四式戦のプロペラを2025年化したら、何km/hまで伸びるのか
主問題は、馬力を受け止める容量不足ではなかった。高速域で、その馬力を速度へ変換する効率だった。
史実プロペラのまま誉2025を搭載した四式戦は、中央ケースで657.90 km/hだった。
そこでプロペラだけを2025年の技術で再設計すると、中央設計ケースの最高速度候補は682.95 km/hになった。
差は+25.05 km/hである。
プロペラだけを変更した比較で、高速性能には明確な改善が検出された。
ただし、682.95 km/hは実機の確定最高速度ではない。飛行試験で得た実測値でも、耐久試験を通過した認証性能でもない。今回の形状、材料、強度、制御、空力仮定を通した2025年技術による中央設計候補である。
それでも、前回までとは重要な違いがあった。
27通りの感度ケースで、最高速度差は+20.22~+46.12 km/h。7,000 m速度差は+18.96~+53.09 km/hとなり、どちらも差分検出判定はDETECTED_IMPROVEMENTだった。
一方、5,000 m上昇の短縮幅は-1.93~+26.10秒。条件によっては改修前より遅くなるケースもあり、判定はUNCERTAINのままである。
つまり今回、明確に検出できたのは高速性能の改善であり、上昇性能の改善ではない。
誉2025を載せても、すぐには速くならなかった
第1回では、誉の基本形式を残したまま、材料、加工、燃焼、潤滑、点火、品質管理を2025年化した。
その結果、誉2025のNOMINAL離昇候補は2,142 PSになった。ところが史実プロペラ、史実減速機、史実機体側冷却を残した四式戦では、上昇開始時に利用可能と評価できたのは中央1,887.9 PSだった。最高速度と上昇は改善方向に動いたが、その改善量はどちらもUNCERTAINだった。
第2回では、約254 PS相当を一つの部品の「損失馬力」として扱わず、減速機、冷却、プロペラの制約を分解した。
上昇開始では冷却が強く効き、その次に減速機が現れた。ところが7,000 mの高速条件では、プロペラ吸収能力が第一制約になった。
四式戦に、全飛行状態を通した単一の「最大ボトルネック」は存在しなかった。弱点は飛び方によって移動したのである。
では、高高度高速域でプロペラを2025年化すればどうなるのか。
プロペラの容量を増やせば解決するのか
最初に疑ったのは、史実プロペラが誉2025の馬力を物理的に吸収できない可能性だった。
エンジンが2,000 PSを超える軸出力を作っても、プロペラがその馬力を吸収できなければ推力には変わらない。ならば吸収容量を増やせば、四式戦は一気に速くなるように見える。
そこで、他の性能を変えず、プロペラの吸収容量上限だけを計算上解除した。
中央最高速度の改善は、+0.70 km/hだった。
ほとんど変わらない。
高高度最高速点で見つかった吸収容量の不足は実在する。しかし中央条件では、その差だけを埋めても速度改善の大部分を説明できなかった。
次に、高進み率、高翼端Mach、高速飛行領域で落ちていたプロペラ効率だけを改善包絡へ置き換えた。
中央最高速度の改善は、+24.78 km/hになった。
最後に、吸収容量と効率包絡を統合したスクリーニングC3は、中央+26.99 km/hだった。
診断:吸収容量だけ改善
中央最高速度差:+0.70 km/h
意味:馬力を受け止める上限だけを解除
診断:効率改善包絡
中央最高速度差:+24.78 km/h
意味:高速域で馬力を推力へ変える効率を改善
診断:C3探索包絡
中央最高速度差:+26.99 km/h
意味:容量と効率の改善余地を統合
診断:P2実設計候補
中央最高速度差:+25.05 km/h
意味:明示形状から計算した2025年プロペラ候補
ここで原因が逆転した。
主問題は、誉2025の馬力をプロペラが受け止められないことではなかった。
高速・高進み率・高翼端Mach領域で、受け取った馬力を速度へ変換する効率が落ちていたのである。
一案を正解にせず、三案を作った
ただし、効率包絡は設計図ではない。
同時代のNACA類似試験から、飛行領域ごとに高い効率を集めた探索上の包絡にすぎない。直径、翼数、コード、ねじり、材料、ピッチ機構を持つ一つの実在プロペラが、そのすべてを同時に実現できる保証はない。
そこで、C3の684.89 km/hへ数値を合わせるのではなく、形状と回転条件を明示した三案を作った。
・P1:史実寸法に近い保守的4翅改善案
・P2:史実直径・史実減速比を維持した5翅最適化案
・P3:回転数を下げる条件付き5翅高性能案
三案を同じモデル、同じ機体、同じ誉2025で比較した結果、記事3の主仕様としてP2を採用した。
P2の中央設計ケースは次のようになった。
・最高速度候補:682.95 km/h
・史実プロペラ+誉2025の中央ケース:657.90 km/h
・中央差:+25.05 km/h
・7,000 m速度差:+23.94 km/h
・C3が示した中央速度改善余地の約92.8%を回収
ここでいう92.8%は、あくまでスクリーニング時のC3探索包絡に対する回収率である。「物理限界の92.8%」ではない。
高速性能は検出、上昇性能は不確実
中央ケースだけなら、P2の5,000 m上昇は281.49秒から270.58秒へ短縮した。差は10.92秒である。
しかし、この中央値だけを使って「上昇も速くなった」とは言えない。
27ケースの結果は次の通りである。
評価指標:最高速度
P2の対応差分:+20.22~+46.12 km/h
判定:DETECTED_IMPROVEMENT
評価指標:7,000 m速度
P2の対応差分:+18.96~+53.09 km/h
判定:DETECTED_IMPROVEMENT
評価指標:5,000 m上昇短縮
P2の対応差分:-1.93~+26.10秒
判定:UNCERTAIN
高速性能は、妥当な全感度ケースで同じ改善方向となり、既存の差分検出下限11.692 km/hを超えた。
一方、5,000 m上昇は方向が反転するケースがある。プロペラ後流と史実冷却系の連成、上昇域の効率、候補質量を機体性能へ反映できていないことが不確実性として残る。
したがって記事3の結論は、次のように限定する。
P2は高速性能を明確に改善する2025年設計候補である。上昇性能まで明確に改善すると断定できる段階ではない。
では、なぜP2は5翅、史実直径3.10896 m、1,500 rpm、史実減速比0.5、外翼後退24°になったのか。
5翅だから速いのではない。高進み率と高翼端Machの中で、各半径の翼断面をどう働かせれば、誉2025の馬力を速度へ変えられるのか。
ここから、P1、P2、P3の形状、ピッチ、Mach、材料、強度、慣性を分解する。
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