闇 647(幸せと実感した夜編)
闇 647(幸せと実感した夜編)

2026/08/21 fri
※多分この時代に岩上智一郎という人間がいたという証明をしたかったから、この作品を自分の為に書いているのだろう。
前回の章

二千二十四年四月十三日、土曜日赤口。
インカジ『レディ』の仕事を終え、新宿駅構内にある立ち食いそばへ寄る。
無性に腹が減っていたので食べたかったのだ。
こんな簡易的な食事でも、人が作ったものは何だかいい。
最近自炊が増えたせいだろうか。
『おはようございます。さすがにお腹減ったので、新宿駅で天ぷらうどんとカレーライス食べました。 岩上7:29』
自称俳優マンションへ戻ると、昨日出勤前にUFOキャッチャーで取ったリアルキッチンシリーズのブログを書く。

リアルキッチンシリーズにまた新たな仲間が登場。

レンゲシリーズのヒレカツ丼か?

レンゲシリーズは多分あと天重だけだと思う。
ブログを書き終わると、次第に目がトロンとしてくる。
今日はこれから休みだし、まだ若香も起きてないから寝ておこう。
『「若香」は目覚めたばかりだ。イチローお疲れ様でした。まずよく寝なさい。起きて話していますよ。 朱婧瑶11:15』
昼過ぎに目を覚まし、若香からのLINEを確認する。
『おはようございます。今起きたところです。若香さんもよく眠れたようで何よりでした。 岩上13:16』
彼女は今、仕事中だろうな。
暇な時間を利用して、日曜の皐月賞の最終予想を始めるか。

・桜花賞と皐月賞(G1)過去十年結果と考察
・第84回皐月賞(GⅠ)の出走馬の調教後における馬体重
皐月賞(GⅠ)
↑クリックで出馬表見れます。

◎14 シンエンペラー 坂井
○13 ジャスティンミラノ 戸崎
▲8 ジャンタルマンタル 川田
△2 メイショウタバル 浜中
△9 アーバンシック 横山武史
△17 ビザンチンドリーム Bムルザバエフ
買い方として…
【3連複 フォーメーション】
8-13-14→ 2.9.17(計10点)

【3連単】
2-8-9-13-14-17BOX→ オッズ降順の下位30点
8-13-14BOXを更に被せる 6点

※あくまでも私の予想なので、外れたらごめんなさい。
何となくだけど、三連単配当、1万円台~3万円台で決まると思うんだよなあ。
さて、土曜は障害レースがあるので、ちょっとだけ運試しでやってみよう。
一番人気は連には絡むだろう。
あとは三頭めぼしい馬を選んで何とかなりそうだな。
「……」
レース結果を見て絶句した。
この悔しさをブログへ書き残そう。

まあ自分が悪いのは自覚しているんですけどね。
見て下さい、これ。
4番のマイネルグロン、もうねグリグリの1番人気ですよ。
それを軸に相手に1-8-10。
結果がですね……。

8-1-10
4番コケやがって、よりによって……。
しかも3連単配当10万!
明日の皐月賞の予想、嫌な予感してきたな……w。
はあ…、何か料理でも作ろう……。

みなさん覚えていますか?
昔、給食の天ぷら箱で出たコンビーフチーズ
年代で言えば、1971年生まれ近辺世代
場所で言うと埼玉県川越市
学校で言うと、川越市立中央小学校
俺の記憶だと、小学校低学年の頃は給食でよく出ていたと思う
クジラとかもね

作り方はちょっとアレンジするけど、
昨日作ったクラブハウスサンドのキャベツとレタスをマヨネーズで和えたものに、コンビーフとチーズを投入

よく混ぜ合わせて……

食パンの上に乗せて、オーブンで焼いて

完成!
給食の時、ソフト麺のミートソースの次に好きな料理だったこのコンビーフ。
一口食べてみて、あの頃のものより美味しいものが作れたという変な自負が出てくる。
若香から画像が届く。
『フィットネスをしたばかりです。 朱婧瑶16:18』
『若香さん、それ以上美しくなって、どうするんですか? 岩上17:29』

『俺は簡単な料理して、部屋でウイスキー飲んでいます 岩上17:30』
『いいですね。 飲み終わったらまた寝られるのではないでしょうか。 夜は出勤する必要はないでしょう。 朱婧瑶17:40』
目の前にあるキンキンに冷えたグレンリベットをショットグラスに注ぎ、ゆっくり酒を嗜む。
俺の一番好きな飲み方である。
ベランダへ出てセブンスターに火をつけた。
彼女と出会って…、いや、まだ実際に会った訳じゃないけど、一緒に暮らすようになったら、どんな生活が待っているのだろうか?
『ええ、今日は休みですからね。のんびり部屋ですごしていますよ。 岩上18:31』
『どうして退屈なんだろう。今日は創作するつもりじゃないですか。 朱婧瑶18:43』
特に欲しいものもない。
傍に若香がいて、楽しい時間を送れるのならそれでいい。
『今日の天気はどうですか。 朱婧瑶18:44』
『今日は昨日と同じような天候で、曇りちょっと風がって感じですね 岩上18:45』
創作…、あ、俺って小説を書くと断言してしまったんだっけ。
十三年も書いていないくせに、何でそう格好つけてしまうかな……。
パソコンでワードを開いてみたものの、いまいち執筆意欲が出てこない。
駄目駄目こんな状態じゃ、いくら久しぶりでもこれでは文章へ魂を乗せる事なんて到底無理。
まだおそらく時期ではないのだ。
『執筆するつもりなんですけど、凝った料理を色々作るのもいいかなとか迷っています 岩上18:45』
『「若香」はやはり精巧な料理を作ったほうがいいと思います。文章を書くにはインスピレーションが必要ですか。 朱婧瑶18:50』
うん、彼女もそう気遣ってくれている。
インスピレーションも何もないが、俺の小説は頭の中に浮かんだ文章をそのまま書くだけ。
米を研ぎながら、あれほどあった創作意欲は一体どこへ行ってしまったのか不思議でならない。
『そうですね。もう米は、研いであるんですよ。 岩上18:52』
『夜イチローは何を作るつもりですか。若香は夜友達と外で食べました。 朱婧瑶19:11』
さっきの酒のせいだろうか。
異様に睡魔が襲ってくる。
目を覚ますと、若香から食事の写真が数枚届いていた。
三時間ほどいつの間にか眠っていたのか。
『いつの間にか寝てました。休みなのに、寝て終わりそうです。 岩上22:24』

