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それが解決したら、何をしたいんですか?

「地域の事業者向けに、新しいサービスをつくりたいんです」

以前、そんな相談を受けたことがあります。

その方は、ある業界で長く働いてきた方でした。

仕事をする中で、地域の小さな事業者が抱えている不便を何度も目にしてきた。

「これを解決できる仕組みがあれば、助かる人は多いと思うんです」

本人なりにサービスのイメージも持っていました。

話としては筋が通っています。

私も最初は、

「なるほど。このサービスが本当に必要とされるか確認していけばいいかな」

くらいに考えていました。

でも、話を聞いているうちに一つ気になりました。

この人は、なぜこれをやりたいんだろう。

そこで聞きました。

「それが解決したら、その先で何をしたいんですか?」

少し間がありました。

そこから、話が変わりました。

本当に話したかったことは別にあった

それまで話していたサービスの話ではなく、本人自身の話が次々と出てきました。

これまでどんな仕事をしてきたのか。

どんな経験を積んできたのか。

何を得意としてきたのか。

周囲から何を評価されてきたのか。

そして、

「実は、いつか自分の経験を使って、自分で事業をつくりたいと思っていたんです」

という話が出てきました。

最初に相談されたサービスの話をしていたときとは、明らかに話す量が違いました。

私は聞きながら、

「最初に相談されたことは、この人が本当にやりたいことそのものではないのかもしれない」

と思いました。

そこで、サービスをどう実現するかを考える前に、少し手前から聞き直しました。

「5年後、どうなっていたいですか?」

「今、それができていないのはなぜですか?」

「本当に、今話している問題だけが障害でしょうか?」

「同じことで困っている人は、実際にどれくらいいるんでしょう?」

すると本人も、

「確かに、自分が本当にやりたいことって何だろう」

と考え始めました。

来るたびに、話は変わった

その後、一定期間、継続して話をするようになりました。

相談内容は何度も変わりました。

前回はAと言っていたのに、次はBになっている。

さらにその次は、また少し違う。

一見すると、迷走しているようにも見えます。

でも私は、必ずしもそうは考えませんでした。

新しい事業を考えているのであれば、最初から答えが決まっている方がおかしい。

誰が困っているのか。

何に困っているのか。

それは本当にお金を払ってでも解決したい問題なのか。

自分たちは何を提供できるのか。

事業の構造を整理する。

実際に対象となりそうな人へ話を聞く。

戻ってきて、また考える。

すると、

「思っていたほど困っていなかった」

ということもあれば、

「むしろ、こちらの方に強いニーズがあった」

ということもあります。

当然、事業の形も変わります。

私は、仮説検証の結果として考えが変わるのであれば、それは前進だと思っています。

最初に思いついたアイデアを守ることが目的になってしまう方が危ない。

「やりたいことが分かった」で終わらせない

少しずつ、本当にやりたい事業の輪郭が見えてきました。

でも、もう一つ考えなければいけないことがありました。

お金です。

新しい事業が見えてきたからといって、すぐにそこへ全ての時間とお金を投入すればいいとは限りません。

新規事業は、いつ売上になるか分かりません。

作ったものが売れないこともある。

顧客に聞いた結果、前提から変わることもあります。

その間にも固定費は発生します。

生活もあります。

だから、

「本当にやりたいこと」

と同時に、

「そこへたどり着くまで、どうやって食べていくか」

を考える必要があります。

この方には、それまでのキャリアで培ってきた専門性がありました。

すでに他者から評価されている経験もある。

この方には、それまでの仕事で培ってきた経験や強みがありました。

そこで、本当にやりたい事業だけにいきなり集中するのではなく、今ある強みを生かしながら、まず収益の土台をつくることにしました。

一定の収益を確保しながら、その先に実現したい事業について考え、実際に人に話を聞き、仮説を修正していく。

私は、この順番がとても大切だと思っています。

夢とキャッシュフローを分けない

新規事業の話になると、

「本当にやりたいことは何ですか?」

という問いがよく出てきます。

もちろん、それは大切です。

でも経営である以上、それだけでは足りません。

やりたいことがある。

では、それが売上になるまでどれくらいかかるのか。

