私が断片的に考えていたことを、つなげてもらえました
※守秘義務およびプライバシー保護のため、本稿は複数の実際の支援経験をもとに、業種・地域・企業規模・経営者の属性・時系列などを一部変更・再構成しています。特定の企業・人物について記述したものではありません。なお、相談現場での気づきや意思決定のプロセスについては、実際の支援経験をもとにしています。
「自分の代で、新しい事業をつくりたいんです」
以前、ある後継経営者からそんな相談を受けました。
先代から引き継いだ既存事業があります。社員もいる。顧客もいる。今すぐ会社が立ち行かなくなるわけでもありません。
でも、このまま先代から引き継いだ事業を続けるだけではなく、自分の代で新しい柱をつくりたい。
いわば、事業承継後の「第二創業」です。
新しいサービスのアイデアもありました。社会的にも意味がありそうです。本人もかなり考えていました。
最初の相談テーマは、
「このアイデアを、どうやったら事業化できますか?」
でした。
普通なら、市場規模や競合、ビジネスモデルの話になりそうです。
でも、話を聞いているうちに私は少し違和感を持ちました。
「そもそも、この人は自分の代で何を実現したいんだろう?」
考えていないのではなく、つながっていない
本人は何も考えていなかったわけではありません。
むしろ逆です。
新しいサービスについて考えている。
自社の強みについても考えている。
社会課題についても考えている。
会社の将来についても考えている。
でも、一つ分からないことがありました。
「結局、誰がお金を払うんだろう?」
提供したいサービスはある。
社会的な意味もある。
でも、誰が一番困っているのか。その人は何に困っているのか。何が解決されたら、お金を払いたいと思うのか。
そこが、ぼんやりしていました。
新規事業の相談では、こういうことがよくあります。
少し乱暴に言えば、
「こんなに素晴らしいドリルを作りました!」
という話です。
技術がすごい。
サービスが新しい。
競合より優れている。
社会課題も解決できる。
確かに素晴らしい。
ターゲットも設定されていることがあります。
ところが、さらに聞いていくと、
「このサービスなら、この人たちが買ってくれるはず」
という、自分たちに都合のいいターゲットになっていることがあります。
ドリルを作った側は、ドリルの素晴らしさを語りたくなります。
でも、顧客が欲しいのはドリルそのものではありません。
その先にある「穴」です。
だから私は聞きました。
「誰の、何の悩みを、どう解消するんですか?」
その人は本当に困っているのか。
解決されたら、どんな状態になるのか。
本当にお金を払うのか。
その価格で利益は残るのか。
その利益から、次の投資ができるのか。
そして、
「この事業を続けて、5年後にどうなっていたいですか?」
顔つきが変わった
そんな話をしているうちに、相手の顔つきが変わりました。
少し身を乗り出すようになったのです。
私はこの瞬間を、経営相談で何度も見ています。
私が何か「正解」を言ったときではありません。
本人の中で、
「自分が考えていたことは、こういうことだったのかもしれない」
と、バラバラだったものがつながり始めたときです。
もちろん、一度ですべてが決まったわけではありません。
そこから何度も話しました。
私も仮説を出します。
「本当にこの人が顧客でしょうか?」
「それは目的ですか、手段ですか?」
「先にここを確認した方がよくないですか?」
提案もかなりします。
でも、私が代わりに事業計画を作ることはしません。
「これが答えです」と断定することもしません。
最後に決めるのは本人です。
そして、
「では、次回までに何をしますか?」
と確認する。
本人が動く。
結果を持ってくる。
また一緒に考える。
その繰り返しです。
「断片的に考えていたことが、つながりました」
何度か話した後、こんなことを言われました。
「私が断片的に考えていたことを、つなげてもらえました」
印象に残っている言葉です。
でも、一つひとつの材料は、最初から本人の中にありました。
私はそれを一緒に外へ出して、
これは誰の話なのか。
何のためにやるのか。
目的なのか、手段なのか。
事実なのか、解釈なのか。
今、本当に決めるべきことは何なのか。
その関係を一緒に見ていっただけです。
