オールドホラー好きの脳髄を甘く痺れさせる快作 『視える』 を視ましょう!
※なお↑の公式サイトにある予告には、本編内で「そこ、どうする、どうする……」と手に汗握る場面が映っちゃっているので、ネタバレ避けたいお方は見ない方がいいです※
映画『視える』。
監督はアイルランドの新鋭、ダミアン・マッカーシー、主役はキャロリン・ブラッケン。
我が愛するホラーの王道が還ってきた!
近年は邦画でも海外ものでも、「ちょっと外したおシャレ・難解め・心理戦ホラー」がすっかり定着している感があり、それはそれで大変に楽しく大好きではあるのですが、こちらを見ながらひしひしと思いました、
「ああ、一番好きな『ホラーのかたち』だ……!」
幸福な結婚生活を送る姉と、母譲りの骨董店を営む目の見えない妹。双子姉妹の強い絆は、ある晩、ひとりで引越し先のリフォームを行なっていた姉の無惨な死で突然断ち切られてしまう。
その死から一年後、逮捕された犯人の遺品を手に入れた彼女は、姉の殺人現場にひとり(と人形)で乗り込んでいく――
(以後、基本的に大きなネタバレは無いので未見の方でも大丈夫です)
全編、甘くて美味しいとろけるようなホラーのクリームをスプーンで口に運んでもらっているような、甘い蜜の滴り落ちるホラーな果実にかぶりついているような、最高の夢心地を味わいました。「ああ、この絵好き、このセリフも好き、この音好き……」と、うっとり浸れた90分。正統ゴシックホラーの魅力が存分に詰まっています。
特に、目の見えない人を主人公にしているだけあって、画面の光と闇の塩梅が最高。闇はこってりとくろぐろと濃く、太陽の光はどこかうすらぼけ、ろうそくやランタンや家の明かりはオレンジがかってゆらゆらとたよりない。
主人公が姉の殺害現場である古い邸宅を訪ねる際に、見るからに不気味な木製のゴーレム人形を伴っていくのですが、これが本当に何とも良い。
何が良いって、出会い方としてはちょっと風変わりではあるものの、まあ一応オトナ同士としてそれなりに一定の礼節でもって場を保っている主人公と姉夫の知人の「緊張感はあれど一般常識的空間」にこの「木偶の坊」がどかんと座っている様が猛烈に面白いところ(笑)。
優秀なホラーには異様な緊張の中にある種の可笑しみがにじみ出ることが多いと思っているのですが、この辺りがまさにそれです。シュールな可笑しさ。これがあると怖いシーンが更に生きる。
「ホラー」であるからして、当然「観客を怖がらせる為のシーン」がいくつも存在するのですが、それがいやらしくないのもいい。「単なるびびらせの為」ではなく、意味がある。そして、変な言い方ではあるんですが、ある程度の予測がつくところもいい。
恋愛作品で、互いを憎からず思っているふたりがひょんなことで急接近して、見ているこっちが「む、これはくる、見つめ合った、よしくるぞキスが……!」と内心盛り上がったりするじゃないですか。ああいうのに似ています。
「ここにコレがきてほしい」と思ったところにズバっときてくれる。最高に気持ちいい。こっちの押してほしいホラーツボを、押してほしいまさにそのタイミングで、最適の強さでぐっと押し込んでくれる。
王道って素晴らしいな、と再確認させてくれる作品です。
古きゴシックホラーを愛する皆様も、ホラーに興味はあるけどあまり見たことがないそこの貴方も、「もうホラーなんて飽きちゃったよ」と思っておられるそちらのお方も、この素晴らしく出来の良い作品をどうか一度試していただきたい。ホラーの教科書に載せられるべき傑作です!
ぜひぜひ視てください!!!
※ネタを割っている感想はこちら↓の記事で読めます
……そうそう、言い忘れていた、もうひとつ素晴らしいのがこれ、パンフレット。
なんと驚愕の 500円 です!
安ぅい、安すぎる……!
本当にこのお値段、すごくないですか? 昭和の時代に戻ったかと思いましたよ。
しかもこんなお安いのに中身もすごくて、監督や主役のインタビュー、解説、たくさんの写真と、大変に充実しています。映画を見たら必ず欲しくなる逸品ですよ!
