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【REVIEW:】#02 「公助」と「自助」の未来:アリアドネEBPMが導く社会変革 後半

行政と民間が社会課題解決をめざす「官民共創」の可能性に迫る【REVIEW:】シリーズ。

第二弾 後半の今回は、近畿大学・保本先生の視点を交え、官民連携事業研究所が展開するサービス「アリアドネ」から生まれた「アリアドネEBPM」 の取り組みについて紹介していきます。


データと政策の融合:「アリアドネEBPM」による行政のスマート化

Society 4.0(4番目の社会:情報社会)では、情報システムやICTの導入が進みましたが、行政手続きの多くは紙ベースで煩雑であり、効率的で質の高い公共サービスの提供が難しいという課題がありました。Society 5.0では、IoTやAIなどの最先端技術を活用し、これらの手続きを自動化・電子化し、データを連携させることで、効率的かつ質の高い公共サービスの提供が期待されています。

アリアドネEBPM」は、単なる寄贈プラットフォームの進化版ではありません。これは、社会変革の主役を「住民」と位置づけ、データに基づいて官民が共創する、全く新しいモデルへの質的な転換を意味します。ここで鍵となるのが「EBPM(Evidence-Based Policy Making)」という考え方です。

EBPMとは、直訳すると「証拠に基づく政策立案」。より分かりやすく言えば、「思いつきや過去の経験だけに頼らず、収集したデータや研究結果といった客観的な証拠(エビデンス)をもとに政策を立案・実行・評価する」考え方です。

アリアドネEBPMは、寄贈活動と同時に、アンケートやインタビューを通じて住民のリアルな声(データ)を収集します。この「寄贈とデータ収集の組み合わせ」 は、Society 5.0における「行政が変わる」という変化を具体的に推進します(図1参照)。

たとえば、ある事例では、寄贈時に実施したアンケートの結果を分析することで、子育て世帯のリアルなニーズや地域特有の健康・教育に関する意見を把握し、需要予測や適切なサービス提供体制の整備が可能になりました。これにより、地域や年齢、性別などの格差をなくし、多様なニーズにきめ細やかに対応した社会の実現に貢献します。

図1:アリアドネEBPMを活用した自治体と企業の連携

住民の声が起点となる事業創造:社会課題解決型ビジネスの進化

Society 5.0の時代において、「ビジネスが変わる」という変化は、単に効率化を図るだけでなく、社会的課題の解決を事業に結びつけることが求められています。アリアドネEBPMは、このビジネス変革のあり方を提示しています。

アリアドネEBPMの特徴は、「住民の声」を企業の事業開発に生かせる点です。
従来のCSR活動とは違い、EBPMに基づくデータ分析から、

  • どんな社会課題があるのか

  • 地域のどんなニーズが高いのか

を把握し、企業は “本当に必要とされる商品やサービス” を開発しやすくなります。

こうしたアリアドネEBPMの可能性を、より広域かつ持続的に展開しようとする動きが、株式会社官民連携事業研究所と株式会社ストック・ソリューションとの連携・協業です。ストック・ソリューションは、企業の滞留在庫や未活用資産の価値を再定義し、社会課題の解決へとつなげる事業を展開してきました。この協業により、アリアドネEBPMは「寄贈とデータ収集」にとどまらず、住民ニーズを起点に、企業の事業創造そのものを支援する共創モデルへと進化しつつあります。

寄贈を通じて収集された住民アンケートやフィードバックは、EBPMの考え方に基づき整理・分析され、企業側へと還元されます。これにより、企業は地域の生活実態や潜在的ニーズを具体的に把握し、在庫活用やCSRの延長ではない、社会課題そのものを起点とした商品・サービス開発に踏み出すことが可能になります。住民の声は、ここでは「負担」ではなく、新たな市場と価値を生み出す源泉として位置づけられているのです。

このモデルは、単なる官民連携の枠組みを超え、住民・企業・行政が三位一体となって価値を創造する仕組みそのものと言えます。アリアドネEBPMは、こうした連携・協業を通じて、住民の声を社会の意思決定や事業創造へと確実につなげる「共創の社会インフラ」として、その射程を着実に広げています。

おわりに

不確実性が増すこれからの時代、社会が直面する課題はますます複雑化していくでしょう。その社会の中で、私たち一人ひとりに求められるのは、行政、企業、そして市民というそれぞれの立場から、社会課題を「自分ごと」として捉え、共創の輪に参加していく姿勢です。

アリアドネEBPMは、単なるプラットフォームではありません。それは、モノの流れ(寄贈)と情報の流れ(住民の声)を一体化させ、社会の応答性を高めるための、新しい「対話の社会インフラ」のプロトタイプです。寄贈をきっかけに生まれる住民の声が、データとして蓄積され、政策や事業に反映される。その循環こそが、Society 5.0が目指す人間中心の社会像を具体化する力となります。しかし、その実現に向けては課題も残されています。

1. データの連携の難しさ
自治体ごとに収集項目や形式が異なるため、一貫した比較や政策効果の測定が難しいという課題があります。アリアドネEBPMが全国的に広がるほど、データ標準化や自治体間連携の重要性は増していきます。今後は、国・自治体・企業が連携し、共通基盤の整備に取り組むことが求められます。

2. データ活用人材の不足
EBPMを推進するためには、データの分析・解釈・政策立案への転用といった専門性が不可欠です。しかし現状では、多くの自治体や企業でその担い手が十分ではありません。
この課題に対しては、大学との連携が強力な解決策となり得ます。大学にはデータサイエンス、社会調査、公共政策などの専門人材が存在し、学生もPBL(Project-Based Learning:プロジェクト型学習/課題解決型学習)として自治体課題に取り組むことができます。自治体は人的リソースを補完でき、大学は実践的な教育機会を提供できるという「相互利益」の構造が生まれます。

3. 住民参加の継続性の確保
住民の声を起点とするモデルでは、アンケートやワークショップへの参加が一時的で終わってしまうと改善サイクルの維持が困難となります。
この点でも大学が関わることは大きな可能性があります。学生が地域課題にPBLとして取り組むことで、単なる学修を超えて「地域と共に学ぶ」経験が得られます。住民にとっては若者の新鮮な視点が刺激となり、学生にとっては社会課題のリアルに触れる貴重な学びとなります。結果として、住民参加の場が継続的に運営されやすくなり、地域と大学が互いに価値を創り出す「持続的な共創関係」が形成されると考えられます。

今後、官民共創をさらに深化させるためには、行政・企業だけでなく、大学や地域社会も「共創のプレイヤー」として積極的に関わることが不可欠です。アリアドネEBPMは、このような多様な主体同士をつなぎ、地域の未来を共につくりあげるための基盤となる可能性を秘めています。官・民・学・住民が連携することで、データにもとづくより良い社会づくりがより強力に推進されるでしょう。

「Think globally, Act locally(地球規模で考えて、身近なところで行動する)」という言葉があります。アリアドネEBPMの取り組みはまさにこの思想そのものです。企業の廃棄ロス削減という身近な行動(Act locally)が、住民の声をデータとして蓄積し、子育て支援や防災体制の強化、さらにはSDGs(持続可能な開発目標)達成といった社会全体の課題解決(Think globally)へと結びついています。

この取り組みが社会全体に浸透していくことで、互いに学び合い、自ら変化をつくり出せる「新たな常識(パラダイム・シフト)」が育まれ、すべての人が安心して暮らせる持続可能な未来社会の実現につながると確信しています。

※本記事は、株式会社官民連携事業研究所の取材・資料提供に基づき構成しています。




▼【REVIEW:】#01の記事はこちら


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