さて、彼女へ宣言した手前、ある程度の種類の食事を作らないと格好つかないぞ。
『若香さん、本当にスタイルいいし、綺麗ですね。作るとしたら、麻婆豆腐、青椒肉絲、あと適当に何品かですね。 岩上22:26』
返事をしてタバコを吸いに行く。
何だか今日は本当に部屋の中だけで一日が終わりそうだ。
『夜、イチローはもう料理を作りましたか。夜は自分で少し飲みませんか。 朱婧瑶22:32』
『まだ起きたばかりで、何もできていないですよ。少し飲むかもですね。携帯を目の前に置いたまま寝てて、起きたら女神の化身のような若香さんの写真が瞳に写り、最高の目覚め方をしたようです。 岩上22:35』
『私があなたに撮ったのはどれが私の親友ですか。私じゃない。彼女は私よりずっと小さいですね。 朱婧瑶22:41』
相変わらず若香の日本語は少し出鱈目でも、伝えたい事は何となく理解できる。
『若香さんは親想いで優しく、社会貢献も素晴らしい。人としての芯もある。それに加え、完璧という表現に等しい美も持っているので、世の中の多くの女性から嫉妬されているでしょう。 岩上22:55』
『どうしてでしょう。若香は自分が何をしたと思っていないのか。普通の人はできますね。イチローはこんなに若香を褒める。「若香」は誇りに思うべきだ。 朱婧瑶22:58』
普通の人は社会貢献なんてできないし、そもそもそんな余裕がないから考えてもいないんだよ。
金と時間に余裕があるからこそ、次のステップで考えられるんだ。
そう考えると、俺は本当に駄目な人生を送ってきたものだな……。
『前にも言ったじゃないですか。若香さんの存在に感謝していると。素晴らしい、素敵、様々な言葉がありますけど、それだけじゃまだ足りない魅力が、若香さんにはありますよ。 岩上23:00』
『はははは。「若香」は誇りに思う。この暖かさを保ち続ける。イチローさんが若香にくれたのですね。イチローさんは目が覚めたばかりです。夜は遅く寝るでしょう。 朱婧瑶23:03』
俺などの言葉で、喜んでくれているみたいだ。
何だかやっとこれから幸せが本当に訪れるのかな。
『多分ずっと起きていられるくらい、よく寝ましたよね。俺ね、若香さんと知り合えて、何か今まで生きてきて本当に良かったなあとしみじみ思います。 岩上23:06』
人間なんてものは食事と寝る場所、そしてたまに飲めて、愛すべき存在がいれば、それだけで事足りる生き物なのかもしれない。
『若香は今何をしたとは思わない。時間がゆっくりとお互いのこの感情を証明するようにしましょう。若香はこれまでイチローに実感させられてきたからだ。 朱婧瑶23:20』
『そうですね。何かね、俺凄い幸せな気持ちになれます。若香さん、ありがとうございます。 岩上23:31』
返信しながら本当に頭を下げる。
馬鹿だな、俺は。
こんな動作をしたところで、彼女には見えやしないのに。
『若香さんもイチローさんの出現に感謝しています。若香の毎日の生活に違う色をもたらす。 朱婧瑶23:41』
タバコを吸っていると、彼女からのLINEが届く。
『「若香」は休むつもりですね。イチローも早く休んでね。また明日。 朱婧瑶23:42』
『俺なんてただ仕事して、料理作ってるくらいじゃないですか。 岩上23:43』
普通なら眠る時間だよな。
先ほど睡眠を先に取ってしまったのを後悔した。
『若香さん、おやすみなさい。ゆっくり休んで下さいね。 岩上23:43』
『イチローさんはご飯を作った後、若香の写真を撮ることができます。 朱婧瑶23:44』
目の前にいないのに、どうやって君を撮るんだよ。
こんなヘンテコな文面ですら愛おしく感じている。
『作ったらもちろん若香さんに見てもらいたいです。 岩上23:45』
『おやすみなさい。イチローさん。 朱婧瑶23:45』
ゆっくり休んでね。
シンプルに返そう。
『おやすみなさい。 岩上23:46』
ベランダへ出てセブンスターに火をつけると、夜空を眺めた。
右手に映る河本マンション。
本当に目障りな小汚い建物だな……。
二千二十四年四月十四日、日曜日先勝。
若香が寝ている中、俺は早速料理を開始。
彼女へ話した料理ぐらいは、ちゃんと作らないとね。

