ClariSのアリスと武道館ライブを振り返る ~ClariS第三章に向けて~
はじめに
皆さん、こんばんは。伊勢です。
ClariSにとって怒涛であった2024年を終え、2025年はいかがお過ごしでしょうか?
ファン的には1月25日の「リスアニ! LIVE 2025」を控えていることもあり、ClariS第三章のスタートが今か今かと待ち構えている方も多いのではないでしょうか。私もドキドキソワソワしています。
そしてその舞台は武道館。ClariSにとって思い出の聖地である武道館にて新たな伝説の1ページが開かれることに高揚感を抱いています。
私も「リスアニ!」には参加しますが、武道館は久しぶりになります。(武道館ライブがもう8年前と言う事実には目を背けておきます。)
さてそんな今回は、迫るClariS第三章に向けて「アリス」と「武道館ライブ」について振り返る記事となります。この記事の中身は8年前の武道館ライブ直後から私が想い続けていたものであり、記事の原型も何年も前に完成しておりましたが、世に出す勇気はありませんでした。
理由としてはカレンの存在です。私は多くの人に重度のカレンオタクだと思われていますが、元を返せばアリス派でありました。彼女の卒業には大きく涙したものです。
カレンがアリスのポジションを継ぎ、困難な状況下で苦慮している姿を見ていたので、アリスをヨイショする内容の記事を世に出せない(出したくない)と思っていました。
しかし、カレンももう卒業してしまい、現状はクララだけのClariSになります。そんな今だからこそ世に出せる記事だと考えました。
そして武道館にて第三章が始まる今だからこそ、自分の心にもう一度あの時の気持ちを呼び起こしたいと思い、書き上げました。
私は”記憶”というものに忘却の概念はないと考えています。一般的に忘却と認識されている行為は忘却ではなく、ただ思い出せないだけで、記憶のプールの中に存在はしているはずです。なので重要なのは”忘れない”ことではなく、すぐに”思い出せる”ようにすることです。
何かの折に思い返さないと記憶のプールの奥底で澱となり、潜って見つけることが出来なくなってしまいます。8年前の武道館で体験した大切な気持ちを思い起こすために、この記事を書きました。
2025年1月25日に、特別な武道館の地で、特別なクララをもう一度迎えるための下準備となります。
ぜひ最後まで読んでいただけたら幸いです。
アリスについて
では本文に入るが、まずはアリスについて一度振り返ってみる。まずはアリスの音について。
アリスの音
私はプロの音楽家の端くれであるため、たまには音楽的な分析をしてみようと思う。とはいえ私は器楽がメインであって声楽の方は無知に等しい。そのためこの箇所は「声」という言葉を「音」に置き換えて使わせて頂く。楽器的な見方ということを示すためだ。
まず第一に言えることは、アリスの音は「上手く」はないと思う。
透き通ったクララの音と比較し、アリスの音は澄んでいない。音の均一さに乏しく、ところどころ不安定な部分も見られ、多くの「揺らぎ」が含まれている。平易な例えだと鼻声に近いイメージであろうか。
常にvibratoとrubatoが掛かっているかのような音。vibratoによって音の高さが上下に揺れ、rubatoによって音の速さが左右に揺れる。ほんのわずかであるが上下左右に揺れる音がアリスの特徴なのではないだろうか。tenutoとmarcatoの切り替えも顕著である。
テンポ・ルバート
音楽用語。音楽に表情を与えるため,演奏者が楽曲の一部分でテンポを微妙に変化させること。単にルバート,またほぼ同義でアゴーギクAgogik(ドイツ語)ともいう。
しかし、この「揺らぎ」は音楽的にマイナスなのではなく、むしろ大きなプラスとなっている。私の心はずっと前から掴まれてしまっている。
