37.夫の病気なのに、なぜ病院を探しているのは私なのだろう。
統合失調症の夫。
入院を経て、今は月に1回通院しています。
夫が最初にかかった病院では、
通院して改善するどころか半年で悪化した。
行くたびに薬が変わった。
どれも効果はなく、むしろどんどん悪化していった。
たくさんの患者をこなさないといけない。
そういう場所だった。
薬を出して、はい終わり。
その病院から入院を勧められ、
入院先を探すのも大変だった。
何件断られたかわからない。
やっと見つけた入院先の先生は、薬をシンプルにしてくれた。
「薬だけに頼っていては治らない」
とはっきり言ってくれた。
私が泣きながら話しても、ちゃんと聞いてくれた。
こんな先生は、もう出会えないかもしれない。
そう思っていた。
だから、土曜日の外来を辞めると報告を受けた時は、かなり動揺した。
正直に言うと、 この病院への通院は、私にとってもきつかった。
片道1時間の距離。 毎回の送迎。 ワーママにとって貴重な土曜日の半日。
子どもたちを連れて行くことも難しく、 保育園に事情を話して特別に預かってもらっていた。
夫は診察室では「寝ないようにします」と先生と約束する。
帰宅後は、すぐ寝室へ。
先生は「休んでも治らない」「脳を動かすことが大切」と言う。
でも、家に帰ると、現実は変わらない。
先生のアドバイスと、我が家の毎日のあいだに、大きなすきまがあった。 そのすきまを、私一人では埋められなかった。
平日に休みをとって通院することは、夫も私も現実的ではなかった。
私は会社員で、昨年は子どもの病気や行事対応で有給を30日も使っていた。 夫の有給は、もうない。
土曜日に診てくれる病院を、また探すしかなかった。
また、電話をかけ始めた。
会社の昼休み。 通勤時間。
子どもが寝たあとの、ほんの少しの時間はホームページは口コミで情報収集。
「新規受付していますか」
「家族面談は可能ですか」
「統合失調症の通院は」
電話しながら、頭の中でずっと同じ不安がぐるぐるしていた。
また、大量の薬を出されるのではないか。
また、悪化していくのではないか。
今までの先生のように、きちんと向き合ってくれる人がいるのか。
うつ病ではなく、統合失調症を専門とした先生を見つけることができるのか。
何件目だろう。 夫が病気になってから、何度目の電話だろう。
自分のことなのに、次の病院探しを一切しない夫に腹が立った。
探す時間が欲しくて、夜の寝かしつけの前に子どもたちを見ていてほしいと頼んだ。 夫は動かなかった。
睡眠を削るしかなかった。
私は4時起き。やりたいことが山ほどある。
時間がいくらあっても足りない。
なのに夫は、寝室でずっと寝ている。
「その時間を、少しだけ譲ってくれよ。」
言ってもダメだとわかっていても、止まらなかった。
「もう私は探さない。」
そう決めて、1週間放置した。
夫は「このまま病院には通うのをやめる」と言い出した。
そうなると困る。 夫には回復してもらわないといけない。
悔しいけど、探すしかなかった。
予約も調整も、また私がした。
なんとか、新規で診察してくれる病院が見つかった。
統合失調症になったのは夫だ。
でも、病気と向き合っているのは夫だけじゃない。
病院を探す人がいる。
予約を取る人がいる。
薬を管理する人がいる。
生活を回す人がいる。
患者家族もまた、
病気と一緒に生きている。
何件も電話をかけて、
何度も断られて、
ようやく見つけた病院だった。
次の病院が夫に合う場所でありますように。
そう願いながらも、
夫の病気なのに、
なぜ病院を探しているのは私なのだろう。
そんな答えの出ない問いを抱えたまま、
私は新しい病院の予約日を待った。
