うおとひと 2025(2025/5/18)
1.初めに・構成
おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。きんたい廃校水族館にて毎年開催される日本淡水魚好きを中心にブースを出し、作品を販売、展示されているイベントへ今年も行ってきました。。今回は、このイベントで、興味を持ったもの、お会いでき、話をしたことなどを書いていきます。よろしくお願いします。今回は、「あつたうなぎのまち水族館プロジェクト」、「エーピーエヌ ネイチャー・コミュニケーション部」、「よくわかる!日本のヨシノボリ」の3ブースについて紹介させていただきます。
*2024年も私は客として参加しました。こちらも是非、ご覧ください。
2.あつたうなぎのまち水族館プロジェクト
こちらの団体は、ひつまぶしが生まれた名古屋市の熱田区を拠点にうなぎを中心とした水族館を作るために活動している団体です。また、こちらの団体は、名古屋市から「第5次地域福祉活動計画」の認定プロジェクトとなっており、今年の1~2月に立ち上がったプロジェクトになります。現在は、子供用や高齢者向け施設に向けてウナギと飼育に必要な設備を出し、設置したり、ウナギに関するシンポジウムを開くなどの活動を行っております。
ここでの展示品は、当然、ウナギです。しかし、ただのウナギではなく、「パンダウナギ」というパンダ模様の付いたウナギであり、10万分の1の確率でしか発生しないウナギです。主催者にお話を聞いたのですが、「とりあえず、このパンダウナギという珍しいものを見てほしい。ここでの展示は、ウナギについて知るきっかけであってほしい。」と話していました。また、ウナギのこともすごく詳しく、愛情を持っていることも感じ、最大で16匹飼育し、それらのウナギも飼育を前提として渡していました。「酸欠や飢餓に強いから、飼いやすい」と飼育の勧めまで語ってくれました。

1/100,000の確率で発生します。
しかし、今のウナギというのは、問題しか抱えていません。それは、「絶滅危惧種」だからです。現在の評価では、「絶滅危惧種IB」となり、「近い将来、絶滅するリスクがある」という評価を受けています。その上がIA、さらに上が、「野生絶滅」となり、状況は決して良くありません。詳細は、こちらの書籍を読んでほしいのですが、ウナギが絶滅の危機に追い込まれている最大の原因は「密猟」であり、どこでどのように獲られたものか、それが全く分からないものが私たちの食卓に並んでいます。密猟だけでなく、繁殖もマリアナ海溝付近で行い、生まれた稚魚(*レプトケファルス)が、海流に乗って日本にやってこなければならなりません。つまり、養殖が簡単ではないということです。実際、完全養殖されたウナギはいますが、コストの関係から市場で当たり前になるにはまだまだ時間がかかる上、実際に完全養殖で市場を満たせる保証もあるとは限りません。今の段階では、ウナギの「自然下」での繁殖と消費でバランスがとれる状況を目指さなければならないということです。
ウナギの過剰浪費は、大問題であり、今すぐに改善されなければなりません。しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、ウナギの利用を「禁止すればいい」というわけではないということです。まず、ウナギは、いつから利用されたのでしょうか?実は、縄文時代から利用されていたことが分かっており、貝塚から出土しています。(*過去に私も貝塚の魚の骨の同定をしたことがあり、ウナギの椎骨かを同定したことがあります。)そして、今に至るまで途切れることなく、ウナギが利用され続けています。つまり、ウナギは、ある時、突然私たちの食卓へ天から運良く降ってきた恩恵ではなく、歴史という長い時間をかけて作られた「文化」だということです。つまり、ウナギの絶滅と禁止は、うなぎを食べていくなどの利用のでの文化の喪失を意味します。ブースの出展者もウナギの利用がなくなってほしいわけではないと言っていました。また、ウナギを禁止すれば、それで生計をたてている人を追い込んでしまうからいいのか?と疑問を呈してました。まして、このプロジェクトが、「ひつまぶし」を起点にしていることを考えれば、ウナギが絶滅しないだけでなく、利用も続いてほしい思いがこもっているのではないかと私は感じました。

私は、ウナギという生き物はどういう生き物か?を起点に考えた時、教えられること、しなければならないことが非常に多いです。ウナギは、河川の生態系ではトッププレデターに位置するため、ウナギの住める環境は必然的にエサ生物が安定的に暮らせる環境が求められます。また、産卵の時に海へと下り、成長の段階で川へ遡上するので、川と海が繋がっていなければなりません。そして、私たちはウナギを利用し続けており、それは文化となっています。ウナギを保全していくことは、ただただ私達が美味しい思いをするためだけでなく、生態系を保全し歴史と文化を守ることが同時に両立できる生き物です。出展者もここに気づいてほしいと言っており、私も、そういう意味ではウナギは魅力が多く、教えてくれることが多いとてもいい生き物だと思います。