揺らぎの存在により、アリスの音の情報量は非常に多い。揺れる音からは彼女の一生懸命さ、必死さ、我武者羅さが伝わってくる。楽曲にグルーヴ感もプラスしている。
また、彼女の音はパイプオルガンちっくでもある(と個人的に解釈している)。私は自分の楽器の関係上パイプオルガン奏者さんと関わる機会が多いのだが、生のパイプオルガンの音は非常に素晴らしい。音とは空気の振動であり、その振動が直に伝わってくるパイプオルガンには圧倒される。そしてアリスの音も同様だ。生で聴いていないはずなのに彼女の音からは彼女の振動を感じられる。他の楽器だとバンドネオンにも近いかもしれない。
透き通った音というものは綺麗だが、それだけだと音楽的にはつまらないものでもある。
一般的な「上手さ」とは別軸の音が彼女のパーソナルな部分を示し、我々にエモーショナルな感情を与えてくれる。だからこそ彼女の歌声が好きなのだ。
やや話が逸れるが、上記の『Luna say maybe』という曲がある。今を時めく人気コンテンツである「学園アイドルマスター」の楽曲なのだが、(学マス自体は未プレイにも関わらず)胸を打たれてしまった。
歌唱している月村手毬(とCVの小鹿なおさん)の不安定さ、悲痛さ、淋しさが私の心を得も言われぬ感情に襲わせている。なんてずるい曲だ。
と思うと同時に、アリスっぽいと思った曲でもある。ちょうど同じくイメージカラーが青だし。先の私のアリス評についてはこの曲が近いかなと思ったので、ぜひ皆さん聴いてみて欲しい。
注:月村さんの音は揺らぎがあるのにも関わらず大変上手です。
叶うことならば、アリスによるカバーをいつか聴いてみたいものである。
アリスの5年間
次にアリスの活動について他の拙文と同じように、インタビュー内容から時系列順に振り返って行く。
アリス☆クララの始動
――ふたりが出会ったきっかけは?
アリス
「私とクララが同じ音楽スクールに通っていて。」
クララ
「アリスとは帰る方向が同じだったんです。だから、自然と一緒にいるようになって。」
――ニコニコ動画に歌を上げるようになったきっかけは?
クララ
「去年の秋ぐらいに、私がニコニコ動画の存在を知って、面白そうだなぁって思ってたんです。それをアリスにも話したら興味を持ってくれて。」
アリス
「面白そう!って。でも、動画のアップの仕方とかがわからないので、音楽好きの大学生のいとこのお兄ちゃんに相談してみたら……初音ミクのこととかいろいろ詳しくて。」
『irony』にてメジャーデビュー
――そして、「DROP」がきっかけで主題歌デビューが決まったけど、今どんな心境?
アリス
「実感は……正直、まだ全然(苦笑)。でも、幼稚園の頃から歌って踊れる歌手になるのが憧れだったので、最初にお話をいただいたときは本当に嬉しくて、涙が出そうになりました。」
アリスの夢
アリス
「私は小さい頃に、たまたまTVで安室奈美恵さんが歌いながら踊っているのを観て、歌いながら踊れる歌手になりたいなって思いました。」
――最後に、ふたりは今後どういう歌手になりたいかを教えてください。
クララ
「アリスと一緒に活動していって、大きなステージにも立てるような歌手になりたいです。」
アリス
「私は、ディズニーランドで歌えるようになりたいなって思っています!ディズニーがすごく大好きで、ある年カウントダウンを観にいったら、MISIAさんが出てきて。おじいさんから小さい子供まで、それを観ているお客さんみんなが感動していて。だから私もそういうふうに大好きなミッキーたちと一緒に、自分も楽しみながら、お客さんにも楽しんでもらえるような歌手になりたいです。」
学校生活の両立
――そして本格的な音楽活動が始まったわけですが、学校生活との両立への不安はなかった?
