エジプト旅行記4日目 細美武士に憧れた愚者が、マグマに浸かるまでの記録
この旅行記は続きものです。この記事から読んでも全然面白いけど、気になる方は3日目までの旅行記もどうぞ!
早朝〜午前(砂漠、温泉)
目覚めたのは砂漠のど真ん中だった。そうか、俺はエジプトに来ていて砂漠でキャンプをしていたんだった。日は差してるけど、朝はまだ寒くて、パーティのみなさまはすっかり目を覚ましている。あぁ、みんな日の出見たんだな良いな、しまった、見逃した。
テントから這い出るとKing of Desertこと、ガイドのアキータがすぐにコーヒーを出してくれた。ありがとう、君は紛うことなく砂漠の王様だよ。砂漠の朝のコーヒーは至福で、これを飲むだけで来た甲斐があったなと思う。空が澄んだ冬の夜に、ココアを飲む時と同じような気分が砂漠で味わえると思ってないもの。
季節は春、3月で、俺が今いるのはエジプト。飲んでいるのはホットコーヒー、そしてここは砂漠。全部が非日常のはずなんだけど、アホみたいにしっくりくるのはきっと良い旅をしている証拠。うっし今日のツアーもよろしくお願いします!

今日も砂漠でいくつかスポットを回ったあと、温泉(砂漠の真ん中にあるのです!)、そしてカイロへ帰るという工程。
そう!2日目にアレックス(旅行記2日目参照)と市場を駆けずり回って、手に入れた水着が活躍する時が来たのだ!実は僕は砂漠の温泉、もっと言えば、この場所にめちゃくちゃ強い憧れがあるのだ。
僕は細美武士(ELLEGARDEというバンドなどのボーカル)というアーティストを愛している。彼がその昔、まさしくエジプト旅行記を書いており、砂漠の温泉が登場していたのだ。なにを隠そう僕のエジプト旅行も、この旅行記自体も多分に影響を受けている結果なのだ。
当時、温泉が妙に琴線に触れたのだった。砂漠の真ん中に温泉があるなんて世界は広いな、刺青があるから日本だと温泉に入れない細美武士。気兼ねなく温泉に入れて良かったね、なんて思った記憶。記事を漁ると、それが15年前だったと発覚し驚愕する(ブログリンク)
andymori小山田壮平もビックリだよ、「10年経ったら旅に出よう 南の国が良いな みんなきっと驚くって絶対ね」じゃないんだよ。5年オーバーしてるじゃん。南の国っぽくもないし。あと俺の場合、多分みんなさして驚いていない気もする。あ、違う、ちがう、話が逸れた。
いずれにしても、あの時憧れた砂漠の温泉に自分が来たのだ。ということで!午前中、温泉にやってきました!!ドン!!

砂漠の真ん中から湯が噴き出しておる!こじんまりはしているけど、めっちゃ良い趣!昔、感動した自分に教えてあげたい、いつか自分も一人旅してみてみたいな、なんて思っていた自分。その未来が今だぞ!!そんな気持ちで僕は温泉に臨んだ。着替える前に、ほんの少し手を漬けてみる。その瞬間ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっつううううううううううううううううううううううううううううう」
いやいやいやいや、無理じゃんこんなの。完全に49度ぐらいある。ギリ50度はない気がする。でも確実に人が入るタイプの温泉じゃない。なにこれ?えっ????マグマ??????????
えっとね。お湯かマグマの2択で考えるとマグマ。蒸気、お湯、水、氷、マグマの5択で考えても完全にマグマだよ!!!!!!!
こーわ。もう入るとかじゃないじゃんこれ。一瞬漬けるのが限界じゃん。えーーーーーーー!!せっかく水着買ったのに??
アレックスもカイロでビックリしてると思うよ?お前は温泉に入るつもりだったんだろ?つって。マグマに入るためだったのか、つって。
いやさ、諦めきれない訳。だから何度も手を付けては引っ込めるをやる訳ですよ。「あっつうう」とか言いながら。そしたらパーティメンバーが不審な目でこっち見てんのよ。いや、分かるよ?彼ら15年分の想いとか知らないからさ。
でもそれ差し引いてもなんか妙に温度感低い。別に適温でも入る気ないですけど、みたいな温度感。なんで??えっ??なんで??なんでそんな体育の授業見学みたいなテンションになってるの?? 仮にもヨーロッパから飛行機乗って、そっから車何時間も走らせて。どうした??スペインガイ??あんなに楽しそうだったじゃん昨日。なんなん?あの時の笑顔はなんじゃったん????
こうして僕はほんのちょっとした敗北感を抱えたまま、砂漠を去っていたのである。
午後(砂漠からカイロへ)
温泉の絶望もほどほどにして車は、カイロへ向けて走り続けていた。中心地に戻るのは、夕方4時ぐらい。電波もそこそこ復活してきたから、車中で明日以降の旅程の一人作戦会議をする。
流石に砂漠ツアーで疲れたし、残りの時間をゆっくりバカンスで過ごすのも悪かないなぁ。リゾートのダハブに行っても良いかも。あーでも突貫になり過ぎて、結局ゆっくりできないかも。とかとか色々と悩み、ルクソールへ行くことに決めた。
ツタンカーメンが眠る「王家の谷」や「カルナック神殿」などが密集する観光スポットである。カイロからは飛行機 or 寝台列車の距離感だ。うん、寝台列車一択!飛行機なんていつでも乗れるけど、エジプトの寝台列車なんてこれを逃すと機会がないじゃん!おもろそう!ってことで今日の夜の便を確保。残り時間をthe HIATUSのファーストアルバムを通しで聴いて過ごすことにした。

