㉔母親の認知症(最も身近な人を壊す「物取られ妄想」)
▶︎最初から読む:姫路への道のり-①母親の認知症
▶︎前回のお話:㉓母親の認知症(母娘の確執)
「物取られ妄想」と言っても、その現れ方は人によって様々のようだ。
基本的な対応。
「相手を否定しない」
「一緒に探す」
「相手に見付けさせるよう誘導する」
「気を逸らす」
「犯人扱いされても感情的にならない」
だけど、それは相手の度合いによる。
母の場合は、怒り狂って怒鳴り込んでくる。
「一緒に探す」とか「気を逸らす」とか、そんなレベルではない。
言っていることは無茶苦茶だった。
鍵がかかっているドアの隙間から入って盗んだ。
それが出来たら人間じゃない……
そんな支離滅裂な言葉を、凄まじい熱量でぶつけられる。
最初は「相手に見つけさせる」のが良いと知らず、私が見つけたために、余計に疑われた。
その知識を得てからは、母が比較的落ち着いているタイミングを見計らい、自ら探すよう誘導してみた。
今度は「なぜある場所を知っているのか」とやはり疑われた。
「泥棒が入ったんじゃないの?」と言ってみたこともある。
返ってきたのは、「そんな怖いことあるか」だった。
ショックだった。
見知らぬ泥棒よりも、娘の私の方が「泥棒」として真実味があるということだ。
自分がなくしたと認めるより、「犯人はあいつだ」と責める方が本人はずっと楽なのだろう。
友人の職場でも、認知症の父親が刃物を持って押し掛けてくる事件があったそうだ。
入口で警備員に止められたそうだが……
また、眼鏡を盗まれたと思い込んだ父親が、息子を包丁で刺したという記事を読んだこともある。
私だって、あのまま家に残っていたらどうなっていたかわからない…
恐るべし「物取られ妄想」。
物盗られ妄想で攻撃の標的になりやすいのは、一番身近にいて、自分を世話してくれている家族や介護者だという。
なんて理不尽なんだろうと思う…
自分だけが標的になるため、周りの人には症状が出ていることに気づかれにくく、本当に盗んだのではないかと疑われることさえある。
相手に意図的な悪意は無いにしても、「物取られ妄想」は、一番身近な人から壊れていく…