アリス
「最初はあまり不安を感じていなかったんですけど、いちばん大変だった時期は、テストの時期とレコーディングが被ってしまったときですね。歌手としての活動も、学校のテストにも慣れてなくて。テスト勉強もしたいけど、歌の練習もしなきゃいけないし、時間配分がうまくできなくて、今思うとひとりでテンパっちゃって、焦っていたな、って。」
クララとの日常
――(『君とふたり』のおしゃべりについて)あれはどうやって録ったの?
アリス
『ブースのなかに入って、「はい、おしゃべりしていいよ」って言われて。「え、何話せばいいの?」って(笑)。そうしたら今度は、「電話しているふうに」と言われたんです。でもクララから電話がかかってくるときって、いつも「もしもし?あのね、あのね…アリス、あのね…」の繰り返しなんですよ(一同笑)。「それじゃ会話の収録無理だわ」と言われて(笑)。だから、私は修学旅行に行った時の話をしています。」
クララ
「数ヶ月に1回、何か自分の中で爆発しちゃうんです。すごくお母さんに当たっちゃったりとか、いきなり泣き出したりとか。」
アリス
「クララが泣いているところ結構見るんですけど、泣けるのがいいなあと思って、私だとなかなか人前で泣けないというか、人前だと封印しちゃうんですよね。逆にうらやましいなあと。」
展望
(2011年の活動について)
アリス
「はい!あといつか、みなさんの前に立ってライブもやりたいと思っています。」
『コネクト』の大ヒット
――(『コネクト』の大ヒットについて)お友だちにももちろん内緒ですもんね。では、ご両親の反応はいかがでしたか?
アリス
「お父さんとお母さんとお兄ちゃんには、言ってるんですけど、弟には言ってなくて。でも弟が知らない間にアニメを観たりしていて、曲が流れるじゃないですか。弟はわかってるのかなって。普段、私が家で練習しているのとか聴いてて、「気づいてないの?」って思って。最近不思議でした。」
――ではおふたりが、歌い手としてデビューしてから現在に至るまで、変わったことはありましたか?
アリス
「成長したっていうのとはちょっと違うかもしれないんですけど、先日、大地震があったじゃないですか。その後、ツイッターを見せてもらったときに、被災地の方が私たちの「コネクト」を聴いて頑張ってるよ、みたいなのがあって、今そういう大変な状況に、私たちの曲を聴いて元気を出してもらえる、そういう存在になれたんだなっていうのはうれしかったです。」
高校生へ
――デビューしたてのころに、夢についていろいろとお聞きしましたが、約1年半が経って夢であったり目標に変化はありましたか?
アリス
「まずは高校生になるにあたって、手の届く範囲の目標を常に作って、それを毎日クリアしていければいいなと思っています。今までは漠然と遠くに夢や目標を考えていたんですけど、近くのことから目標を立てていこうかなって思っています。」
高校生活
――(『Wake Up』の)レコーディング中はどうやって歌のイメージを膨らませたりしていたのですか?
