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大企業の新規事業で、顧客のペインを解いてはいけない?

新規事業では、「顧客のペインを見つける」ことが重要だとよく言われます。

顧客が本当に困っていることは何か。どれほど深い課題なのか。解決すれば、お金を払ってもらえるのか。

特にスタートアップにとっては合理的な考え方です。限られた人と資金で始める以上、強い課題を持つ顧客を見つけ、小さく試しながら需要を確かめていくことが成功の近道です。

大企業の新規事業も、こうした方法論から多くを学んできました。

ただ、大企業までペイン起点に寄りすぎると、少しもったいないのではないかと思っています。

ペインだけが、新規事業の入口ではない

顧客に話を聞けば、具体的な困りごとはたくさん見つかります。

ただ、それぞれには価値があっても、事業として広げようとすると意外に小さいことがあります。ある会社では強く刺さるけれど、別の会社では事情が違う。PoCにはなるが、横展開しにくい。

もう一つ気になっているのは、社会課題や環境問題など、「社会的に意義があること」がテーマとして選ばれやすいことです。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。

ただ、社会的な意義が大きいことと、事業として魅力的であることは別です。

社会課題の場合は、価値を受ける人と、お金を払う人が一致しないこともあります。また、社会的な意義が大きくても、十分な市場や収益性がなければ、事業として続けることは難しくなります。

以前、私は新規事業の入口を四つに整理して講演したことがあります。

Pain、Gain、Tech Enabler、Unfair Advantage。

困りごとを解くところから始めてもいい。新しい価値や体験から考えてもいい。技術の進歩で初めて可能になったことから始めてもいい。自社ならではの強みを、新しい顧客価値に変えてもいい。

大企業だから使えるものがある

特に大企業には、長年蓄積してきた技術、製造能力、顧客基盤、販売網、ブランドなどがあります。

それらを組み合わせることで、これまでできなかったことを可能にしたり、新しい市場そのものをつくったりできる可能性があります。

さらには、事業機会が見えたときに、思い切った大きな投資を行うこともできる。

企業内起業についてのある対談記事で、印象に残った言葉があります。

「会社を辞めたら井戸は掘れるかもしれないけれど、ダムはつくれない」

大企業で新規事業をやる意味を、うまく表した言葉だと思います。

ダムには経済性がいる

ただ、大企業がつくるべき「ダム」は、大きいだけでは足りません。大きな価値とともに、大きな経済性が必要です。

顧客がお金を払い、利益が出て、それを次の成長に回せる。

大企業が人と時間と資金を投じるのであれば、社会的な意義だけでなく、どれだけ大きな市場になり、どれだけ利益を生めるのかも正面から考える必要があります。

小さく試すことは大切です。

ただ、その延長線上に、大きな事業が自然に生まれるわけではありません。

大企業だからこそつくれる「ダム」は何か。

そこまで考えるのが、大企業の新規事業なのだと思います。


出典:堂上研『道は拓ける。―挑戦の先にあるもの― ウェルビーイング共創産業をつくる』収録「日本が持つ企業内新規事業の大きな可能性」。井戸とダムの言葉は、吉井信隆氏が堂上研氏にかけたもの。

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