※過去に生き物の利用と歴史についてブログがあります。ウナギと共通することが多いので、こちらも是非、ご覧下さい。
3.エーピーエヌ ネイチャー・コミュニケーション部
こちらは、東海地方を拠点に熱帯魚の販売とレンタル、メンテナンスを行う会社になります。アクアリウムを通して、人と自然を繋げる活動にしていきたいという思いがあり、今回の活動に至ったということになります。ここでは、岐阜県を中心とし、濃尾平野に生息する淡水魚の生体と自然環境についてのパネル展示を行っていました。濃尾平野には、木曽三川(※長良川、木曽川、揖斐川)と濃尾平野の地理とそこに暮らす人々がどのような歴史や文化を作ってきたのかについて紹介されていました。長良川では、鵜飼によってアユがとられている歴史があること、南濃では湧水が噴き出て20℃以下が保たれるおかげでハリヨが生息できる環境が生息していることなどです。生体は、リヤカーの上に設置された水槽で、10種類近く展示されており、それぞれの生物がどういう特徴を持っているのかがパネルで解説されていました。

私が、この濃尾平野と木曽三川の関係性で面白いなとおもったのが、「輪中の魚」で展示されていた淡水魚です。そもそも木曽三川が入り込む土地は、川の入り組みが複雑で、島みたいな土地がある上、洪水が頻発した地域でもありました。それだけでなく、湧水が多いこと、排水が難しいことも重なり、水田が多い土地でもありました。つまり、生き物の視点から見た場合、「氾濫原」が水田という人工的な環境に加えて創出されたことで、生息に適した環境であったということになります。そういう環境をカワバタモロコ、トウカイヨシノボリ、デメモロコなどの生き物が好み、数多く棲息していました。しかし、今では干拓が進んだことで生息地が失われてしまい、水質汚染が進み数が減ってしまっています。




カワヒガイ
東海地方の魅力のある生き物の一つにドジョウがいます。ここでは、ホトケドジョウ、ニシシマドジョウ、トウカイコガタスジシマドジョウの3種が展示されていました。その中で興味深かったのが、ニシシマとトウカイコガタです。うぱさんが開催された企画展などでドジョウは多く取り上げられており、日本各地、どこでも違うものが生息しています。つまり、シマドジョウは、日本の地域性、多様性、そして、違いを象徴する生き物であり、この2種も東海地方を象徴する生き物であると思います。
一般的に言うシマドジョウは斑点の縞々模様のもの、スジシマドジョウは一本線が側面に通っているイメージですが、この両者は、非常にややこしいです。模様がどちらも似ている上、生息地も被るからです。しかし、区別できるポイントはあります。それは、「尾鰭の付け根の斑点」です。二つある斑点の下の部分の明暗で見分けます。ニシシマがはっきりするのに対し、トウカイコガタはやや薄めです。また、トウカイコガタは、スジシマドジョウの中でも体が丸みを帯びているので、そこも見分けるポイントになります。しかし、下の写真でも見分けるのを私も間違えているので、見分けるのはかなり難しかったです。

奥がニシシマドジョウ

今回の展示で、まず、獲れないであろう面白い生体が展示されていました。それは、カワヨシノボリのショート個体です。ショートなのは、「体のサイズ」であり、脊椎の数が半分ほどのため、体のサイズが半分ほどと見られています。何故、このような個体が生まれたのか、その理由はよく分かっていませんし、ブースの方は、「このような個体は、生き残りづらいからよくこのサイズになるまで、生き残った」と驚いていました。

紹介させてもらったのは一部でしたが、岐阜県を中心とした濃尾平野の土地柄とそれにあったもの、この地域にしか生息しない生き物について紹介していたと思います。私も熱帯魚を飼育していますが、そのきっかけは、近くの用水路で捕まえたカワムツの飼育です。つまり、自然に触れ合うことが、アクアリウムのスタートだったということです。それ故、アクアリウムの会社が身近な日本の魚について紹介・発信し次の世代に繋いでいこうとする活動はとても大事な活動だと思います。そもそもアクアリウムは、生き物を利用することで成り立っている趣味であり、自然環境とそこに生息する生き物が安定していなければ成り立ちません。自然環境を守らなければならないという基盤を意識した大事な活動だと思います。
※木曽三川、濃尾平野を中心とした淡水魚、自然について詳しく知りたい方がいらっしゃったら、まずは、こちらをご覧ください。そして、アクアトト岐阜へ行くことをお勧めします。4フロアのうちの2フロアが日本の淡水魚の展示になっている気合いのはいりっぷりです。
4.よくわかる!日本のヨシノボリ
最後は、ヨシノボリについて展示を行ったフロアになります。ヨシノボリは、
今回、展示されていたヨシノボリは、全部で8種になり、全国で幅広く見られるものを対象にして持ってきたと話していました。今回、大坂で展示するということもあり、シマヒレヨシノボリは、淀川や大東市で実際にその場で採取したものを持ってきたものです。現地のものを見せようという気合ぶりがすごいです。