アリス
「学校に行く途中にこの曲を聴くと、すごく気持ちいいんですよ。特に晴れていると気分が良くて。そのときのイメージを歌にも活かしていくというか。」
クララ
「私は自転車通学なんですけど、アリスと一緒で曲を聴きながら投稿してました。そして完成した今も毎日聴いています!」
夢と進路
kz「今年高3になるけど、進路とか考えていることってある?」
クララ
「はい、うっすらと……。」
アリス
「どうしたらいいのかわからないことが多くて。やっぱり先のことってわからないから、今はまだ決められないというのが本音かも……。」
クララ
「今は……小さい頃から私は歌手になるのが夢だったんです。だから今は、目の前にあるClariSを頑張りたい、という思いが強いかもしれません。」
アリス
「シルエットでしたけど、初めてファンのみなさんの前で歌わせていただいて、経験したことない感動があって。それが今、私たちにとってとても大きな存在になっているかもしれません。」
そして卒業へ……

アリス
「本当にあっという間でしたが、かけがえのない時間となりました。学業を優先させるため卒業を決意しましたが、音楽を通して表現する事の楽しさ、人に何かを伝える事の楽しさを知りました。活動する上で、何度もの決断を繰り返し、「ありがとう」という感謝の気持ちの大切さを身にしみて感じる事が出来ました。沢山の方に出会い、触れ合う事で、物事の色々な考え方を知り、表現する上での“豊かさ”を学ばせてもらい、自分自身成長出来た事が何よりの財産です。」
(3rdアルバム『PARTY TIME』について)
アリス
「クララと過ごした5年は……もう戻ることのできない、かけがえのない時間。『PARTY TIME』はそんな私たちの日々の集大成にもなりました。」
以上がアリスについてのまとめである。改めて振り返ると、当たり前ではあるがクララとカレンに比べて情報が少ない。我々は彼女を十分に知る前に別れてしまったのだと思う。
卒業について分かっていることも「学業優先」という事実だけである。
ClariSから大切なお知らせ http://t.co/4J3bTCJZKb
— ClariS☆スタッフ (@ClariS_Staff) May 26, 2014
加えて2014年5月26日に発表され、6月4日に卒業を迎えたため、卒業に向けての心の準備期間や猶予期間はなかった。あまりにも突然過ぎた。
発表から卒業まで2か月弱の猶予があったカレンのパターンは非常に貴重であったのだと思う。
この期間に私は様々な取り組みをしてカレンを送り出す準備をすることができた。自分にできることを最大限行えたため、カレンの卒業に悔いはない。しかしアリスにはそんな暇すらなかった。
カレンの卒業への胸中は各種インタビューやライブでのMCから知ることが出来るが、アリスはそれすらなかった。アリスの心情を推察できるのは先に引用した文章だけである。
人気絶好調のアーティストの突然の卒業。こういった事情からアリスの卒業は「アリスショック」などとも呼ばれ、ClariSファンに大きな禍根を残すこととなった。つまり、私のような亡霊を生み出すことになってしまった。
卒業というビッグイベントに対する不完全燃焼さ、それが私の心をアリスに縛り付けていたと思う。この不完全燃焼さはカレン加入以降の新生ClariSでも続いていた。それは我々ファンだけはなく、ClariSを運営する側も同じだったのはないかと私は推察する。
詳細な内容は次の章に移ることとする。
アリス復活の匂わせと武道館ライブ
新生ClariS開始直後は、運営側も諸々方針に迷っていたことが伺える。私が思う具体例をいくつか挙げる。
まずは「ClariS 〜SINGLE BEST 1st〜」の発売。
もちろん、ベストアルバムの発売は嬉しい、喜ばしいことだ。
だけどこのタイミングじゃないよね!?
だってカレンが加入したばかりなんだよ!?11thシングル『border』が発売してすぐなんだよ!?加入直後にこんなん出すことになるカレンの気持ちを考えてよ!結局アリスで商売するの?アリス卒業から新生ClariS開始までの空白の期間に発売すれば丁度よかったのに。
次に12thシングル『アネモネ』のMV。
この曲のMVは初めての実写であり、まるでクララとカレンっぽい女の子も出演して話題となった。なったが、重要なのはそこではなく、ラストに3人目の女の子が登場することである。
どう考えてもアリスじゃん!
3人目の謎の女の子の正体は2025年現在でも不明のままだが、これがアリスの匂わせではなければ何なのだろうか。3人目なんて出したら誰だってアリスと結びつけちゃうよ。
そして初のホールコンサートである『ClariS1st HALL CONCERT in パシフィコ横浜国立大ホール 〜星に願いを… 月に祈りを…〜』。
このライブは「魔王ヒドラ」に聖剣を持って戦うなど、ミュージカル的なClariSのライブの方向性を決定づけたものであるが、劇中に「人魚」が登場した。
にんぎょのひと。
— 高野音彦 (@icenotes) September 19, 2016
ClariSさんのコンサートたのしかったので日記がわりにらくがき。 pic.twitter.com/uU4tdE1Vl4
この人魚は青いカラーで、ライブ内で封印が解かれる、的な演出をしていた。
それってアリス復活ってこと!?