そこまでの固定費はどうするのか。

検証するためのお金はどこから出すのか。

仮説が外れたとき、もう一度試せる余力は残っているのか。

私は、そこまで含めて考えたい。

今ある強みを使って収益をつくる。

固定費を賄う。

余力をつくる。

その余力を、本当に育てたい事業へ回す。

一見すると、本命ではない仕事をしているように見えるかもしれません。

でも、ゴールから逆算すれば、それが最も現実的な一歩になることがあります。

最初のアイデアも、完全には捨てなかった

では、最初に相談されたサービスはどうなったのか。

検証してみると、それ単独で大きな事業にするには難しい部分が見えてきました。

だから、無理に最初のアイデアに固執することはしませんでした。

ただ、完全に捨てたわけでもありません。

本人が最終的に実現したい構想の中では、一つの要素として意味がある。

そこで、より大きな事業構想の一部として残すことにしました。

一方、新たに見えてきた事業についても、最初に考えた形をそのまま進めたわけではありません。

実際に人に話を聞き、事業の構造を整理しながら、

「誰の、どんな問題を解決するのか」

「自分の強みを、どこで生かすのか」

を何度も考え直していきました。

その結果、当初とは違う選択肢も見えてきました。

大切なのは、最初に考えたアイデアを正解にすることではありません。

仮説を立て、現実を確認し、違っていれば修正する。

その繰り返しによって、最初に見えていた「やるべきこと」そのものが変わっていきました。

ただ、最初の相談時とは大きく変わったことがあります。

本人が、

「このサービスをどう実現するか」

だけを考えるのではなく、

「自分はどこへ行きたいのか。そのために今、何をするのか」

から考えるようになったことです。

ゴールから逆算すると、最初の一歩が変わる

私は、ゴールから逆算するというのは、

夢に向かって一直線に進むことではないと思っています。

5年後、どうなっていたいのか。

そこへ行くために何が必要なのか。

今、自分には何があるのか。

何が足りないのか。

何を顧客に確認する必要があるのか。

そして、

そこへたどり着くまで、どうやって食べていくのか。

そこまで含めて逆算する。

そうすると、最初にやることが本命事業ではない場合もあります。

今ある専門性でキャッシュをつくることかもしれない。

顧客候補に話を聞くことかもしれない。

最初に思いついたサービスを、一度脇に置くことかもしれない。

でも、ゴールが決まっていれば、その一歩には意味があります。

今回も、最初に相談されたことをそのまま解決しようとしていたら、まったく違う支援になっていたと思います。

だから私は、ときどき目の前の相談から一つ先を聞きます。

「それが解決したら、何をしたいんですか?」

あなたが今、一生懸命取り組んでいることは、本当に目的でしょうか。

それとも、その先にある何かを実現するための手段でしょうか。

その先まで考えてみると、

今やるべきことは、まったく違うものかもしれません。


経営の整理60分

経営や新規事業について考えていると、

「やりたいことはある。でも、何から始めればいいか分からない」

「いろいろ動いているけれど、これでいいのか整理できていない」

「目の前の課題と、将来やりたいことがつながっていない」

そんな状態になることがあります。

相談内容を、きれいに整理してくる必要はありません。

今、変えたいと思っていることを一つだけ持ってきてください。

60分で、

何を目指しているのか。
今どこにいるのか。
本当に考えるべきことは何なのか。
次に何をするのか。

を一緒に整理します。

答えを決めてもらうためではなく、自分で判断して次に進める状態をつくるための60分です。

「経営の整理60分」の詳細は、下記のリンクからご覧いただけます。

熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者の意思決定整理と実行接続を支援しています。

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※守秘義務およびプライバシー保護のため、本稿は複数の実際の支援経験をもとに、業種・地域・企業規模・経営者の属性・時系列などを一部変更・再構成しています。特定の企業・人物について記述したものではありません。なお、相談現場での気づきや意思決定のプロセスについては、実際の支援経験をもとにしています。

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