弁当作りました!
【献立】
・麻婆茄子豆腐
・青椒肉絲
・焼きうどん
・もやしのナムル
・コンビーフチーズのサラダ
・高菜漬け
・たくあん
・ご飯
【青椒肉絲】

ピーマンと豚肉を細目に切って、ゴマ油引いたフライパンへ。

サササと炒めたら、塩胡椒。

醤油ちょろっとにオイスターソース。

手早く混ぜて完成。
【麻婆茄子豆腐】

茄子を食べやすい適度な大きさに切って、油で素揚げします。

お椀に、甜麵醬、豆板醤、醤油、塩、砂糖。

更にニンニク、おろしショウガ、唐辛子ペースト、混ぜて水250㏄を入れる。

豚肉を細かく切って炒め、そのあとで豆腐を入れます。

上で作ったタレを入れたら、今度は揚げた茄子投下。

ふんだんなみじん切りした長ネギも入れます。

蓋してしばらく煮込みましょう。

出来る限り豆腐を崩さないよう混ぜる。

水で溶いた片栗粉を入れてトロミを出します。

これで完成。
【モヤシのナムル】

モヤシとニラを煮ます。

ナムルタレは鶏がらスープの素、擦りゴマ、醤油、ゴマ油、塩。

水気を切ったモヤシをタレとよく混ぜ合わせ、冷蔵庫で寝かせます。
【焼きうどん】

ちょっと揚げ過ぎた感じの天ぷらを細かく切り。

フライパンでうどんと一緒に炒めます。

味付けは基本醤油と麺つゆの素あれば、ちょっと入れる。
【コンビーフチーズのサラダ】
これは前回の記事参照して下さい。
実際に会った時を想定しながら、手際よく作っては写真を撮り、その過程をブログへ載せていく。
もう寝ているだろうけど、若香へ送っておこう。
『作り終えました! 岩上2:03』
冷凍庫から冷えたウイスキーを取り出し、一人寂しく酒を飲み始める。
今はこの孤独さすら、幸せに思えた。
開いてあったワードを閉じる。
今はまだ焦らないでいい。
俺にはいつか小説を書く時が、きっと訪れるさ……。
十三年前は、あれほど文学へ執着していたんだけどな。
あの情熱はもう枯渇してしまったのか?
「……」
しょうがない。
少なくともこれだけ時間が経ったのに、今の俺は未だあの時の気持ちが乗らないのだから。
映画を観ては途中でやめ、インターネットで適当な記事を読む。
集めた漫画のデータで、昔の作品を読む。
うたた寝しては目を覚まし、そんな事を繰り返している間、気付けば朝になっていた。
『うわー。本当に腕がいい。本当にイチローさんの料理を食べてみたいですね。 朱婧瑶9:07』
目覚めたか、若香。
腕がいいって、君は俺の料理を食べた事ないだろ。
笑いながら文面を打つ。
『おはようございます。若香さんが望むなら、いつだって心込めて作りますよ。 岩上9:07』
たまにはこんなグダグダな休みも悪くない。
『料理作ったあと、また寝て起きて。ほんとほとんど寝ていた休みになりました。 岩上9:08』
『それは疲れているからですね。イチローさんはよく眠れましたか。今夜は仕事に行く必要がありますか? 朱婧瑶9:19』
そういえば遅番って、夜の十一時出勤だからまだ休み継続している感覚で、少しお得な気がするな。
『知らない内に、疲れていたんでしょね。夜になったら仕事へ行きますよ。 岩上9:19』
『イチローは眠くなったら寝ますよ。今日もし香がデパートに行って叔父に誕生日プレゼントを選びます。 朱婧瑶9:21』
本当に気が利く優しい子なんだな。
『若香さんは相変わらず優しいですね。叔父さんもきっと大喜びするでしょうね。 岩上9:23』
『イチローさんの誕生日を待ちます。お香さんもプレゼントをあげますよ。叔父の若香への援助は本当に大きかったからです。 朱婧瑶9:31』
お父さんの誕生日でなく、叔父なのか。
まあ近所に住んで仲がいいのだろう。
俺の誕生日にプレゼント?
君が傍に来てくれるだけでいいのに。
それにしてもお香さんって表現は何だよ?
本当にこの子は面白い。
『俺の誕生日より先に若香さんの誕生日が来ますよ。六月八日、あと二ヶ月切りましたね。 岩上9:32』
『イチローさんの誕生日が九月十三日乙女座だということも知っています。 朱婧瑶9:38』
ちゃんと正確な日にちを覚えてくれているのは嬉しいものだ。
『若香さんにおぼえるもらって本当に嬉しいです。 岩上9:38』
『イチローさんが若香さんに言ったからね。もし香は心の中で気になる人の誕生日に覚えています。 朱婧瑶9:42』
心の中で気になる人。
今、俺は本当に久しぶりに恋愛をしているのか……。
まさか五十二歳になって、このような気持ちになれるなんてね。
高円寺のあの手相占いが言っていた素晴らしい異性との出会いとは、間違いなく若香を指しているのだろう。
少なくとも俺は、彼女へ愛情だけでなく敬意も抱いている。
『とても光栄です。もうちょっとしたら、デパートがオープンする時間ではないですか? 若香さんが良い一日を過ごせるよう祈ります。 岩上9:43』
『叔父はお茶とお酒が好きですが、彼の貯蔵室にはこのようなプレゼントが多すぎることを知っています。だから私は違うプレゼントを送りたいです。長い間考えていましたが、叔父に時計を買いたいのですが、イチローさんは時計をお持ちですか? 私にアドバイスをくれるかもしれません。 朱婧瑶9:44』
酒ならアドバイスできるけど、どんな種類が好きかどうかも知らないしな。
『ごめんなさい。俺、時計はまったく詳しくないのです。お酒だったら多少なりともアドバイスできましたが。 岩上9:46』
『お酒なら叔父も不足していませんね。若香が帰る時には良い酒を持ってイチローに味わってもらう。 朱婧瑶9:47』
良い酒って、俺はグレンリベットさえあればいいだけなんだ。
『俺は若香さんと会えるのが、一番のご褒美ですね。 岩上9:48』
『でも一番難しいのは私がどんな時計を送るべきかです。価格の表は何ですか? もし私が高価な時計を買ったら叔父は絶対に受け取らないからです。若香が金を使うのを恐れる。しかし、価格が安すぎて香ちゃんはまた恥ずかしいです。 朱婧瑶9:49』
そりゃ叔父の立場からすれば、姪から高級腕時計なんてプレゼントされたら嬉しいけど、複雑な気分になるだろう。
それでも彼女が献身的に何か奉仕してあげたいという無垢な気持ちも尊重できる。
『何事もバランスが大切ですよね。若香さんの悩み、よく分かります。 岩上9:51』
『香が叔父に時計をあげたいなら、時計は単なる時計道具ではなく、ファッションと品位を象徴しています。腕時計を身につけることは人の時間観念と厳格な態度を表現することができ、厳格な律儀さを象徴している。叔父は厳しくて冷静な人です。 朱婧瑶10:24』
ここにきて急に叔父の存在がクローズアップしてきたな。
まあ誕生日だから当たり前か。
『色々考えている若香さんだから、悩んだ末に決めた物は、きっと叔父さんも喜んでくれるはずですよ! 岩上10:25』
『プレゼントを選ぶ。きっと自分の気持ちを表現しなければなりませんね。そして叔父が助けてくれたのはとても大きいです。私の事業でも投資でも若香さんにたくさんの援助をしました。 彼は尊敬すべき年長者だ。いつも家族の若者を助けることを考えています。 朱婧瑶10:32』
親父さんに叔父と、身内の支えがあってこそか。
俺とはえらい違いだ……。
『叔父には息子が一人しかいません。彼は若香にとても親切でまるで実の娘のようです。叔父の息子はよく叔父に文句を言っています。彼は拾ったようなもので、若香は叔父の実のようです。 朱婧瑶10:34』
うーん…、要約すると、叔父の息子は感謝も忘れたドラ息子と言いたいのだろう。
『素晴らしい叔父さんなのですね。逆に叔父さんは娘さんも欲しかったのが叶わず、そういった気持ちも若香さんに対し重ね合わせているんでしょうね。 岩上10:43』
『若香は小さい時から父とシンガポールに来たからです。叔父がたくさん助けてくれました。そして幼い頃に若香の母親が亡くなったのは父親と暮らしていただけだった。叔父の若香への影響も大きいですね。 朱婧瑶10:48』
彼女の母親は、幼い頃に亡くなっていると聞いた。
俺は若香に対し、どのような立ち位置でいられるのだろうか?
何を求めているのか…、離婚歴があるという若香。
心の隙間を埋めてあげるのが、自分の役割ではないか?
『幼少期に感じた事って、とても大きいと思うんですね。正しい方向へ導けるようお父さんも叔父さんも、若香さんに対し、凄く繊細に注意深く接しながら大切に育てたと思うんです。そういった環境で成長した若香さんは、素晴らしい女性になった。その過程を思うと、俺も本当に良かったなあと心が暖かくなります。 岩上10:51』
『はい。若香は幼い頃から母の温もりを感じることができなかったが。しかし、父と叔父は若香に多くの教えと愛を与えた。そして子供の頃から教え込まれてきたのも伝統的な理念です。 朱婧瑶10:54』
躾であり教育。
俺の馬鹿げた人の良さから利用され、騙されてきたのも、のほほんと苦労なく育ってしまったどこか浮世離れした部分。
大いに反省しないといけないし、今一度しっかり自分を見つめ直す段階に入ったのかもしれないな。
『素敵で理想的な家族愛の形ですね。あなたは本当に素晴らしく聡明で、美しい非の打ち所の無い方です。 岩上10:56』
さっきの料理で食材は結構なくなった。
何か買っておこうかな。
もう店も開いている時間だろう。
着替えを済ませ、大久保通りを真っ直ぐ歩く。
『俺もちょっとしたら、買い物…、特に欲しい物は無いのですが、行ってきますね。 岩上10:57』
『はい。イチローさん。若香も化粧をして買い物に出かけるつもりだ。 朱婧瑶11:00』
化粧をしている彼女を想像する。
『準備中だったんですね。若香にとって良い一日になりますように! 岩上11:02』
『もちろんいい一日でした。イチローさんは買い物が女性の本能だと知らないのですか? 朱婧瑶11:03』
ここいらで茶目っ気を出しておくか。
『俺は男ですが、乙女座ですからね。 岩上11:09』
『イチローさんは買い物が好きですか? 朱婧瑶11:13』
あれ、あまりジョークが通じていないようだ。
日本語は世界で一番難しいって本当なのかもね。
明治通りにつき当たり、左手の早稲田方面へ向かう。
『そうでもないですよ。若香さんと話していて、少しばかり影響受けたようです。 岩上11:14』
『イチローさんは買い物にとって。美味しい食べ物を作るのが好きなのでしょうか。 朱婧瑶11:15』
別段欲しいものが特にないだけで、今は目の前に食べられるだけの食料があれば、それでいい。
『料理するのは確かに好きなのかもしれません。でも最初に若香さんが興味を示してくれたから、俺もそれで張り切ってというのもあります。 岩上11:23』
あ、お目当ての建物が見えてきた。
テンポス新宿店に到着。
『目的地に着きました。徒歩で三十分くらいのところ。 岩上11:31』
俺は写真を撮りながら、彼女へ送り説明をしていく。
『中に入って行くと……。 岩上11:33』
大型駐車場の地下一階をそのまま店舗にしてしまった恐るべき調理器具の数々を置いてある場所。
『色々な調理器具とか売っているんです。 岩上11:34』
片っ端から写真を撮った。
『弁当箱の容器も。 岩上11:34』
言葉よりも写真のほうが、若香には分かり易いだろう。
『お茶用の急須や、湯呑みも売っています。 岩上11:40』
カメラを構えて撮りまくっている客など、俺ぐらいなものか。
『他にも大型電気機器など。 岩上11:44』
まあどう見られようといいや。
そんな事より、彼女に色々知ってもらいたい。
『お寿司屋さんのネタ入れケースや、ケーキを飾るショーケースまで。 岩上11:45』
『生活用品はすべてそろっていますね。 週末に買い物に行く人がいないとは思いませんか。 朱婧瑶11:45』
新宿の中でも、俺が好きな場所だった。
そうそう行く機会もなかったけど。
『ここ、凄い中広くて、地下駐車場全部の敷地使っているので、客はいるんですが、まばらに見えますね。 岩上11:47』
『そうですね。大きすぎるからかもしれません。人はそんなに多くは感じませんね。 朱婧瑶11:50』
このテンボス新宿を知ったのは、秋葉原で一緒に裏ビデオ屋を始めた長谷川昭夫が当時教えてくれたから。
『特に欲しいものある訳じゃないんですが、こういうの眺めるだけでも楽しめます。 岩上11:50』
『品物がそろっている。自分の好きな食べ物を買います。そして日常生活に必要な必需品を見てみましょう。 朱婧瑶11:54』
彼女も女性だけあって、この場所に興味を持ってくれたみたいだ。
『今の生活は俺一人だけなので、必要なものって全部揃えているんですよね。でも、見ているとあれもこれもいいなあと欲しくなります。 岩上11:55』
『種類がそろっていることです。いいと思いますね。主に今イチローが借りている家もあまり多くのものは必要ありませんね。 朱婧瑶11:58』
シェーカーを発見。
こんなものまで売っているのは嬉しくなってしまう。
『シェーカーもありました! 昔、ホテルのラウンジでバーテンダーをやっていたので、いつか若香さんにカクテル作りたいものです。 岩上11:59』
『イチローさんはカクテルも作れますか。すごいですね。 朱婧瑶12:10』
『前に俺が作ったオリジナルカクテル「ミューテーション」です。 岩上12:16』