まったく学ばないオタクである。もちろんそんなことは起こり得なかったが。
#ClariS
— 伊勢 (@ise_arata) September 18, 2016
人魚をClariSの二人が助けたら、その人魚がアリスになる、という予想は見事はずれました
何でもすぐアリスに結び付けるのはオタクの悪い癖だが、それもこれもアリスショックの後遺症である。でも青に関連するものを出されたら何でもアリスだって思っちゃうじゃん。
ClariS運営も諸々に悩みながら新生ClariSを創り上げようとしていたのだと思う。しかし当時はアリスの名を出すのが憚られるような雰囲気があった。タブー的な意味合いだ。だがその不文律がありながらも、心のどこかでアリスの復活を期待していて、先の匂わせも行われていた。全体的に矛盾を孕んでいたと思う。
そんな状況下で迎えたのが初の武道館公演『ClariS 1st 武道館コンサート 〜2つの仮面と失われた太陽〜』である。
ライブ前の空気感だが、みんなソワソワしていたと思う。理由はもちろん、アリスが復活するかしないかでドキドキしていたからだ。
当時の私は下記の4点を根拠にアリスの復活を確信していた。
1つ目は先に記した匂わせ行為。
2つ目は「失われた太陽」というあまりにも意味深すぎるライブタイトル(ライブ直前の公式ニコニコ生放送でもこれ見よがしに言及されていた)
ちなみにこのニコ生は現在とは異なりクララとカレンの出演はなく、謎のおっさんふたりがトークするものであった。内容は下記の記事参照してね。
3つ目は「スペシャルゲスト」出演の知らせ。
★「ClariS 1st 武道館コンサート ~2つの仮面と失われた太陽~」にスペシャルゲスト出演決定!★ https://t.co/zOUr8LqVRL
— ClariS☆スタッフ (@ClariS_Staff) January 6, 2017
大方の予想はやはりkz氏で、クララ・カレン・アリスと特別な共演をするのではないか、という妄想が膨らんでいた。そもそもスペシャルゲストそのものがアリスを指す説もあった。
(他の候補としてはGARNiDELiA、kalafina、LiSA、藍井エイルなどがあったと思う……)
最後4つ目は、ペンライトが青にカラーチェンジ出来たことである。アリス復活を祝して武道館を青に染めろ、と私は解釈していた。
これらによって私のボルテージは高まりっぱなしであった。
当時ニコニコ動画に投稿されていた上記の動画をめっちゃリピートしていたことを覚えている(懐かしい)。
間違いなく武道館は伝説になるぞ、と意気込んでいた。
ライブ当日
そして迎えた当日。
タイトル:『ClariS 1st 武道館コンサート 〜2つの仮面と失われた太陽〜』
日時:2017年2月11日
会場:日本武道館
キャパシティ:8000~10000
当日の天候:晴→雪
前回のライブ:『ClariS1st HALL CONCERT in パシフィコ横浜国立大ホール 〜星に願いを… 月に祈りを…〜』
次回のライブ:『ClariS 2nd HALL CONCERT in パシフィコ横浜国立大ホール 〜さよならの先へ...はじまりのメロディ〜』
日本武道館、それは多くのアーティストにとっても聖地。1966年のビートルズ公演以降、多くの伝説を生んだ地。
私も2017年2月11日にまた新しい伝説が生まれることを信じて疑わなかったのです。
当日は2月ということもあり、寒い日だった。金曜の夜開催のため、学校を終えた後に急いで新幹線に乗ったことを覚えている。金のタマネギを拝みつつ、暖房の効いた武道館において、私は心臓バクバクでライブを見守っていた。
私の気持ちがまず最初に揺れ動いたのは『水色クラゲ』のタイミング。
クララ
「この曲は、皆さんと一緒に海の世界を感じたいので、ペンライトを青にしてください~」
私