その後も、すべてが順調だったわけではありません。
新しい事業を外部に評価してもらう機会にも挑戦しましたが、最初は途中で終わりました。
それでも、考える。動く。外部の意見を聞く。修正する。そして、もう一度挑戦する。
次の挑戦では、最終段階まで進みました。
私が重要だと思っているのは、その結果だけではありません。
本人自身が、考えて、動いて、結果を見て、また判断するようになったことです。
相談の価値は、その後に何が動いたか
似たことは、ほかの相談でもあります。
ある経営者の話を整理して返したとき、
「何で私が考えていることが、そんなに分かるんですか?」
と言われたことがあります。
でも、私が本当に見ているのは、その後です。
ある経営者は、相談した翌朝の朝会で社員に話を共有し、次の相談には社員も一緒に来ました。
別の経営者は、必要な数字を税理士に確認して、次回その数字を持ってきました。
私は、こういう変化を見ると、
「会社が動き始めたな」
と思います。
相談の価値は、「いい話を聞いた」ではありません。
誰が、何を、いつまでにやるのか。
そこまで具体的になり、実際に動く。
動けば、新しい事実が分かる。
その事実を持って、また考える。
判断する。
また動く。
この繰り返しで、事業は現実になっていきます。
だから、整理してから相談しなくていい
経営者の方から、
「もう少し整理してから相談します」
と言われることがあります。
でも私は、むしろ逆だと思っています。
整理できていないなら、整理できていないまま来てもらって構いません。
自分一人できれいに整理すると、最初に「これが問題だ」と思った枠の中だけで整理してしまうことがあるからです。
売上が問題だと思っていた。
社員が問題だと思っていた。
新規事業が問題だと思っていた。
でも、話してみると本当に考えるべきことは別のところにあった。
そんな場面を何度も見てきました。
経営者は、誰よりも自分の会社について考えています。
だからこそ、自分の考えの内側に入り込んでしまうことがあります。
考えていないからではありません。当事者だからです。
もし今、
会社を引き継いだけれど、まだ「自分の経営」になっている感覚がない。
既存事業は回っている。でも、自分の代で新しい柱をつくりたい。
社員、既存顧客、投資、先代との関係、新規事業。
一つひとつは考えているのに、結局何から決めればいいのか分からない。
そんな状態なら、無理に整理する必要はありません。
きれいな事業計画も必要ありません。
頭の中にあるものを、そのまま持ってきてください。
60分ですべての答えが出るとは限りません。
それでも、
何を目指しているのか。
今、何が起きているのか。
本当に決めるべきことは何なのか。
次に誰が、何を、いつまでにやるのか。
そこまで見えれば、会社は動き始めます。
「自分でも、何を相談したらいいのか整理できていない」
それでも大丈夫です。
むしろ、そこからで構いません。
今、自分の代で変えたいと思っていることを一つだけ持ってきてください。
そこから60分、一緒に整理します。
「経営の整理60分」については、プロフィールのリンクからご覧いただけます。
今、あなたの頭の中で、バラバラになっているものは何でしょうか。
こんな状態なら、一度整理してみませんか
「やりたいことがいくつもあって、何から手をつけるべきか決められない」
「新しいことに挑戦したいが、いくらまで投資してよいのか分からない」
「事業計画はある。でも、日々の経営判断には使えていない」
そんな状態であれば、必要なのは新しい「答え」を増やすことではなく、今ある情報を整理して、判断できる状態をつくることかもしれません。
初回の「経営の整理60分」では、
・本当に考えるべきこと
・判断に足りない情報
・残っている選択肢
・想定しておくべきリスク
・次に何を確かめるか
を一緒に整理します。
初回60分は無料です。
「答えを決めてほしい」のではなく、「自分で判断できる状態にしたい」方は、下記のリンクからご確認いただけます。
熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者の意思決定整理と実行接続を支援しています。
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