『いいですね。飲み口はどうですか。 朱婧瑶12:28』
『アルコール度数弱めに作ったジンベースのカクテルです。飲み口はさっぱり、ほんのり甘めに作っていますよ。 岩上12:31』
二十代半ば当時、苦労してこのカクテルを編み出したのだ。
未だハッキリ覚えているレシピ。
彼女は昼食なのか、ラーメンの画像を送ってくる。
『じゃ、若香さんは日本に行ったらぜひイチローさんが作ったカクテルを食べてみてください。 朱婧瑶13:14』

『もちろん若香さんが望む事なら、俺でできる事すべて頑張りますよ。 岩上13:14』
三ヶ月後に会うんだもんな。
このシェーカーを買っておこう。
『美味しそうなラーメンですね。 岩上13:14』
『はい。このラーメンは味がいいです。食べ終わった直後にデパートに買い物に行くことができます。 朱婧瑶13:16』
叔父のプレゼントに時計を買いに来ているんだもんね。
彼女からすれば、これからがメインの買い物だ。
『イチローはお昼に何を食べますか。 朱婧瑶13:17』
『デパート内か、近くで食べているんですね。俺は昼は食べないで、夜になったら肉を食べようかなと思っています。 岩上13:18』
帰り道、俺も牛か豚肉でも買っていくか。
『朝というか、さっき買い物行く前に昨日作った弁当食べたんですよ。 岩上13:18』
新大久保駅まで来ると、回転寿司の魚べいに入る。
ちょっとだけマグろう。
『でもちょっとだけお寿司食べに来ました。 岩上14:58』
マグロを好きなだけ食べる事を俺はマグると呼んでいるが、今の若香の日本語読解レベルじゃ、絶対に理解できないだろう。
その辺は会ってから、おいおいゆっくり教えていけばいいか。
彼女から動画が届く。
何だか凄いオブジェ。
デパートの中に飾られてあるようだ。
『凄いオブジェですね! 岩上15:00』

『これはイチローが自分で作った寿司ですか。洗練されているね。何かつけて食べる必要がありますか。 朱婧瑶15:00』
まあ寿司の真似事ぐらいならした事あるけど、さすがに自分一人で握らないだろ……。
『そうだな。これはシンガポールの金沙ショッピングセンターです。 朱婧瑶15:01』
『さすがに寿司は食べに来ています。つけるとしたら、醤油ですね。 岩上15:01』
シンガポールの店なんて何一つ分からないけど、話を合わせておこう。
『金沙ショッピングセンター、素晴らしいところですね。 岩上15:01』
『イチローがシンガポールに来る時間があれば。香がシンガポールの特徴的なところに連れて行くなら。 朱婧瑶15:03』
自由に海外を行き来できるような身分になれたら、それはそれで面白いかもね。
当然隣りに若香がいてこそ成り立つ感情ではあるが。
『それはとても嬉しいですね。若香さんと一緒にいるだけで幸せなのに、さらにこういうところも一緒に回ったら、幸せ過ぎて心臓がドキドキなり、爆発するかもしれません。 岩上15:05』
『イチロー君はユーモアがある。これも難しいことではありませんね。イチローが思う時はいつでもいいよ。 朱婧瑶15:11』
あれ、今度は俺のジョークを理解できたのか。
いまいち彼女の日本語理解度が掴めない。
『現時点でこうして若香さんとやり取りしていて、とても幸せを実感していますよ。 岩上15:13』
『これも現実的なことです。そして、若香はすでにイチローを若香の唯一の男友達にしている。そうでなければ、イチローさんと毎日話をすることもないでしょう。 朱婧瑶15:15』
確かに俺たちLINEのやり取りだけで、どれだけ多くの時間をお互い咲いているのだろう。
『そうですよね、とても光栄に思います。若香さんの存在が、自身の日々を素晴らしい時間にさせてくれます。 岩上15:16』
自称俳優マンションへ帰ると、俺は早速テンボスの記事をブログへ書いた。

皐月賞を前に、散歩がてらどこかへ行こうと大久保通りをテクテク歩き、明治通りに差し掛かると左へ曲がって早稲田方面へ。

西早稲田駅手前、目印で言うと明治通りのマクドナルドやビックボーイ、ドンキホーテがある手前を左に曲がると着きます、テンポス新宿店。

地下駐車場へ向かう通路を降りていくと。

こんな感じで見えてきます。

色々な物がとにかく凄い数あります、ここは弁当の容器コーナー。

目移りするぐらい色々あります。

グラスやお椀関係なども充実。

湯呑や急須系も。

ビールサーバーやフレッシュジュース用の容器など。

冷蔵庫、冷凍庫コーナー。

寿司屋のネタ入れケースや、ケーキを飾るショーウインドーも。

何とソファやテーブルまで様々。

これは飲食店が店内で使う用の様々なものが。

バー用品。

見ているだけでも楽しいのですが、ここは一つシェーカーを買っておくか。

写真は俺が過去カクテルで作ったオリジナルカクテルのミューテーション。
まだ実際に会った訳ではないので、若香の存在をブログに書けないのがもどかしい。
早く俺の遅れた青春こないかな。
『イチローさんの毎日の付き添いも若香さんを喜ばせ、満足させてくれましたね。幸せは生活の中から少しずつやってきたものです。 朱婧瑶15:19』
こんな記事でも若香は喜んでくれる。
うん、彼女の言う通り幸せとはこうした何気ない生活のリズムからちょっとずつ来るものなのか。
『久しぶりにデパートを見ましたが、買い物の気分はいいですね。 朱婧瑶15:20』
『ほんとね、若香さんには感謝しています。いつも本当にありがとう。買い物ゆっくり楽しみながら、叔父さんへいい時計選んで下さいね。 岩上15:21』
ロレックスの文字が入った時計屋の画像が送られてくる。
『ロレックスへ来たんですね。全部高価な時計ばかりじゃないですか。 岩上15:21』
『ロレックスに行ってみましょう。 朱婧瑶15:21』
完全に専門分野外。
下手な口は出さないほうがいいね。
『ごゆっくり。 岩上15:22』
彼女は時計の写真を見せてくるが、俺はデイトナぐらいしか知らないんだから。
しかも名前程度で。
『選んで、最終的にロレックスの日誌型シリーズ116233銀盤にドリルを入れた腕時計を選びました。この時計の値段はそんなに高くないし、叔父にお金の無駄遣いを叱られることもないし、自分を困らせることもない。 朱婧瑶16:02』