「え、ええっなんで????? えっちょっとアリスのための青色ペンライトじゃないの???」
もうこの時点でClariSの策略に乗せられていたと思う。
まんまとアリスが復活するだろうと思っていたのに、まさかの展開に。「えっやっぱり復活しないの??」と。
『水色クラゲ』以降は疑心暗鬼に追われながらライブを観ることになった。心臓はよりバクバクしつつも、とうとうあの瞬間が訪れる。
『Gravity』が終わった後、少しの静寂と共に映像が流れ、ClariSのシングル曲を遡る様な演出がスタート。
「来るか『irony』…アリスと3人で」
と思ったら、まさかの『DROP』。自分も声が出たのを覚えている。
そしてスペシャルゲストのkz氏が現れ、会場はヒートアップ。原点である『DROP』をここでやるのは、つまり……そういうことだよね??、と私の疑心暗鬼も晴れてアリス復活に心を躍らせました。勝ったな、ガハハ状態です。
そして『irony』。ラスサビ前で登場した3人目の歌声。以前よりも少し大人びたような声に私は言葉を失っていました。ずっと待ち望んでいた3人のユニゾンの光景は今でも忘れられません。
「アリスも登場したし、ここから3人体制か~。いやー楽しみだなぁ」
しかし次の曲はクララとカレンによる『Clear Sky』
「あれっ??」
えっ3人でやるんじゃないの??
もう大混乱だった。目の前の事実を認識しつつも、受け入れられない、受け入れたくない状況だった。
アリスは帰ってこない。その事実が『Clear Sky』によって確定してしまったから。でもどう足掻いても結果は変わらない。
『STEP』、『recall』、アンコールを経て徐々に私の心は静まりをみせ、武道館公演は幕を閉じた。
武道館を出た後、公演前には降っていなかった雪が降っていた。ライブの充足感を感じつつも、もの淋しさを感じながら武道館を見送ったことを今でもよく覚えている。
「赦し」と清算
ライブ後、武道館ライブとアリスについてずっと考え続けた。復活しなかったことを残念と思いつつ、言語化できない感情によってモヤモヤしていた。
この胸のつかえはライブ終了後3ヶ月が経った5月9日に発売の「リスアニ! Vol.29」によって溶けることとなった。
冨田明宏氏の下記の言葉によって。
冨田明宏氏
――こういう表現が正しいのかはわからないですが、あの「irony」ですべてが”赦された”という感じがして。
「赦された」
この言葉が私の胸中の全てを言語化してくれた。
私はアリス派であったので、アリスの卒業は本当にびっくりした。カレン加入以降もどこかでアリスの影を間違いなく追っていた。だからこそ、公式が出す情報に飛びついて、わざわざアリスを結び付け、復活を心待ちにしていた。でもこれはカレンに対する不貞であるとも認識していて、自己矛盾の中にいたと思う。
カレンを歓迎しつつも心のどこかではアリスを追い求める、そんなどうしようもないファンだった。
今までの私の書いてきた内容をひっくり返す発言をするが、冷静に現実的に考えてアリスが復活するわけがない。
復活して一番複雑な心境になるのはカレンであろう。プレッシャーの中、ClariSに加入したカレン。誰よりも努力し、太陽に近づこうと手を伸ばし続けたカレン。
もしアリスが復活したら、カレンはこう思うかもしれない。自分が不甲斐ないからアリスが戻ってきた(戻ってきてくれた)、と。
……それはダメだ……努力を積み重ねていた人間にそんな仕打ちは許される行為ではない。同じ音楽家としてそれは容認できない。
それなのに、それが分かっていたはずなのに私はアリスの復活を願ってしまっていた。未練たらしく何でもアリスに結び付けていた。大馬鹿者である。
その蟠りをあの『irony』がすべて赦してくれた。多分あの瞬間に、本当の意味で自分はクララとカレンに向き合えたのだと思う。
