「いい商品なのに売れない」とき、何を疑うか
「商品には自信があるんです。でも、思ったように売れません」
新規事業や第二創業の相談を受けていると、こうした話を聞くことがあります。
商品やサービスには特徴がある。
利用した人からの評価も悪くない。
想定している顧客に話を聞けば、確かに困りごともある。
それなのに、売上につながらない。
こういうとき、
「もっと商品の良さを伝えた方がいいのではないか」
「営業先を増やした方がいいのではないか」
「認知度が足りないのではないか」
と考えたくなります。
私も、相談を受けた瞬間に原因が分かるわけではありません。
だから、まず聞きます。
「誰の、何の悩みを、どう解消しようとしているんですか?」
「困っている人」はいる。それでも売れない
ある経営者と話していたときのことです。
その会社でも、想定している顧客には話を聞いていました。
実際に困りごともある。
商品を使えば、その負担を減らせる可能性もある。
つまり、
「顧客の課題を考えていない」
わけではありませんでした。
私も最初は、その困りごとの奥に、さらに大きな価値があるのではないかと考えました。
ところが、実際の反応を確認していくと、どうもしっくりこない。
困っている。
商品にも興味を持ってくれる。
「あったらいい」とも言われる。
でも、購入にはつながらない。
そこで、問いを変えました。
「困っていることと、お金を払ってでも解消したいことは、同じでしょうか?」
「欲しい」と「買う」の間には距離がある
新規事業の相談では、
「顧客ニーズは確認しました」
という話をよく聞きます。
でも、詳しく聞いてみると、
「いいですねと言われた」
「欲しいと言ってくれた」
「困っていることを確認した」
ということだったりします。
もちろん、それも重要な情報です。
ただ、事業として考えるなら、その先があります。
困っている。
興味がある。
欲しいと思う。
実際にお金を払う。
この四つは、似ていますが同じではありません。
そこで、その経営者とは「どう売るか」をいったん横に置きました。
どんな人が強く反応しているのか。
何に対して反応しているのか。
必要そうに見えるのに買わない人は、なぜ買わないのか。
実際に買った人は、何を変えたくてお金を払ったのか。
一つずつ確認していきました。
私の仮説も外れる
ここで大事なのは、私が最初から答えを知っていたわけではないことです。
私も仮説を出します。
そして、外れます。
「ここに価値があるのではないか」
「こういう人なら買うのではないか」
そう考えて確かめても、実際の反応が違うことはあります。
それなら、また考えればいい。
仮説を立てる。
確かめる。
違ったら戻る。
そして、目の前で起きた事実から次の問いを作る。
それを経営者と繰り返していきました。
すると、少しずつ違う景色が見えてきました。
こちらが「商品の価値はここだ」と考えていたことと、実際に顧客が価値を感じていることにズレがあったのです。
企業が売っていると思っている価値と、顧客が買っている価値は、必ずしも同じではない。
ここが一つの転換点になりました。
「どう売るか」から「なぜ買うか」へ
私は、
「では、この顧客に売りましょう」
と答えを決めたわけではありません。
「反応の違いはどこから生まれているんでしょう?」
「実際に購入した人は、何に価値を感じたんでしょう?」
「同じ理由で買う人は、ほかにもいるでしょうか?」
「それを確かめるには、何をすればいいでしょう?」
と問いかけました。
そして経営者自身が、顧客の捉え方や伝え方を見直し、実際の市場で確かめていきました。
ここで変わったのは、単なる販売方法ではありません。
問いそのものです。
「この商品をどう売るか」から、
「顧客はなぜお金を払うのか」へ。
この違いは大きいと思っています。
売れた後には、次の問いがある
顧客が見えてきても、経営はそこで終わりません。
売上が増えたら利益は残るのか。
原価は適切なのか。
事業を大きくするために何が必要なのか。
どこまで投資するのか。
必要な資金をどう準備するのか。
今度は数字を見ながら判断する必要があります。
顧客を見る。
数字を見る。
リスクを見る。
そして次の意思決定をする。
事業が進めば、考えるべき問いも変わっていきます。
いい商品と、いい事業は同じではない
このような支援をしていると、改めて感じます。
いい商品を作ることと、いい事業を作ることは同じではありません。
商品には機能があります。
品質があります。
作り手の思いがあります。
でも、事業には必ず顧客がいます。
誰が。
どんな状況で。
何を変えたいと思っていて。
その変化に、なぜお金を払うのか。
そこまでつながって、初めて事業になります。
そして、その答えを最初から完璧に当てる必要もありません。
仮説は外れます。
私の仮説も外れます。
問題なのは、外れることではありません。
目の前の事実が変わっているのに、最初の仮説を守り続けてしまうことです。
売れなかった。
では、何が違ったのか。
予想と違う反応があった。
では、なぜなのか。
反応が変わった。
では、次に何を確認するのか。
目の前で起きた事実から、次に考えるべき問いを作る。
それが、経営を前に進める一つの方法だと思っています。
あなたの顧客は、何にお金を払っていますか?
もし今、
「いい商品なのに売れない」
「評価はされるのに契約にならない」
「いろいろ試しているのに手応えがない」
と感じているなら、一度だけ「売り方」から離れてみてください。
あなたが価値だと思っているものと、顧客がお金を払っているものは、本当に同じでしょうか。
自分たちが長く取り組んできた事業ほど、このズレを自分だけで見つけるのは難しくなります。
経営の整理60分
「何が問題なのか、自分でもうまく説明できない」
「次に何を試すべきか分からない」
「考えることが多すぎて整理できない」
そんな状態でも構いません。
相談内容をきれいにまとめておく必要もありません。
60分で、目指していること、今起きていること、本当に考えるべきこと、次に確認・決定することを一緒に整理します。
今、変えたいことを一つだけ持ってきてください。
そこから一緒に考えます。
「経営の整理60分」の詳細は、下記のリンクからご覧いただけます。
熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者の意思決定整理と実行接続を支援しています。
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※守秘義務およびプライバシー保護のため、本稿は複数の実際の支援経験をもとに、業種・地域・企業規模・経営者の属性・時系列などを一部変更・再構成しています。特定の企業・人物について記述したものではありません。なお、相談現場での気づきや意思決定のプロセスについては、実際の支援経験をもとにしています。
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