AIバブルは収益バブル【レポート8】
このnoteでは、AIバブルが収益バブルだと思われることについて解説する。
今のAI相場はドットコムバブルとは違う
最近の株式相場は、ITや半導体関係の銘柄だけがものすごい勢いで上がり、他のセクターはあまり上がっていない。ソフトバンクがトヨタの時価総額を追い越し、22年間続いたトヨタの時価総額日本一位の期間が終わったことは、きっと多くの人にとって印象的だったと思う。また、現在時価総額3位のキオクシアの株価も、もの凄いスピードで伸びている。
このような「銘柄集中」や「モメンタム」(勢い)は、2001年のドットコムバブルと非常に似ているだろう。ドットコムバブルの時はバブル相場は崩壊してしまい、NASDAQ100指数が元の値に戻るまでに実に15年の時間が必要であった。しかし、以前のnoteでも指摘したように、今のAI相場はドットコムバブルとは性質が違うと考える。その最大の理由が、株価収益率PERが、ドットコムバブルと比べて小さいからである。
PERとは、ざっくり言うと株価と収益の比だ。そしてだいたい20前後が普通と言われる。その意味は、投資された金額の20分の1、つまり投資金額の5%の収益を得る能力があるということだろう。一方で、倒産のリスクがほぼ無い米国債でも4%程度の利回りがあるわけだから、利回り5%に相当するPER20前後が基準になってくると言える。
成長性の高いIT企業の場合は、PER30以上の高い値が許容されることもある。これはつまり、近い将来に収益が伸びることを期待されているはずだ。今はPER30で収益は株価の30分の1だが、収益が伸びて、将来にはPER20とかに落ち着くという考えだ。なお、現在のNASDAQ100指数の実績PERは34である。一方で、ドットコムバブルの際はPER100に到達していたと言われる。この3倍近いPERの違いこそが、今の相場がバブルでないと解釈するための、最大の根拠と考える。
収益バブルという可能性
「今の相場はPERが高くないからドットコムバブルと違う」・・正直、ほぼ毎日SNSや経済ニュースで見かける言葉だと思う。そして、それは正しいはずだ、PERは高くないのだから。今の相場をバブル崩壊に追い込むメカニズムがあるとすれば、それは「収益バブル」ではないかと思う。それは、ドットコムバブルのように、「株価が収益に対して先行して上がりすぎている」のではなく、「収益そのものが実体経済に対して先行して上がりすぎている」ということだと考える。
収益が上がりすぎる?そんなことあるのだろうか。実際に働いている人ほど、不思議に思うかもしれない。その実態は、AIおよびデータセンターに膨大な規模のインフラ投資が必要であることと考える。実際にAIインフラに投資しているのは、大部分はメガテック、GAFA、M7と呼ばれる企業であるはずだ。これらの企業は、ITプラットフォームで巨額の利益を得ているが、高性能AIは既存のプラットフォームを破壊してしまう可能性が高い。つまり勝者総取りの勝負みたいになっていて、投資か敗北か?という状況に近く、全力で投資せざるを得ないと考える。
一方でAIインフラで収益を得ている企業の筆頭は、確実にNVIDIAだろう。NVIDIAはAIの主要部品であるGPU製造とAIへの組み込みを掌握しているため独占状態に近く、実際に高性能GPUのシェア率は80%を超えると言われる。GPUだけだとAMDやIntelも製造しているが、AIへの組み込みはNVIDIAが独占する技術のようである。最近ではキオクシア、ハイニックス、マイクロンなどのメモリ企業の株価が大きく上がった。これらの企業が製造しているのはSSDあるいはそれに近いデバイスであり、要はデータ保管用のストレージだろう。
注目したいのが、投資する側であるメガテック企業と、投資される側であるAIデータセンターのサプライチェーンが、NASDAQ100、IT、半導体などの似たような指数やセクターに分類されやすい点だ。また、どちらも時価総額が非常に大きいから、SP500やオルカンのような時価総額連動インデックスの場合も同様である。
つまり、メガテックは既存のITプラットフォームにより、巨額の「収益」を市民や他の企業から得ているはずだ。そして、その収益および貯め込んできた資産を、全力でAIデータセンターに投資する。その投資金額はNVIDIAを筆頭とするサプライヤーの「収益」となるだろう。おわかりいただけただろうか?企業間の投資によって、2回目の収益が登場していると思う。
しかし、ちょっと待て。投資した側のメガテックの収益は減るはずではないのか?これは確実に減る。しかし、大きなトリックが一つ存在する。それは、データセンターなどへの設備投資は、会計上は減価償却として数年(多くの場合は5年)にわたって収益から差し引かれるということだ。一方でNVIDIAなどのサプライヤーは製品を納品した年に、一括で収益が計上されるはずだ。つまりメガテックが1兆円収益を稼ぎ、そのまま100%をNVIDIAに投資したと仮定すると、セクター全体での収益が単年度では1兆8000億円へと膨張すると解釈できる。(減価償却5年の場合) このメカニズムも収益バブル的な相場の構造的原因と考える。
AI産業は決算も良い、収益も良い。しかし、その理由はメガテックが死に物狂いで資金注入しているからだろう。つまり、収益は出ているが、今の仕組みだけでは、きっと持続不可能なのだろう。そして持続する収益に発展する唯一の可能性は、おそらくAI産業そのものの、確実なマネタイズの成功だと思う。バブル崩壊の程度は、そのままマネタイズのリアルさに連動すると思う。全然儲からない、あるいは、儲かるけど思ったほどではないな。このようなリアルさに応じたバブル崩壊が起こると思う。
また、キオクシアのストレージのように、データセンターの部品だからと言って、NVIDIA並みの上昇を期待するのも、個人的には危険だと思う。NVIDIAは独占性が非常に高いという点で、特別と言えるはずだ。逆にストレージは競合他社が多いから、増産体制が間に合えば、AIバブルの崩壊よりも先に収益が収束する可能性は高いと考える。キオクシアの予想PERは、驚くべきことに、わずか7.7である。株価は1年で40倍近く上がった。それでも予想収益の方が上がるペースが速いということだろう。しかし、繰り返しになるが、収益の源は、メガテック企業の投資であるはずだ。
キオクシアは2017年に、事実上の経営難に陥った東芝の半導体メモリ事業を分社化して再出発した会社である。つまり、率直な言い方をすれば、倒産寸前の大企業の一部門だったはずだ。そこから10年もたたないうちに凄まじい株価の上昇を起こし、今やトヨタに匹敵する時価総額になっているのは、巨大IT企業を台風の目とする、現代経済の動きの激しさを象徴していると思う。一方で本体だった東芝は、2023年に上場廃止になった。
AIに全力で投資している企業の例はアマゾンであるが、AIへの投資によって2026年Q1のフリーキャッシュフローは12億ドルまで落ち込んだ。前年同期は約260億ドルであり、ギリギリまでAIに投資していると察する。キャッシュフローは企業の流動性であり、体力のようなもので、経営をするために非常に重要なファクターであるはずだ。それを犠牲にしてでも、背水の陣で投資しているということだと考える。
いろいろと書きなぐったけれども、PERさえ高くなければ大丈夫という見方には、最近は疑問を持っている。収益の持続性の実態、マネタイズのリアルさ。そういったものへの洞察が、命運を握るのではないだろうか。
まとめ
今のAI相場はドットコムバブルとは違うけど、収益そのものがバブルである可能性を注視したい。
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