反日デモ不発と習近平の焦燥〜正義のミカタ
「反日デモを起こせない」焦る習近平!?TVでは語りきれない「日中関係の真実」 【正義のミカタチャンネル】2025年11月29日収録
東アジア専門家・近藤大介
中国専門家・福島香織
海洋問題研究家・参院議員 (国民民主党)・山田吉彦
本動画は、日中関係の現状と中国の国内事情について詳細に分析した討論会である。特に、中国国内で反日デモが発生しない背景や、習近平政権の動向、台湾有事の現実性、そして日本が取るべき戦略について、専門的な視点から評論的に掘り下げている。
日中関係の真実:反日デモ不発と習近平の焦燥
第1章:反日デモ不発に見る習近平体制の脆弱性
2012年の尖閣国有化の際には中国国内で大規模な反日デモが発生したのに対し、現在、日中関係の冷え込みにもかかわらず同様のデモが発生しない背景について、出演者たちは分析する。
福島氏と近藤氏は、デモが起こらない理由として、現在の中国経済の深刻な悪化を挙げている。デモを容認すれば、その不満が「反日デモ」から「反政府・反習近平デモ」へと転化するリスクが高いという判断が、習近平指導部にあると指摘する。
かつては官製デモとして誘導された反日デモも、2012年の経験からコントロール不能となり、中国側に甚大な損害をもたらした経緯がある。この経験と現在の経済不安が、政権が国内の不満のはけ口として「反日」を利用することに極度に慎重になっている最大の理由であると述べる。
また、国内で反習近平的な言動がデモの盛り上がりと共に散見され、政府が慌てて抑え込む事態が頻繁に起きている状況が語られる。福島氏が具体例として挙げたように、地方での「いじめ自殺に抗議する保護者のデモ」など、最初はローカルな社会問題に対する抗議であっても、群衆が盛り上がるにつれて「習近平、やめろ」や「共産党、要らない」といったスローガンが突発的に飛び出す傾向が強まっている。このパターンは、かつてのゼロコロナ政策に対する「白紙革命」でも顕著であった。当初は極端な封鎖措置への不満であったが、最終的には上海などで直接的な政権批判に発展したのである。このような地域住民の怒りの予兆が即座に政権批判に転化するリスクを抱えているため、体制は今、反日デモのような官製デモを誘導するどころではない状況にある。
第2章:習近平四選への道と国内の引き締め
習近平総書記が四選をほぼ確実なものとし、後継者を育てない方針で固まっている現状が語られる。この四選路線に伴い、中国国内の反体制派、特に引退した長老幹部たちを抑えつけるため、政権の引き締めがより一層強まっているという。この引き締めは、外交的には「戦狼外交」という強硬な姿勢へと走らざるを得ない状況を生み出していると分析する。
山田氏は、海外に出た中国の人々の間では、習近平政権の失策に対する批判がネット社会の中で蔓延しており、その情報が国内にも伝播していることから、現体制が盤石ではないと評価する。特に、習近平政権の10年間が改革開放の果実を失わせたという恨みを抱く人々は多く、不動産不況や若者の高い失業率といった経済問題が、この内向きな不満の土壌を深くしている。
第3章:対日経済圧力の評価と観光客の質の変化
中国側が水産物輸入停止などの経済圧力をかけている件について、出演者たちは日本にとって必ずしもネガティブではない側面があると指摘する。
福島氏は、団体旅行が減ったことで、奈良などで鹿は喜んでいるかもしれないが、旅行客の質が向上したとの見解を示す。日本の旅館や飲食店にお金を落としてくれるのは、個人のリピーターで本当に日本が好きな層であり、この層は逆に今の状況下でも来日を続けているという。近藤氏は、行き過ぎたオーバーツーリズムの調整として、この圧力は「絶好のチャンス」と捉えることもできると述べている。
また、中国資本の旅行会社が提供する「安かろう悪かろう」のツアーは、日本国内で消費を生まず、全て中国内で事前決済されるため、日本経済への恩恵が少なかったことも指摘される。質の低い体験をした旅行者はリピーターにならず、結果的に日本が好きで自ら行動する「お行儀のいい中国人」だけが残る状況は、日本にとってはポジティブな影響をもたらすと評価している。
第4章:台湾有事の経済的・軍事的現実性
台湾有事の現実性については、2027年頃にリスクが高まる要因が集中していると近藤氏は指摘する。具体的には、米国の内政状況、人民解放軍創立100周年、そして習近平四選という政治イベントである。
しかし、出演者たちは、台湾本土への全面侵攻の現実性は低いと断じ、その理由として中台間の経済の「総合依存」の深さを強調する。
まず、台湾経済は中国なしには成立し得ないという事実がある。台湾にとって、対中輸出(香港経由含む)は依然として輸出全体の約3割(近藤氏)を占める。また、中国にとって台湾は半導体をはじめとするハイテク部品の主要な供給源であり、台湾の技術を失うことは中国経済全体に壊滅的な打撃を与える。山田氏は、「この台湾を潰してしまったのでは完全に成り立たない」と述べ、中台の経済的結びつきは一方が一方を武力で征服することを許さない構造にあると分析する。武力衝突は、世界経済への影響はもちろん、中国自身の経済的自殺行為に等しいという認識だ。
さらに、福島氏は、習近平が進めた軍の粛清により、自ら抜擢した幹部まで失脚させている中国軍内部の深刻な腐敗を指摘する。ロケット軍の幹部9名が党籍・軍籍を剥奪された事例 が示すように、軍中枢における粛清は続いており、その背景には兵器の調達における腐敗や、北朝鮮経由でロシアに提供したミサイルの不具合といった、軍事能力そのものへの疑義があるとされる。歴戦の軍幹部が粛清され、軍を実際に動かそうにも動かせない状況にある。したがって、中国が軍事行動を起こすとしても、金門島などの小規模な島の一時的占領に留まる可能性が高く、その際に国際社会と対峙し続けるだけの指導者の人望や防衛力が続くかが疑問であると述べている。
第5章:日本が取るべき「守りの力」と経済の強化
日本が今後、中国に対して取るべき強力なカードについて、出演者たちは一致した見解を示す。
近藤氏は、中国の圧力に耐えながら自立を守る台湾の戦略をよく学ぶべきだと提言する。そして、「尖閣諸島を絶対的に守る」という強い意志を持つことが、日本にとって最も重要であると主張する。
山田氏は、特に安全保障の世界で「日本を守る」スタンスを明確に示していくことが、中国に対するリスクとして有効に作用すると述べる。日本から攻めるわけではなく、守る力をしっかりと示していくことが、両国関係の中で最も有効な手段であるという。
さらに、山田氏は、安全保障の要は「経済の活性化」にあると強調する。積極財政で国の経済を取り戻し、国民一人ひとりが自信を持てる国に戻すことが、外交関係や安全保障の面でも最も重要な土台となる。経済安全保障からしっかりと組み立て直すことが喫緊の課題であるという認識だ。
全体を通して、本動画は、日本が感情的な「反中」に流されるのではなく、国内の経済と安全保障の足腰を強くすることこそが、現在の冷え込んだ日中関係において最も賢明な対抗策であるという、冷静かつ具体的な提言で締めくくられている。
