明がつく。

▪️「将来の夢や目標」は何を指しているのか

一方で、
「将来の夢や目標を持っている」という項目については、
注意深く扱う必要がある。

アンケート結果からは、
その中身までは読み取れない。
・具体的な職業なのか
・安定を重視した進路なのか
・あるいは「ここから出たい」という思いなのか

いずれであっても、
選択肢が多い状態で描かれた夢なのか、
限られた前提の中で描かれた夢なのかによって、
意味合いは大きく変わってくる。

この点については、
「夢がある=将来に対して楽観的」と
単純には結びつけられない。

▪️自己肯定感の「高さ」が意味するもの

自己肯定感に近い項目についても同様だ。

これは、
「自分に満足している」
「今の状態を否定されにくい」
という環境の反映とも考えられる。

裏を返せば、
・無理に伸びなくてもよい
・成長を強く求められにくい

という構造の中で育まれた
安定した自己評価とも言える。

それは安心感につながる一方で、
環境が大きく変わったときには、
強いギャップや戸惑いを生む可能性もある。

▪️中学校数学の低さと、どうつながるのか

ここで、
中学校数学の結果と改めて重ねてみる。

数学は、
積み上げと抽象化が強く求められる教科であり、
「できなくても何とかなる」状態では
継続的な努力が生まれにくい。

また、
・比較されにくい
・競争が前面に出にくい
・成長の必要性が強く要請されにくい

という環境では、
「分からないままでも困らない」状態が
長く続きやすい。

その結果として、
・自己評価は安定している
・しかし、抽象的な学力は伸びにくい

という組み合わせが
生まれている可能性がある。

▪️評価ではなく、仮説として受け止める

ここまでの整理は、
赤平の教育や子どもたちを
評価するためのものではない。

また、
この結果を「問題」と断定するものでもない。

環境が違えば、
合理的な振る舞いも、
育ちやすい力も変わる。

アンケート結果は、
その環境に適応してきた結果として
現れている可能性が高い。

まずはそれを、
仮説として受け止めること。

それが、
「地域の特性を理解する」
次の一歩につながるように思う。

次回以降は、
こうした環境特性を前提にしたとき、
どのような学びや手段が
この地域に合い得るのか。

評価や理想論ではなく、
現実に即した視点から
考えていきたい。


いいなと思ったら応援しよう!