あ、そろそろ皐月賞のレース終わってんだろ。
俺はレース結果を調べる。
「……」
落胆しながらブログへ記事を書いた。

1着3着4着5着……w。

全体の結果です ↑。

12番コスモキュランタかぁ……。
悔しい……。
俺の予想で買ってしまった方いたら、本当にすみませんでした。
ジャスティンミラノ、レコードか……。
3戦負けなしですね。

2着のコスモキュランダ、非常に波がある馬ですね、まだ若いから安定していないだけかな。
皐月賞2着とは言え、レコード勝ちの馬にクビ差ですからね、相当強いと思います。
次回12着とかなら、その次のレース2着固定→ その次は1着固定で買うのも面白いかもw。
シンエンペラーに全レース勝っているんだから、△くらいしておけば、3連複取れたのになあ……。

払戻金
単勝
13
480円
2番人気
複勝
13
220円
2番人気
12
390円
7番人気
8
220円
3番人気
枠連
6-7
1,890円
8番人気
ワイド
12-13
1,460円
18番人気
8-13
610円
4番人気
8-12
1,620円
21番人気
馬連
12-13
3,550円
13番人気
馬単
13-12
5,570円
21番人気
3連複
8-12-13
5,940円
16番人気
3連単
13-12-8
29,240円
78番人気
返還
返還馬番 16番
本当に俺ってギャンブルのセンスないな。
こんな事ばかりしていたら、若香に呆れられてしまう。
『センスいいですね。さすが若香さん。きっと叔父さんも喜んでくれるはずです! 岩上16:03』
『ロレックスは価値があるので、この時計を選びました。私たちが買い物をするのも投資であり、良いブランドを選ぶことは、長く使っても価値が存在します。 朱婧瑶16:15』
職場で湯浅が俺にデイトナが昔は百万だったのが、今四百万円になっているという情報を聞いた事を思い出す。
『デイトナなんて凄い価値上がったんですよね? 俺はまったく時計見る目ないので、感心するばかりです。 岩上16:16』
『今、店員が梱包してくれています。私も帰るつもりです。 朱婧瑶16:24』
この子、本当に金を持ってんだな。
裏稼業で働いている俺なんかで、つり合い取れるのか?
『いい買い物できましたね。気を付けて帰って下さいね! 岩上16:30』
彼女の運転の支障になるから、返事は短めにしておこう。
『イチローは一眠りする必要がありますか。そうでなければ、夜出勤すると眠くなりませんか。 朱婧瑶16:43』
『部屋でゴロゴロしてますよ。眠くなったら自然と寝るかもです。 岩上16:44』
競馬も外れたし、ふて寝ぐらいしかする事がない俺。
いや、若香の誕生日用に絵でも描こうかな。
俺はフォトショップを起動した。
『はははは。はい。眠くなったら太郎は休みましょう。「若香」ももうすぐ家に着きますね。 朱婧瑶16:49』
太郎って誰だよ……。
『無事着きそうで良かったです。 岩上17:01』
『エレベーターに入ったよ。 朱婧瑶17:05』
こんな他愛ないやり取りでさえ、幸福感を覚える。
『もうちょっとですね。 岩上17:06』
『家に着きました。イチローさんは眠いですか。 朱婧瑶17:20』
『おかえりなさい。 岩上17:28』
えーと、若香は双子座…、ジェミニか。
『いえ、眠くはないですよ。若香さん喜んでくれるかなと、ある事をしていました。 岩上17:29』
『喜んでいるに違いない。今日はとても暑いです。外に長時間いるのには向いていません。 朱婧瑶17:33』
慎重に無地のところへマウスで星を描き込んでいく。
『叔父のためにいい時計を選ぶことができて嬉しいですね。そしてイチローさんも若香さんと一緒にいます。 朱婧瑶17:34』
『双子座の絵を描いていました。 岩上17:35』
俺は自分で描いた絵を彼女へ送った。
『若香さん、六月八日って誕生日言っていたから、双子座だなあと。 岩上17:35』
『イチローさんは絵が上手ですね。そうだな。若香は双子座のものだ。 朱婧瑶17:36』
相変わらずへんてこりんな日本語。
俺は笑いながらセブンスターに火をつける。
『もうちょっと明るい感じで描けば良かったと、ちょっと後悔しています。 岩上17:37』
彼女の為に描いた絵の記事をそのままブログへ発表した。