加えて、武道館という特別な地で、徹底的にお膳立てされた上でアリスは戻ってこなかった。このチャンスを逃せば二度と復活の機会はないだろう。無常にも現実は残酷で、私の一縷の希望は徹底的に砕かれた。
だがそれで良かったのである。一瞬とはいえ、武道館でなければアリスの再登場は果たせなかったであろう。武道館であったからこその説得力があり、私は別れの事実に納得することが出来た。
クララとカレンもアリスに対する心残りがあった。
クララ
「そして「irony」で私たちが出てきて、アリスもいて、kzさんもいて……。やっぱりClariSはアリスがいたからこそ今があるものだと思うので、ああいう形で3人で歌うことができて、いい意味で新しいClariSがそこから始まっていくような瞬間になったかなと思います。」
カレン
「当時は私もファンだったClariSの始まりの曲を、クララとアリスと一緒に歌うことができて、アリスから背中を押されているような気持ちがしましたね。これからもクララと頑張っていこうというように自分も思えたので……あのときにしかできなかった、もう二度と作れない良い時間だったなと思います。やっぱり、私もどこかで以前のClariSを引きずっていた部分があったと思うので。元々クララとアリスが作っていた形を崩しちゃいけないという想いが自分の中にあったんですけど、今回アリスとも一緒に歌ったことで、クララと新しい形でClariSを作っていけたらいいなって思いました。」
そしてカレンはアリスの後を継ぐという重圧からの解放というテーマも存在する。(詳細は下記拙文参照)
(武道館ライブMCでのクララからの感謝の言葉について)
カレン
「ずっと泣かないように我慢したんですけど、トドメですよね(笑)。そのあとの「reunion」も私、ボロボロ涙がこぼれてたんですけど仮面だから涙がふけなくて(笑)。でも……曇ってたものが全部晴れた瞬間でした。私の中にあった不安とか悩みが全部なくなって、ClariSに入って良かったなって純粋に思いました。今、思い出しても泣きそうです。」
これらの“清算”という目的で武道館ライブは組み立てられたのではないか。
一夜限りのアリスの復活によって、ファンの願望を果たしつつ、もう一度彼女との別れを迎える。
そして武道館ライブを成功させるまで成長したクララとカレンの存在を新たに証明する。ClariSはクララとアリスではなく、クララとカレンによるユニットであるのだと。
長き旅を清算して、アリスへの未練を断ち切るためのライブであったのではないだろうか。武道館という特別な舞台を、更に特別に仕立ててくれたClariS運営には頭が上がらない。
そしてこのライブは「禊」であったとも私は捉えている。顔出しする上での「禊」だ。
アリスと決別し、心残りと未練を断ち切ったからこそ、次の2ndパシ横ライブでClariSは顔出しという新たなステップを踏み出せたと解釈している。
籠からの解放
最後に、この記事のオチとして『ヒトリゴト』の話をしたいと思う。
この清算を経た(と自分が勝手に思っている)後すぐ発売されたのが『ヒトリゴト』である。

このシングルのジャケットイラストは上記の通り虫籠の中にClariSのロゴが入っている、というものである。ピンクとグリーンの蝶はもちろんクララとカレンモチーフだろう。
しかしCDを開けると、次のイラストが描かれている。

ブルーのリボン結ばれた、蓋の開いている虫籠の絵。
ピンクとグリーンの蝶は「アリス」という籠から解き放たれたのでしょう。
10年越しの答え合わせ
といったエピソードで私の中の「アリス」とは決着が付き、以降はクララとカレンの活動を最大限応援し、楽しんでいました。
これ以降アリスについてClariSが触れることはなくなりましたが、それでよかったと思います。ClariSはクララとカレンのものであり、もう清算は済んだのですから。
しかしアリス卒業から10年が経った2024年11月10日、突如私の心は10年前に呼び戻されました。
