【ラジオ深夜便4時台】2025年米国政治を読み解く:トランプ2.0とNY市長マムダニに共通する反エリート構造(No.37)
放送日:2025年12月18日午前4時
執筆:2025年12月18日夜
2025年、アメリカ政治は「トランプ政権2期目」という巨大な転換点を迎えた。しかし、世間で騒がれているような「保守対リベラル」の対立だけを見ていては、この国で起きている本当の地殻変動を見誤る。
早稲田大学の中林美恵子教授の分析、そしてニューヨーク市長選でのゾーラン・マムダニ氏の歴史的勝利。これらを繋ぎ合わせると、「既存のエリート支配に対する生活者の拒絶」という共通の構造が浮かび上がってくる。
木曜日の夜。俺は忙しかった一日を終えて、相変わらずストーブの前でこの記事を書いている。札幌の今日は大きな道路は乾燥していたが、中道に入るとスケートリンクか?と言うくらいピカピカに光っていた。
ストーブの前でこの話を聞いていて、妙に腑に落ちた。トランプ政権2期目の変容。1期目と2期目(トランプ2.0)の決定的な違いは、政策の中身以上に「政権の構造」にある、と中林教授は言う。
ブレーキ役の排除。1期目は周囲の意見を聞く場面もあったが、2期目閣僚は「忠誠心」を唯一の基準として任命されている。演出された強硬策。不法移民の送還をメディアに露出させる手法などは、単なる政策執行ではなく、支持層への「視覚的アピール」という構造に基づいている。経済ナショナリズムの加速。同盟国に対しても一律関税を辞さない姿勢は、製造業復興という悲願に向けた「なりふり構わぬ構造」の現れだ。
AIならこう書くだろう。「客観的に分析すると」「データが示すように」と。でも俺はそうは書けない。なぜなら、この話の裏には人間の絶望があるからだ。絶望と言うのは大げさだと思うかもしれないが、現実に目の前にぶら下がっている。俺はそう思う。だから書いた。
なぜ人々はトランプ氏を、あるいは過激な変革を求めるのか。その理由は、冷徹なデータに裏打ちされた「生活者の絶望」にある。中林教授が指摘する「アメリカ格差」の現場では、グローバル化の恩恵から切り離された人々がフェンタニルなどの麻薬蔓延に直面している。
彼らにとって、高学歴で洗練された言葉を操る「エリート」は、自分たちの荒廃した日常を放置し続けてきた加害者に他ならない。
北海道の冬は、時々人間の心まで凍らせるね。外の静けさの中で、ラジオから流れてくるアメリカの話を聞いていると、遠い国の出来事には思えなくなる。見捨てられた人々の怒り。それは、きっと北の大地で冬の寒さに耐えながら暮らす人間にも、どこか通じるものがある。いや、通じているのではなくて、実際に存在するのだ。
トランプ政権への逆風とも、あるいは鏡写しとも言える事象が、2025年11月のニューヨーク市長選挙で起きた。イスラム教徒で元ラッパーという異色の経歴を持つ、34歳のゾーラン・マムダニ氏の当選だ。
マムダニ氏の演説動画を注視すると、彼が語る言葉は単なるスローガンではないことがわかる。
「倉庫の床で重い箱を持ち上げ、痣(あざ)ができた手。キッチンの熱で火傷を負った拳。これが我々のニューヨークの真実だ」
こうした、五感に訴えかける具体的な描写こそが、机上の空論を語るエリートとの決定的な差となった。笑っちまった。いや、笑うべきじゃないのかもしれないが、この言葉の力強さに、思わず口元が緩んだ。これだよ、これ…
彼は、市民が直面する限界を具体的な数値で突きつけた。家賃中央値は過去5年で25%上昇。平均給与はわずか1%の伸び。この圧倒的な「24%の乖離」こそが、イデオロギーを超えて市民が既存秩序に「ノー」を突きつけたエネルギーの源泉だ。
夕方5時を過ぎた。外はもう暗い。ストーブの灯油メーター、今日は赤くなっていない。焼酎のお湯割りを啜りながら、俺はマムダニ氏のSNS戦略について考えていた。
なぜ彼は若年層の心を掴めたのか。彼のSNS活用は単なる拡散ツールではなく、
「デジタル経済から取り残された個人の孤独感」という構造
に、元ラッパーとしての「個の物語」を直接接続した点にある。これは、トランプ氏がかつてSNSで成し遂げた「エリートのフィルターを通さない直接対話」という構造の、リベラル版と言えるだろう。
最近AIを勉強しているが、どうも割り切れない。AIが排除したがるノイズこそ、人間の記憶そのものだ。マムダニ氏の言葉には、そのノイズが満ちている。痣、火傷、孤独。それは整理されていない、生々しい現実だ。
ここまで来るとAIはお手上げだろう。それでなくても「ノイズ」を理解できず、ましてやそのノイズが整理されていない状態をAIが理解できるはずもない。
来年以降、中林教授が予測するように2026年の中間選挙が最大のヤマ場となる。
下院を民主党が奪還すれば再び弾劾の嵐が吹き荒れるだろう。ドル高や仮想通貨への期待がある一方で、関税引き上げが日本の輸出産業に与えるダメージは無視できない。
俺たちはトランプ氏の「言うこと(発言)」という表面的な現象に一喜一憂するのではなく、彼らが実際に「やっていること(構造的な変化)」を直視しなければならない。困ったものだ。いや、困るのは俺たちだけじゃない。この流れに翻弄される世界中の人々が、同じように困っているんだろう。
中林美恵子教授は、混乱する世界情勢の中でも、自分自身の好きなことに集中し、何歳からでもチャレンジすることの大切さを説いている。声に救われた。妙に落ち着いた。
一次情報とは、単にニュースを追うことではない。対象をじっくり観察し、その裏にある「なぜ?」という構造を見つけ、自分なりの意味を与えること。それこそが、情報に振り回されないための最強の武器となる。
身体も温まってきた。車で移動していても寒さが答える季節。それが冬なのだ。古い家が軋む音がする。北海道の冬は、時々人間の心まで凍らせるが、同時に、こうして静かに物事を考える時間もくれる。
あんた、ここにはいねえだろう? でも、この文章を読んでくれているなら、きっと同じような夜を過ごしたことがあるかもしれない。ラジオの声に耳を傾け、世界の動きに思いを馳せる、そんな夜も悪くはない。
ラジオ深夜便:本日の補足
誕生日の花はフタバアオイ。花言葉は「細やかな愛情」だそうだ。徳川家紋のモデルだが、実は葉は2枚。「三つ葉」との違いを知ることは、観察眼の第一歩だ。日陰を好むその性質を知ることで、家庭での栽培も可能になる。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。便利すぎるAIと、不器用な人間。雪深い札幌で、その狭間を行ったり来たりしています。
執筆:健一
(61歳、北の大地でAIと格闘中)
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【この記事を書いた人:健一】
昭和・平成・令和と激務時代を生き抜いた元企業戦士。 現役時代は「24時間戦えますか」の世界で生きてきましたが、引退した今は、北の大地でAIやラジオに触れる静かな時間を噛み締めています。 「昔はよかった」とは言わないが、「今は今で大変だ」と若手を案じている61歳。
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