双子座の絵。
久しぶりに絵を描きました。
皐月賞負けたからじゃないですからねw。
え、絵なんて描いてないで小説書けってw?
もう14年書いてないですよねw。
※他の絵はこちらをどうぞ
ん?
十四年だったっけ?
正確には十三年と数ヶ月…、まあ何でもいいか……。
『また一度も描かないわけではない。でも若香はとても好きですね。絵が上手です。アニメみたいですね。イチローはいつ描いたんですか。今日ですか? 朱婧瑶17:40』
『今日ですよ。買い物から帰って、寿司食べて部屋戻って、すぐ取り掛かったんです。 岩上17:41』
本当はもうちょっとあとだけど、時間を掛けたんだというアピールぐらいしても罰は当たらないだろう。
『絵が速いですね。それにイチローさんの長所は多いと思いますか。料理も書くことも絵も描ける。 朱婧瑶17:45』
『あとは小説で執筆する事と、ピアノを弾く事をまた頑張らないといけないですね。 岩上17:46』
十三年ぶりの執筆に、二十年以上弾いていないピアノ。
すっかり錆びついた腕を何とか頑張ってまた取り戻さないとね、彼女の為にも……。
今度こそ愛する人の為に、俺は自分のピアノを捧げてみたい。
『うわー。こんなにすごい。ピアノも弾けますか。イチローさんに九十八点あげます。 百点あなたの誇りを恐れています。 朱婧瑶17:47』
『絵の右下にあるTのサインは、俺の名前の智一郎のTを崩してサインにしたものです 岩上17:48』
満点は俺が自惚れないようにか。
それにしても、変なところで日本語達者だな。
こういうところも彼女の性格が表れていて面白く感じる。
『若香さんに九十八点も頂けるなんて、生きてて良かった 岩上17:51』
『創作の理念がある。私は本当に宝の男を見つけましたね。イチローは毎日若香に違う驚きを与えていますね。 朱婧瑶17:51』
宝の男?
買い被り過ぎた。
一円にもならない絵。
印税すら入らなかった小説。
俺のどこに価値がある?
でもこうして認めてくれる異性が一人いるだけで、こうも心構えって違うものなんだな。
『それならもっと日々俺は頑張ります! 若香さん喜んでくれたら、とても励みになります 岩上17:52』
『イチローは確かに素晴らしいですね。今はイチローのような男は少ないですからね。イチローは何でもできると思います。 朱婧瑶17:52』
うん、確かに素晴らしくはないが、こんな駄目で馬鹿な男は世界でも珍しいだろう。
『何でもはできないですよ。色々足掻いて生きているだけです。 岩上17:53』
『若香は毎日イチローと話をするのが楽しいですね。何の悩みもない。この関係をずっと維持してほしい。出会うのは容易ではない。この感情を大切にします。 朱婧瑶17:54』
彼女との関係の維持か……。
まさかこんな年になって、このような出会いがあり、またときめくような心を持てるだなんて、想像もつかなかった。
神田と一緒に行った高円寺の手相占い師の予言。
尊敬できる異性と会えるという点だけは、当たっていたようだ。
金がわんさか入ってきた訳じゃないけどね。
『もがいてはいけないよ。イチローは上手にできたと思いますね。結局、自分の生活を悪く見せていないですね。 朱婧瑶17:54』
『若香さんにそんな風に言われて、ほんと幸せです、俺は。俺もあなたをとても大切に想っているし、これからも大事にしていきたい。 岩上17:55』
双子座の絵…、これまで描いた星座シリーズの絵の中でも俺にとって特別なものになりそうだ。
『私たちはいつもお互いを大切にしていますね。若香は縁を信じているから。幸せは自分で勝ち取るものだと信じています。私がイチローさんと話しに来たのもイチローの誠実さが若香を感動させたからです。 朱婧瑶17:59』
誠実さと感動か。
確かにそれって金じゃ絶対に買えないものだもんな。
『とても嬉しいです。若香さん本当に大好き。 岩上17:59』
『若香さんもイチローさんと毎日話すのが大好きです。すでに一つの法則が形成されている。毎日食事をするようなものです。なくてはならない。 朱婧瑶18:01』
ずっと孤独に生きてきた。
自分の中にある目に見えないルールに縛られながら、それに従って行動してきたつもり。
根底にあったワインの澱のようなものが、ドロッとこの瞬間溶けたような気がした。
『感動のあまり嬉しくて泣きそうです。 岩上18:01』
気付けば本当に少量の涙が出てきた。
いけないな。
会う前からこんなでは、実際に若香を目の前にしたらどうなってしまうのか。
幸せ過ぎて、それが怖い……。
『俺も若香の存在意識して、話す毎日が楽しいです。 岩上18:03』
『イチローさんを喜ばせることができます。若香さんも嬉しいですね。これは二人の暗黙の了解度で、お互いに何の支障もないチャットが好きです。 朱婧瑶18:07』
そういえば昼間から若香は買い物行って、ほとんど休まず俺の相手をしている。
少しでも休ませないと。
『買い物で暑い中外にいて疲れたでしょう。ゆっくりくつろいでご自愛下さいね。 岩上18:09』
『イチローさんは若香さんが今生活しているのがすばらしいのを見ないでください。数年前にいくつかの危機で破産しそうになって何もありませんでした。 朱婧瑶18:10』
ん、過去にピンチもあったという事か。
『どんな状況下にあろうとも、俺にとって若香さんは若香さんであり、価値が変わるものではありません。 岩上18:10』
誰だって人生が上り調子だけなんて事はないはず。
金を持っているから彼女を気に入っているのではない。
どんな状況であろうと、俺はこの子の人間性を気に入っているのだ。
『最近の危機は二千二十年、コロナが勃発した初期です。中国のコロナに対する管理政策は封城管理を行うことだからです。若香の気持ちも秋の楓葉と同じように、だんだん凋落していく。 朱婧瑶18:11』
あのコロナウイルスは、日本だけでなく当然世界規模で様々な損害を巻き起こした。
俺個人的にはコロナワクチン接種による翌日の心筋梗塞。
そして神田の無頓着なコロナ渦の連れ回しによるコロナ感染、品川プリンスホテルへ隔離で無収入期間。
まだこの程度で済んだから良かったものの、彼女は財産がある分相当な被害を受けたはずだろう。
『俺で何かできる事あれば、いつでも言って下さいね。 岩上18:12』
文面に心を込めて打った。
『コロナ初期は、日本でもパニックになっていましたね。 岩上18:13』
『そこで親友と一緒に医美整形病院を経営していたが、意外にもここで起こった。ここ数年で稼いだ資金を、ニつの新しい病院に投入し、チェーンブランドを作ろうとしている。医美整形病院は伝統病院と違って、手術項目を予約するには手付金を支払う必要があります。予定通りにサービスを履行できないため、多くの違約金を支払い、客先の資源を確保しています。市を閉鎖している間、従業員の給料だけでなく、三つの病院の賃貸料も支払わなければならない。 朱婧瑶18:16』
最近一緒に飲むようになった柏原も、規模の違いこそあれ、キャバクラやガールズバーを数軒畳むほどの損害を受けたと言っていたもんな。
『とても大変な状況に陥っていたんですね。 岩上18:18』
自身の命と、感染程度で済んだ俺は、まだ運がいいほうなのかもしれない。
『経営している以上、そういった支払いから逃げられないし、色々な責任を負わなければならない立場って、本当に辛く、心中察します 岩上18:20』
『私のパートナーも一緒に隔離され、すべてのストレスが私のところにありました。若香の財政に大きな危機をもたらした。当時、私は病院の資金不足を埋めるために、銀行に融資して、シンガポールの不動産を抵当に入れてみました。しかし、都市を閉鎖している間、これらの資金はただの焼け石に水で、収入源がなければ、その時、私と私の友人は本当に破産申請をします。 朱婧瑶18:26』
ほとんど裏業界にいた為、俺には絶対に分からない領域。
『父は当時の商売の資金繰りにも問題があり、最後に叔父は病院の苦境を知って、一部の蓄えを出すだけでなく、雪子が難関を乗り越えるのを助けた。 朱婧瑶18:27』
『コロナの弊害は色々なところで難関を出しましたよね。今こうして若香さんがいてくれて良かったけど、当時を思い出すと苦労の連続だったんですね。 岩上18:29』
彼女の大変さは正直分からない。
それでもできるだけ気持ちを理解できるよう寄り添う事はできる。
『はい。そして最も困難な時に最善の案を提出した。ちょうど金の値上がりに間に合った。叔父は若香に資金の一部を出して叔父と一緒に金市場への投資を学ぶことを提案した。私を苦境から救った。 朱婧瑶18:37』
ここで先ほどのロレックスを送った叔父が出てくるのか。
『しかし、当時私は金市場について何も知らなかったので、叔父は若香に十分な励ましを与えた。叔父は若香に、金市場への投資は非常に簡単で、携帯電話で十五から二十分操作すれば取引が完了すると伝え、雪子に取引前の準備ができていることを事前に知らせた。 朱婧瑶18:39』
『今の若香さんがあるように、当時の酷い状況から良くなって本当に良かったです。その叔父さんの今日は誕生日ですよね? 岩上18:40』
若香は続きを送ってくる。
『初めての操作で、若香は二千ドルで二百八十ドルを稼いだ。 本当に楽しかったです。 朱婧瑶18:41』
自分でドル相場を調べてみた。
一ドルが日本円だと百五十四・〇三円。
つまり若香は当時、三十万ぐらいの金から四万三千円ぐらいの金額を儲かったと言いたいのだろう。
『いいえ。 二十日の誕生日。 朱婧瑶18:42』
ん?
二十日の誕生日?
若香って六月八日じゃなかったっけ?
『叔父に郵送する必要があるからです。 朱婧瑶18:42』
『俺が知らない世界で、若香さんは色々学び、またそこでも様々な体験をして成長したんですね。 岩上18:42』
彼女のLINEはじっくり読んでから、返答した方が良さそうだ。
早とちりして返すと、自分が馬鹿さ加減が露呈してしまう。
『あと一週間くらい猶予あったんですね。若香さんがあれだけ考えて悩んで選んだ時計です。そういった気持ちも込みで、とても喜んでくれますよ。 岩上18:43』
『この世界では誰もが自分の苦難の重要性を持っています。誰かがどれだけのお金を払っているか、どれだけの見返りがあるかを気にせず、いつも困難な時に手を伸ばして援助の手を差し伸べ、いつも迷っている時に解読を手伝ってくれるなら、彼はきっと人生の貴人です。叔父はこのような人です。 朱婧瑶18:44』
貴婦人って言葉は聞いた事あるが、貴人か。
確かに困った時に手を差し伸べてくれる人間が、どれだけいるだろうか?
俺自身を振り返ると、坊主さん夫婦、先輩の岡部さん、そして横浜の石川雅之。
新宿では亡くなってしまったけど、斉藤弘一。
最近では大久保の『串市場ん』で知り合った柏原…、まだ彼はただの平等な飲み友達って感じか。
『素晴らしい人ですね。中々そういう人徳に長けた人はいません。 岩上18:45』
『この人生は幸いにも私に親切な人に出会った。普段は言葉が下手だが、すべてのことが心に残っている。血の濃い家族や手足のような友人、偶然出会った通行人など、私を助けてくれたすべての人は忘れない。 朱婧瑶18:46』
うん、そういった困難な時に手を差し伸べてくれた人間の恩義を絶対に忘れてはならないし、無下にしてはいけない。
『恩義はとても大事ですね。俺も義理人情は大切にしています。 岩上18:47』
『だから、若香は今日もロレックスの腕時計を選んだ。叔父に対する感謝の気持ちを表す。 朱婧瑶18:47』
この辺は金銭的な差こそあれ、俺の座右の銘である仁義礼智信と似通った部分がある。
『イチローさんが義理の厚い人だということを知っています。そうでなければ、もし香はイチローとこんなに馬が合うことはないだろう。 朱婧瑶18:48』
『ありがとうございます。若香さんにそう言ってとらえて嬉しく思います。 岩上18:48』
手相占い師の言った尊敬できる相手。
おそらくこういった価値観の共有によるものだろう。
『「若香」は正直に言うのが好きですね。イチローが若香に感じたのは正直で信頼できることだ。肩ががっしりしている。 朱婧瑶18:55』
まあ格闘技をやっていたから、身体はガッチリしているけど、若香が言いたいのは体格的なものではないだろう。
文字でなく実際の言葉で、それを聞いてみたいな。
『若香さんの声、いつか電話で話してみたいです。 岩上18:57』
『いいですね。それはしばらくして若香の日本語のレベルが上がるのを待ちます。一時的に日本語の話し言葉がもっと上達するからです。 朱婧瑶19:09』
うん、俺が彼女へ英語や中国語でそれを伝えろと言っているようなもんだしね。
大いに同感するよ。
『早く三ヶ月経たないかなあ。とても待ち遠しいです。 岩上19:10』
『若香も楽しみですね。イチローさんは若香を連れて美味しい食べ物ときれいな風景を味わった。 朱婧瑶19:13』
味わったではなく、これからだから味わおうだろ。
こういった日本語の修正も、会ってから色々教えていかないとね。
『早くそう実現したいものです。 岩上19:14』
『きっとできますよ。若香は今から野菜を洗いに行きます。夜は自分で鍋を食べます。 朱婧瑶19:25』
もう夕食の時間帯か。
『いいですね! 俺も鍋は好きです。 岩上19:26』
あ、邪魔しちゃ悪いから早く促そう。
『行ってらっしゃい。 岩上19:26』
三十分ほどして彼女から料理の写真が届く。
本当に律着な子だな。
まあ俺も作った料理を見せているし、気持ちは同じか。
『完成しました。 朱婧瑶20:02』
『美味しそう! 若香さんの手作りですよね。 岩上20:02』
『もちろん自分で作ったんですよ。 自分で食べるのは比較的簡単です。 朱婧瑶20:04』

