広告経済の前 #4: OSS と Wikipedia
「現代の情報環境 (スマホ・SNS) の問題意識を共有するためには、それ以前の時代の経験についても共有が必要かも」
この仮説に基づいて、このシリーズでは、昔を振り返っています。
これまで、パソコンが個人に「処理」「通信」「記憶」の主導権を与え、一種の「万能感」をもたらしたが、スマホ・SNSの時代にそれが失われてしまった、という話をしました。
今日はオープンソース・ソフトウェアやウィキペディアについてお話ししたいと思います。
OSS (オープンソース・ソフトウェア)
オープンソース (フリーソフトウェア) 自体は、パソコンやインターネットが一般家庭に普及する前からありました。
正確に理解しているわけではないのですが、私の理解をあえてざっくり書くとこんな感じです。
コンピューターの黎明期には、そもそもソフトウェアの著作権という概念が曖昧な時期がしばらくあったのだと思います。
高価なコンピューターを効率的に使うための研究があり、学術的な研究も必要とされていた。
また、コンピューターベンダー各社が独自のOSを開発するのも負担になってきた。
そんな中で、UNIXというオペレーティングシステムが注目された。
今でいう「オープンソース」というわけではないのだけど、その当時としては、かなりオープンな思想で作られたものでした。
そこから、パソコンの普及とともにパソコン用のオープンソースのOSというのも出てきました。
今では、パソコン用のオープンソースのOSと言えばLinuxですが、その当時はまだFreeBSDというのもあったり、他にもあったんじゃないかと思います。
このとき、オープンソースを使うのは、主に学術的研究か個人の趣味が目的でした。
これは分かります。
パソコンが進歩していく中で、新たな機能を研究したい、とか、新たな使い方を個人的に試してみたい、という需要はたくさんあったわけです。
ブラックボックスのOS (MS-DOS や MS-Windows) では何もできない。
設計図が公開されていて、必要ならば自分で改修できるOSが欲しい!
それが原動力だったのだと思います。
そこから、徐々にビジネスにも使われていったのが、驚きだったのです!
ビジネス上、間違いがあっては困るシステムのOSにもオープンソースが使われるようになったのです!
会社のように、誰かが誰かに指示をするわけではない。
働いたからといって、直接的にお金がもらえるわけでもない。
それなのに、世界中にいる顔も知らない技術者たちが、インターネット越しに協力し合って、プロが仕事で使うレベルのとんでもなく高品質なものを作り上げている。
それを理解するのが難しかった。
でも、エンジニアの立場になると理解できます。
多くのエンジニアは、お金のためだけに働いているわけじゃない。
「自分が作ったものが世の中に使われる」ということが、重要なんです。
つまりビジネス上の力学よりも、個々のエンジニアのモチベーションの方が世の中を動かす力がある、ということを目の当たりにしたのです。
Wikipedia
Wikipedia も衝撃でした。
百科事典といえば、専門家や学者が集まって、長い時間をかけて作るもの。そういう常識がありました。
ところが Wikipedia は、誰でも編集に参加できる。
匿名でも構わない。それなのに、デタラメばかりになるどころか、日々、情報が追加・修正され、世界中の出来事が猛烈なスピードで網羅されていく。
人間は、お金のためだけに働くわけじゃないんだな、と。
そこには、もっと純粋な「良いものを作りたい」「知識を共有したい」「社会の役に立ちたい」という気持ちがある。
そして、その無数の善意が、インターネットという場でつながることで、これほど大きな力を生み出す。
集合知
私は当時、若かったこともあり、素直に感動していました。
人類は、新しい協調の形を手に入れたんだ、と。
きっと、世界はもっと良い方向に進んでいく。
古い世界しか知らない「おじさん」たちには、この新しい時代の感覚はわかるまい。
そんな気持ちでした。
でも、会社としても、このトレンドはあまりにもインパクトが大きく、見過ごすわけにはいきません。
「おじさん」に納得してもらうための理論武装が必要でした。
当時「集合知」という言葉が流行ったこともあり、そういうくくりで説得した記憶があります。
とにかく、パソコンが普及して、インターネットで個人がつながるようになって、人類が知的財産を世界中で共有するということが、夢物語じゃなく、現実に起こり始めたんです。
この興奮、伝わるでしょうか・・・
(つづく)
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