最初にKUMAさんがアリスについて言及してくれたのがもう……(この時点で目が赤い)
— 伊勢 (@ise_arata) November 10, 2024
「アリスは満足して別の道を進んだ」ってのがファンへの10年越しのアンサーだったと思う。
アリスとカレンのふたりを見送った気分だよ……#ClariS_ViaFortuna
カレン卒業となる「ClariS Autumn Tour 2024 ~Via Fortuna~」大阪公演にてKUMAさんが上記の発言をしたのです。
カレン卒業に泣いていた私にとっては寝耳に水の話でした。カレンの最後であるはずなのに、予想外の流れ弾を喰らった気分でした……
具体的に状況を説明すると、大阪公演では久しぶりにKUMAさんが登場し、ClariSの歴史を振り返り始めました。15年前にクララがアリスを誘って動画投稿を始めたところから始まり、「世界中の人に歌を届けたい!」という理由であったことも語られます。そしてアリスの卒業に対して、先の発言が登場しました。
何度も述べていますが、アリスの卒業には謎が多いです。武道館ライブで未練は断ち切ったものの、それはそれとして謎が残っていました。
しかし不明瞭だったアリスの卒業理由に関して、10年越しに1ピースが埋まった感覚がしました。
「満足した」という言葉に大きく安堵しました。私の心の片隅には、アリスは当時のClariSに思うところがあって卒業してしまったのではないか、という邪推があったからです。
アリスの夢は歌って踊れる歌手になること、であったのも気がかりで、この夢を叶えられそうにないから卒業してしまったのか……なんて悪い想像もしていました。加えてカレン加入後のClariSはライブ活動を始めたのも噛み合わせが悪いと思っていました。
アリス卒業発表前の2014年3月に発売されたテレビアニメ「ニセコイ」のBD&DVD第1巻のオーディオコメンタリーにクララ・kz氏・冨田明宏氏が参加するというものがありました。
クララがオーディオコメンタリーに参加することは2025年現在でも貴重で驚きなのですが、私が気になってしまったのはこの場にアリスがいないということ。
喜ばしいニュースのはずなのに、私は悪い想像を繰り返してしまっていました。だって二人組ユニットのアーティストなのに片方だけだなんて……不仲……?贔屓……?解散……?
アリスが不在であったことが卒業と関係があるかは現在でも不明ですが、アリスの卒業の裏にある哀しき事実の可能性を10年間も拭えませんでした。
ですが、そんな心配は霧散しました。アリスは満足して卒業したのですから。そのことを知るまでに10年かかったけど、その甲斐ある言葉だったと思います。
だから彼女はクララとカレンの背中を押したのでしょう。最後の1ページくらいは笑顔を見せてくれたのでしょう。
願わくば、これから新たな道を進むクララに太陽と星の加護があることを。
おわりに
みんな武道館のBDを観よう!「リスアニ! LIVE 2025」に備えよう!
ClariSの新しい伝説の1ページを目撃しよう!
そして決意を胸に、もう一度クララを単独で武道館のステージに!
伊勢
スペシャルサンクス アリス
「ニセコイ」のオーディオコメンタリー、「ClariS Net」がなかった当時にとってはオーパーツすぎる。20分長しゃべるクララを聴けるのは当時基準ではミラクルだよ。それ故アリスが不在であったのが悔やまれる……(よく考えたら、我々はアリスの普段のしゃべり方すら知らないんだよなぁ……)
当時のクララのしゃべり方と現在のしゃべり方が全然変わらなくてとてもエモい気持ちになれます。クララは良い意味で「変わらない」強さを持っているよね。
Q;あれだけ『Luna say maybe』を褒めたのに学マスをプレイしないの?
↓
建前:ClariSから浮気するわけにはいかない
本音:FGOとウマ娘のおかげでスマホの容量がない