『若香さんがこっち来たら、全日本プロレス仕込のちゃんこ鍋作りますね。 岩上20:05』
俺は過去毎日のように作った全日本プロレス時代の王道ちゃんこ鍋のクックパッドへ載せているレシピを見せる。
『このような鍋若香はまだ食べたことがないですね。食材も十分にありそうですね。 朱婧瑶20:10』
『俺は当時この鍋をたくさん食べて、身体を大きくしました。 岩上20:13』
あ、また話が弾んでしまう。
若香の食事の時間を邪魔するなって。
必死に自身を自制した。
『ゆっくりくつろいで食事を楽しんで下さいね。 岩上20:14』
『気軽に楽しんでいます。イチローは夜に何を食べるつもりですか。自分で作るのか、それとも出前を食べるつもりか。 朱婧瑶20:17』
昼過ぎにマグっただけだけど、今はまだいいか。
どうせインカジ『レディ』の仕事中、出前を取るか、終わってから食べるだろうし。
『夜はもう食べず、朝に仕事終わってから何か食べようと思っていますね。 岩上20:21』
『今夜も仕事に行く必要はありませんか? 朱婧瑶20:35』
この辺、裏稼業の遅番だから説明が面倒だな。
『今夜は仕事ですよ。次の休みは十七日の水曜です。 岩上20:35』
『来週から昼間の仕事に出られますか? 朱婧瑶20:40』
前にも説明したと思ったけど、分かりづらいよね。
『いえ、四月五月と夜で、六月から昼間になりますよ 岩上20:41』
『それが六月になると私も過ぎ去るのではないでしょうか。夜の仕事は昼の仕事より給料が高いですか? 朱婧瑶20:44』
えーと、確か夜は一・二十五倍増しで、残業するとさらにそこから増すから一・五倍。
『若干給料は高くなりますよ。六月になると若香さんが過ぎ去る? そんな事、あるわけ無いじゃないですか。 岩上20:47』
『大変でした。 ほぼ六月末ごろに大阪に到着しました。 朱婧瑶20:52』
七月でなく六月に若香が日本へ来る?
じゃああと二ヶ月後じゃないか!
『六月末に若香さん、大阪来るんですね! 凄く楽しみです。 岩上20:53』
『そうだな。この時間でしょう。でも行く前にイチローに言いますね。あなたも時間を取らなければなりませんか。 朱婧瑶20:57』
休みを取れって事だろ?
当たり前じゃないか。
『若香さんが予定空けてくれるなら、俺は喜んで時間を作りますよ! 岩上20:57』
『私が帰ったのはもう時間がありますね。そして、自分の気持ちをリラックスさせなければなりません。日本の食べ物や観光地については、一度行ってみましょう。 朱婧瑶21:00』
まるで今の俺は腹ペコの餌を見つけた野良犬のようだ。
『そうですね! 早く時間経って若香さんが日本に来る日が近づきますよーに! 岩上21:01』
『イチローは若香を連れて横浜に桜を鑑賞すると言っているのではない。でもその頃にはもう桜は枯れているはずです。 朱婧瑶21:01』
うん、確かに六月じゃとっくに桜など枯れている。
『桜は枯れているけど、別の素敵な場所へ案内しますよ。 岩上21:01』
『そうですか。 神秘感を保つ必要がありますね。 朱婧瑶21:12』
最初はどこへ連れて行こうか?
やっぱり横浜からがいいよな。
『俺は若香さんと一緒なら、どこでも楽しめます。 岩上21:13』
『日本の美しいところは本当に多すぎます。しかし、私は騒々しい都市が好きではありません。東京はあまり面白くありません。やはり近くの村の景色は実はもっと美しくなります。 朱婧瑶21:14』
村はないけど、それなら地元の川越がいいのかな。
『俺の地元の川越にも連れていきたいものですね。 岩上21:15』
蔵造りの街並みと時の鐘の画像を送る。
『川越の町並みです。 岩上21:17』
『綺麗ですね。しかも年代感がある。このような古色の古い建物が好きです。 朱婧瑶21:24』
うん、彼女には横浜より川越のほうがいいかもしれない。
『蔵造り(くらづくり)と言って、昔からの建物なんですよ。 岩上21:24』
続いて喜多院の五百羅漢の画像を見せた。