ハイエイタスは細美武士がエルレとは別に今もやっているバンドだ。2008年に当時人気絶頂だったELLEGARDENが活動休止になる。そしてその1年後に別バンドとしてリリースしたのがこの1stだった。
エルレがずっと続くことを信じて疑っていなかった、人生の全てとさえ思っていた男が、その混乱の最中で作った作品。
1st故にまだバンドの方向性も固まっていない。それ故のバラエティに富んだ楽曲群(ピアノと歌だけの曲があったり)が、ここからどこへだっていけるという可能性を感じさせる。
絶望も混乱も引きずって、それでもやっていく、という決意を感じさせる、そんなエネルギーに満ちている。いや、正確に言うと違うなぁ。決意なんてまだできていないけど、それでもやるしかないっていう、無軌道なエネルギーだな。
そんな中混乱の中で新しいメンバーとのぶつかり合いと、細美武士のさいっこうのメロディックさが溶け合っていて、この瞬間にしかあり得なかった音が真空パックされている。今振り返るからこそ、そんな風に感じるアルバムだ。
僕はその背景も込みで、自分と重ね合わせて聴いていた。まだまだ続く砂漠の風景を眺めながら「紺碧の夜に」というアルバムの後半の曲を聴く。浮遊感のあるキーボードソロがサビへ向けて、少しずつ温度を上げていく。最後のサビ直前、楽器隊の「ガシャーン」とキメのフレーズ。その瞬間、ふと腑に落ちた。
人生は当たり前に予想不可能である。今この瞬間には、誰にだって未来は全く分からない。それでもやっていくこと、手を伸ばしていくことでしか開かれない可能性がある。たとえ困難があったとしても、あとから振り返った時、自分にとってなにが幸いするかだって分からない。
当時のエルレ活動休止は、彼にとっても、ファンにとっても非常に辛い出来事だった。けれど、その後の10年間でthe HIATUS、MONOEYESという2つの新しいバンド、the Low-Atusというユニットだって彼は始めた。
当たり前にそんなことは誰も予想できなかった。大混乱の中でも、誠実に生きていく中で、何かに繋がる。2025年現在、細美武士はエルレも含めて3つのバンドを掛け持ちする未来を生きている。
僕はどのバンドも大好きだ。エルレの活動休止は身が引き裂かれるような思いだった訳だけど、でも結果として3つのバンドはどれも美しく、細美武士の中で1つの道として統合されているように見える。紆余曲折や困難もあったけど、そんな誰も予想しなかった美しい未来が今なのだ。
翻って自分はどうだろう? 正直何も分からないけど、自分の人生もきっとそう。っていうか違ったとしても、細美武士の道のり全てが、背中を押してくれてる。砂漠の経験とかもきっとそんな風になる。人生まだまだ守りに入っている場合ではないですな。エンジン音がゴリゴリと鳴り響く車中で、見渡す限り砂の世界でそう思ったのだった。
夕方(再びカイロ)
夕方カイロに到着、パーティのご一向に旅の無事を祈りつつ別れる。そのあと僕は銀行の前にいた。張り紙には「ラマダン中(断食期間)のため閉店」の文字。あー困ったな。エジプトポンド切らしちゃったけど、米ドルだけだとなにかと不便だし。
グーグルマップを見る、徒歩15分ぐらいのとこに別の銀行があるらしい。歩き出すと、すぐ近くに日本人と思わしき青年2人が佇んでいるのが目に留まった。あぁきっと俺と同じで当てが外れたんだろうな。目が会ったので、なんとなくお互い会釈、そのまますぐ先の角を曲がったところで、心の声が聞こえた。「彼らも同じように困ってるじゃん。なんで声かけないの?」一瞬迷ったけど、それもそうだなと思って、引き返して声をかけた。
案の定同じシチュエーションだったらしく、3人で銀行へ向かう。彼らは大学生で、2週間滞在予定の最初のほうのタイミングだったらしい。今までいろんな国を旅していたらしく、その中でも一番良かったのはオーストラリアだったとのこと。
「南半球の国は星の見え方が違うんです」って語ってくれたのが印象的。うん、なんかめっちゃ良いね。観光地、観光名所いっぱいあるけど、その中でも星が良かったって、めっちゃ素敵じゃん。
しばらく旅の話とかをして、銀行についたけど、さっきとおんなじで閉店中だった、残念。やっぱラマダン中は基本営業時間変わっちゃうのね。しばらく歩かせた挙句で申し訳ない。個人的には素敵な話が聞けて良かったけど。
ごめんねーなんてお伝えして、お互いの旅を祈り別れる。お互い最高の旅にしような!!
なんだか気の良い青年だったなーなんて思いながら、ルクソールへ出発するバスターミナルへ急ぐ。
夜(寝台列車)
そして辿り着いた寝台列車は想像以上にエッヂが利いていて笑ってしまった。汚いとは聞いてたけど、トイレとかは予想以上だねぇ。はっはっは。一瞬萎えたけど、むしろ面白くなってきた。


疲れててどうせ寝るだけだし、エジプトまで来て、安全・安心・便利・快適とか求めてないのでオッケー!どこかで1日タクシーをチャーターして、絞って回るのが良いのかぁとか、明日のルクソールが楽しみすぎて寝れないとか思いつつ、十分後には落ちるように寝ているのであった。
この旅もう一つのハイライト、カルナック神殿を訪れる、エジプト旅行5日目へ続く!!
