見出し画像

もう、春だもの。

「しかにせんべいあげたい」
水族館や鉄道博物館に誘っても、いまいち乗り気にならない息子さんから、突然のオーダー。
彼が定期的に鹿と戯れたがるので、私も今までにない頻度で奈良公園に出かけている。

私が住む大和郡山市は、鹿がいる奈良公園のある奈良市まですぐ行ける。その日の朝に提案されても問題なく行けるぐらいの距離だ。
せっかくなので、昨日は極力息子さんのペースに合わせてみる、というのをやってみた。
最寄り駅に行くまでの間、歩道橋を渡ったり、民家と民家の間の小道を通ってみたり。
時間を気にしない、散歩の延長線のようなお出かけ。こういうのもたまにはいい。もう、春だもの。

奈良公園について鹿せんべいを売っている露店を探す。が、いつもそこにいる、という場所に鹿せんべい屋は出ていなかった。
奈良公園、とひとことで言うが、実はめちゃくちゃ広い。約511ヘクタール、よくある東京ドーム換算でいくと、10個分を超える。
奈良公園をずんずん奥に進む。途中、鹿さんに絡まれる。奈良公園の鹿は賢い。手を広げて「何も持ってない」と伝えると、すっと離れていく。

途中息子さんは、それはもう、素敵な川を見つけた。いや、私から見ればただの用水路なのだが、彼からするとめちゃくちゃ面白いものだったのだろう。
水の流れをじっとみつめ、何を思ったか石を集め出す。すると、金属の側溝蓋の上に乗せ始めた。
「何してるん?」
「どのいしがおちるか、ためしてる」
なるほど。息子の手元をみると、あきらかに側溝蓋の穴のサイズより大きい石がごろごろ並んでいる。
全部並べ切ったところで、息子さんは砂粒をつまんで、側溝蓋の穴に落とした。そして、すくっと立ち上がり歩き出した。
「しかせんべいどこ?」
うん、探しに行こう。

この後鹿せんべいを無事手に入れ、食欲旺盛な鹿たちに3分もしない間にすべて食べられた。それでも息子さんは満足したようだ。
こんな春を、君とあと何回ぐらい過ごせるのだろう。いつまで母と奈良公園に行きたがってくれるだろう。
少ししんみりしてしまった母でした。

ちなみに、全身に花粉を浴びた私の鼻は、壊れた蛇口のようになった。
それもまた、春よのう。


こちらもおすすめです。


いいなと思ったら応援しよう!