『本当にいいですね。イチローが私にあなたの故郷だと言わなければ。イチローが描いたと思いました。 朱婧瑶21:26』
『喜多院という寺院があって、中に五百羅漢というものもあります。 岩上21:26』
これのどこが俺の描いた絵になるんだ。
まあこれも彼女なりのお世辞という訳か。
『俺はここまで上手く描けないですよ。 岩上21:26』
『年代感があるように見える。羅漢は外で春夏秋冬に苦しんでいる。摩耗がひどくない以上ですね。 朱婧瑶21:28』
確か俺が五百羅漢を知ったのは小学生の頃。
夜中に地蔵の頭を触ると一体だけ暖かいのがあり、昼間になってここへ行くと何かあるなんて聞いた事あるけど、こんなところへ深夜一人で行く勇気なんてないから試した事もない。
『五百羅漢も昔からありますね。夜中ここへ一人で行き、地蔵の頭を触ると一つだけ温かく感じる地蔵がいて、それが将来の自身の姿という逸話もあります。 岩上21:29』
『この言い方はまだありますか。これは伝説なのか、それともイチロー自身が実感したものなのか。 朱婧瑶21:31』
まあどう考えても逸話であり迷信の類いだろうな。
『幼い頃、人から聞いた話です。 岩上21:32』
『イチローは自分で感じたことがあると思っていました。やはり不思議なことに聞こえる。イチローは、似たようなシーンを夢見たことがありますか。 朱婧瑶21:34』
だから怖くてガキの頃、一人で行けていないんだってば。
『いえ、五百羅漢に関しては話を聞いただけで、実際に試した事は無いんですよね。 岩上21:35』
どうやら若香はこういったほうが好きなようだ。
『喜多院の多宝塔。 岩上21:36』
『これらは川越の観光地ですか? 朱婧瑶21:37』
決まりだな。
最初のデートは川越に決定。
『そうですね。でも俺の実家からも近いところです。徒歩五分くらいで着きますね。 岩上21:38』
『こんなに近いですね。それは確かに便利ですね。一郎は今新宿にいます。川越の家は掃除する人がいますか? 朱婧瑶21:41』
まあ親父がいるからね。
叔母のピーちゃんは掃除なんて絶対にしないだろうけど。
『川越の実家は父が住んでいて、会社を経営しています。 岩上21:42』
『なるほど。イチローも川越に戻って発展できると思いますね。クラスメートはみんなそばにいる。そしてお父さんも年をとったらあなたの世話が必要でしょう。 朱婧瑶21:43』
この辺これまでの岩上家の人生を振り返ると、本当に複雑だからなあ……。
まあ俺の呪われた過去は、会ってからおいおい話していけばいいだろう。
『実家はクリーニング屋なんですよ。弟もいるので、世話は弟がします。 岩上21:44』
川越のマップを出し、実家の位置を教えた。
まあこんなものを見せたところで、シンガポールにいる彼女には分からないだろうけど。
『赤い印が実家で、喜多院も近いですよ。 岩上21:46』
続いて時の鐘の位置も地図を見せる。

『さっき話した蔵造りのところが、時の鐘のところなので、こちらも近いです。 岩上21:47』
『なるほど。イチローが外にいるのも不思議ではない。若香の家には若香が一人いる。父はますます年をとっている。若香の世話が必要ですね。 朱婧瑶21:53』
本当に優しい子なんだな。
『若香さんはとても優しくて立派ですよ。 岩上21:54』
俺にとって家族とは、亡くなってしまったおじいちゃんぐらい。
『俺の家はもう亡くなって十年になりますが、祖父がいたんです。 岩上21:54』
『祖父はとても名士で、天皇陛下からも勲章をもらいました。 岩上21:54』
あの当時を思い出すと、身体中に蛆虫のようなものが全身をつたってくるようで、本当に気持ちが悪くなる。
『亡くなった時、酷い遺産相続で揉めて、俺は嫌になって実家を出たんです。 岩上21:56』
『うわー。すごいですね。イチローの祖父は大臣だった。それもすごいですね。財産分割の問題もあります。イチローは生活を体験する官二代のようだとは思いませんか。 朱婧瑶21:59』
大臣でも政治家でもないんだけどね……。
それを彼女へ説明するのは大変なのでやめておく。
『政治家になれとは言われましたが、断りました。 岩上21:59』
『俺は遺産放棄して、自由気ままに生きる事にしたって感じですね。 岩上22:00』
もう夜の十時か。
若香と話していると、本当に時間が経つのが早い。
『そろそろ仕事の準備して向かいますね。若香さんはゆっくりお休み下さい。 岩上22:04』
『イチローと話をしているといつの間にかあなたの出勤時間になっていますね。 朱婧瑶22:11』
彼女もそう感じてくれているみたいで素直に嬉しい。
『イチローはまず自分の考えた生活を送る。 朱婧瑶22:11』
『それだけ若香さんとのやり取りが有意義な時間を過ごしているんですよ。 岩上22:15』
仕事へ行く前に感謝を伝えておこう。
『ありがとうございます。俺も健康第一に考え、日々を過ごしますよ。 岩上22:16』
『イチローと話していても時間を見ていない。もう九時過ぎですね。今日はイチローにたくさん話して楽しかったです。 朱婧瑶22:17』
九時?
多分、シンガポールと日本の時差の関係かな?
『俺も本当に楽しかったですよ。充実した休日を過ごせました。 岩上22:19』
さて、本当に着替えないと。
『それでは仕事向かいますね。 岩上22:19』
『そうですね。毎日イチローさんと楽しく過ごしたいですね。イチローはよく働いてね。 朱婧瑶22:20』
自称俳優マンションを出る。
『ありがとうございます。もう駅着きました。 岩上22:22』
『イチローは車で職場までどのくらいかかりますか。近いじゃないですか。 朱婧瑶22:28』
さすがにもう駅なんて、彼女は俺の住む立地など分からないよな。
驚くのも無理はない。
『車でなく電車ですね。マンションから駅まで徒歩一分。新宿駅まで一駅なんですよ。 岩上22:30』
『それは大丈夫です。そんなに遠くないですね。交通の便がいい。 朱婧瑶22:38』
新宿駅に着き、靖国通りを渡った先に見えるゴジラホテルギャラクシーを撮影し、若香へ送る。
『ゴジラのいるホテルです 岩上22:38』

『交通の便はかなりいいですよ。 岩上22:39』
『夜はにぎやかですね。人が多いですね。これは繁華街ですね。 朱婧瑶22:43』
まあ世界一の歓楽街歌舞伎町だもんな。
元コマ劇場といったところで絶対に分からないだろう。
余計な説明はやめておく。
『そうです。歌舞伎町のホテルギャラクシーですね、実寸大のゴジラがいる事で有名なホテルです。 岩上23:10』
『こんなに素敵です。その帰りにはちょっと見てもいいですよ。 朱婧瑶23:21』
明るい写真を見たいと言いたいのかな?
『明るい写真じゃないと、ちょっと分かりづらかったですよね。帰りにまた撮ってみますね。 岩上23:22』
『大丈夫ですよ。また今度撮ります。急がないでね。もし香が寝る準備ができたら。イチローはよく働いてね。 また明日。 朱婧瑶23:41』
インカジ『レディ』へ到着する。
さて、またこれから仕事を頑張りますかね。

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