この船に乗れ キャプテンハーロックが教えてくれた、信念と自由のかたち
前回の「宝島」のことを書いていて、とても自分が楽しかったので、調子に乗って第2話です。
海賊繋がりで、今回は「宇宙海賊キャプテンハーロック」。
お若いかたには、「⁇」でしょうが、お付き合いいただけたらうれしいです。
前回の記事はこちら
子どもの頃に見たハーロック
ませた子どもだった私は、ハーロックが本当にかっこよくて、
キャラクターというより、多分「男」として見ていたと思う。
信念を持ち、一本筋が通っていて、
友情にも篤く、強面でもどこかに滲む優しさと心の広さ。
清々しいほどの男らしさに、軽い恋心を抱いた。
我ながら好みが渋い。
そして、エンディング曲『われらの旅立ち』
映像は、ハーロックの乗る宇宙船、アルカディア号と、野原を伴走する少女・まゆの姿。
まゆとアルカディア号は、離れたくないような印象だった。
君が気に入ったなら この船に乗れ
いつかなくした夢が ここにだけ生きてる
子供心に、私はまだ乗れない、と思って聴いていた。
とても気に入ってるけど。
心の中でまゆと一緒に、ただ走って追いかけるのが精一杯だった。
大人になってわかった、ハーロックの自由と信念
でも今、歌詞を読むとわかる。
あの歌は、夢を守る者たちへの招待状だったのだと。
ハーロックの言う「この船に乗れ」。
それは、自分の信念に従って生きる覚悟があるかを問う、静かな挑戦状。
大人になってから改めて見ると、
彼の自由は「誰にも縛られない」という軽い自由じゃなくて、
“信念に忠実であるという不自由さ”を引き受ける覚悟だった。
そして彼は逃げていなかった。
世界に背を向けるのではなく、信じた理想を守るために航路を変えた人だった。
異星人マゾーンの侵略に対して、無力同然の地球のために戦う。
地球は、便利さと安定の裏で心を失い、無気力な人々ばかり。
誰も侵略の危機に気づこうとせず、忠告にも耳を貸さなかった。
でもハーロックは、そんな地球を見限らない。
だからこそ孤独で、でも凛としていた。
あの背中には、静かな怒りと、確かな優しさが共存していた。
子どもの頃には眩しすぎて見えなかったハーロックの背中が、
今は少しだけ、わかる気がする。
夢を守る場所―
それが、彼のアルカディア号だったのだ。
ハーロックの“夢”と書いたが、じつは彼自身の口からはほとんど語られていない。
でも、物語全体を通して見ると、
私は、それは 「人間の魂がまだ生きている世界を取り戻すこと」 だったのではないかと思っている。
魂のある人間が生きられる場所をもう一度…。
そして、たとえ理解されなくても
「自由に生きる誇り」を次の世代に託すこと。
その託す未来の象徴が、幼いまゆだったのではないだろうか。
夢と命の船 ― アルカディア号という“心”
松本零士先生の世界では、機械に魂を移すことができる。
アルカディア号の設計者であり、船に“心”を託したのは、ハーロックの親友・トチロー。
あの船は、魂を持つ生きた存在だと思う。
まゆは、アニメ版のオリジナルキャラクターだが、彼女はトチローの娘。
だからハーロックにとっては、アルカディア号は親友と、娘のことも語り合える大切な居場所なのだろう。
そう考えると、あの、エンディング曲の走るまゆに、父・アルカディア号が寄り添っているようにも思える。
テレビ放送で流れるエンディング曲『われらの旅立ち』は、一番だけ。
綺麗に、少し希望を残して終わる。
でも、驚いたのは子どもの私。
親にねだって買ってもらったアニメヒット曲集に、
その曲のフルコーラスが収録されていた。
そして三番の歌詞、最後は―
君が生きるためなら この船に乗れ
力いっぱい生きて 満ち足りて死のうよ
……めちゃくちゃ硬派な歌だった。
やっぱり私なんかが軽々しく”好き”と言ってはいけない人なんだ、ハーロックって。
私は勝手に失恋した。
子どもの私は衝撃を受けたけれど、
大人になった今、あの最後の一節が心に響く。
それは、死生観を語る歌だったのだ。
死について考えることは、
結局「今をどう生きるか」と自分に問いかけることに繋がっている。
2009年、雑誌で「終活」という言葉が登場して以来、
“死を意識して生を見つめる”という考え方はすっかり日常に浸透した。
でも、キャプテンハーロックのエンディングは、
そのずっと前から―
「自分らしく生きるとは、どう死ぬかを考えることだ」と、
静かに歌っていた。
信念という舵を握って
ハーロックは、多くを語らない。
彼の言葉よりも、背中がすべてを物語っている。
「この船に乗れ」
それは、“自分の生き方を決めろ”という問いかけだったのかもしれない。
自由を掲げながらも、彼は決して気ままではなかった。
迷い、怒り、哀しみを抱えながらも、
自分の正義と誇りを手放さなかった。
その姿に、子どもの私はただ憧れ、
大人になった今の私は、そこに“覚悟”を見る。
たとえ世界が理解してくれなくても、
自分の信じる航路を進む。
その孤独を恐れない――それが、ハーロックの生き方であり、
私がいま握っている舵も、きっと同じ方向を指している。
夢を守る船は、誰の心にもある。
その船の名がアルカディア号であっても、
あるいは、誰かの人生という名の海を渡る舟であっても。
信念という舵を握る限り、
私たちは何度でも航海を始められる。

いつか無くした夢が
ここにだけ生きている。
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