ブースの出展者とヨシノボリについて話を聞いて面白く魅力であると思いつつヨシノボリは、高い壁であると感じる話をさせてもらいました。それは、「地域単位で分断されている点」です。特に、トウヨシノボリとカワヨシノボリでその話の詳細を聞かせてもらいました。まず、トウヨシノボリは日本全国で1種とされていますが、これは、まだ「調べられていない」だけであり、同一種となっているだけです。つまり、今後の研究で別種になる可能性を含んでいる存在になります。
カワヨシノボリは、遺伝的、形態的に複数の集団に分かれることがあり、現在、その研究が行われている生き物です。私が聞いた時は、5系統に別れるそうで、最近、五島列島のものが追加されたそうです。ブースの出展者は、実際に採取されたものを見て本土のカワヨシノボリと比べて形態がかなり違うと話していました。他にも長野県や福井県ではまだ系統関係などがよく分かっていないことを説明してくれました。カワヨシノボリ、特に、五島列島での話を聞いて感じたのが、「島嶼化」です。島と大陸で生き物を比べたら、大きさや形態で違いが現れるというものです。出展者からは、五島列島にカブトムシやクワガタも生息しているものの本土のものと違いがあることを教えてくれました。昆虫で比較しても共通することが見つかるのは、驚かされます。



トウヨシノボリとカワヨシノボリだけでなく、今回のために採取したシマヒレヨシノボリは、淀川のものではまた違いがあることを指摘しています。淀川のシマヒレヨシノボリは、一般的なものよりもオスの鰭がより進長しやすい傾向にあり、ビワヨシノボリとの中間的な特徴となっていることを教えてくれました。トウヨシノボリとカワヨシノボリだけ特別ではないということです。
*過去にマングースで生物の生息に地理な分断があることを紹介しています。興味を持ったら、是非、こちらもどうぞご覧ください。
※島嶼化については、過去にヒラタクワガタで日本がその象徴のような存在であることを説明しています。こちらを読めば、「島嶼化」の面白さとそれ故起こっている問題がわかります。
ヨシノボリのすごい点は、まだあります。地域で差があることを先ほど説明しましたが、ヨシノボリは種類によって「陸封型」と「回遊を行う」ものがいます。つまり、純淡水のものと海と川を行き来するもので別れるということです。今回、展示されていたものなら、シマヨシノボリ、ビワヨシノボリ、カワヨシノボリ以外は、回遊を行います。ただ、トウヨシノボリは、回遊を行うというものの今回展示されていたものは新潟の個体で、陸封型と教えてもらいました。ヨシノボリというと私は、種類も多く、生態も一様で掴みどころがまったくわからないと思っており、回遊を行うのか、そうでないのか、種によってもまた違いがある。非常に複雑だなと感じています。

回遊を行う

回遊を行う
私は、ヨシノボリというというと、どこにでもいるけど、地域毎で違うもので回遊もするという分断と繋がりが複数に織り混ざった何重にも複雑な生物の存在だと思います。つまり、手を出しにくい生物だということです。ただ、わたしはそれをヨシノボリのネガティブな面だとは決して思っていませんし、むしろ、ヨシノボリのもつ最大の魅力だと思います。日本という国は、山や川が生息地を分断し、それが生物を別物にしていますが、同時に海と川が繋がっているため、日本の自然を自らの移動で繋げる存在で、その二つを同時に知ることのできる素晴らしい生物だと思います。ヨシノボリは種類も多く、生態系も複雑な上、分かってないことも少なくないです。それ故、どこから知ればいいのかもわからなかったのですが、今回の展示でヨシノボリについてどこから知ればいいのか、その入りが分かった気がしました。最近、ガサもすることがあるので、ヨシノボリについてもっと知ってみたいと思うようになりました。
※よくわかる!ヨシノボリさんのブログは、こちらから読めます。ガサガサの仕方、各ヨシノボリの解説など、学べるものが非常に多いです。是非、ご覧ください。
5.まとめ
以上が、2025年のうおとひとの紹介でした。今回は、去年では取り上げなかったブース、今年初めて出展したブースを選択して紹介させていただきました。去年のうおとひともすごかったのですが、今年は、出展者が増えただけでなく、内容も質もさらに上がったと感じました。今年の出展は、より専門で扱う内容が多く、深みが増したことを感じました。
あつたうなぎのまち水族館プロジェクトは、まだ始まったばかりの中での現在の活動を紹介してもらいましたが、ウナギの素晴らしさと魅力をどう感じているのか、共感できることが多い所ばかりでしたので、成功してほしいです。ウナギはただの消費物ではないと世の中が気づいてほしいです。エーピーエヌ ネイチャー・コミュニケーション部は、アクアリウムという趣味が、そもそも生物や環境の恩恵を最大に受けているからこそ成り立つ趣味であるからこそ、地元の自然を見つめた展示になっていたと思います。日本の淡水魚でも、外国の生物とは違う魅力を持っています。よくわかる!日本のヨシノボリでは、ヨシノボリというどこにでもいるが、よく見ると違う上、その違いは、日本という地理が複雑に絡んでいるという内容でした。ただ、ヨシノボリの入りとしては、私はちょうどいい内容でした。このヨシノボリとは何者か?ここをきっかけに私なりに知りたいことが増えましたし、実は、よく調べたいヨシノボリも見つけました。
以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次回もお楽しみに。
