部屋の明かりがまぶしい日がある──休む前に刺激を減らしていい
部屋に帰ってきて、いつものように明かりをつけた瞬間、少しまぶしいと感じる日がある。
特別に強い照明ではない。いつもと同じ部屋で、いつもと同じ明るさで、何かが壊れているわけでもない。それなのに、今日はなぜか光が目に刺さる。テレビの音も、スマホの画面も、冷蔵庫の小さな音も、少しだけ輪郭が強く感じる。
そういう日に、僕たちはつい自分の状態を疑ってしまう。
疲れているのかな。
気にしすぎかな。
こんなことでしんどいなんて、少し弱っているのかな。
でも、部屋の明かりがまぶしく感じる日は、心が大げさになっている日ではないのだと思う。むしろ、心と身体がようやく、小さなサインを出せるところまで戻ってきた日なのかもしれない。
疲れは、気分より先に感覚へ出る
疲れているとき、最初に分かりやすく落ちるのは気分だと思われがちだ。
やる気が出ない。
楽しくない。
何もしたくない。
人と話すのが面倒になる。
もちろん、そういう形で疲れが出ることもある。けれど実際には、気分より先に、感覚のほうへ出ることがある。
明かりがまぶしい。
音がうるさい。
人の声が近すぎる。
スマホの画面を見るだけで、頭の奥が重くなる。
部屋にいるのに、落ち着く前に疲れてしまう。
これは、わがままではない。気分の問題だけでもない。日中にたくさんの情報を受け取り、たくさんの反応をして、たくさんの判断をしたあと、心と身体の処理容量が少し狭くなっている状態なのだと思う。
仕事中は、案外それに気づけない。
会議では返事をする。チャットには反応する。相手の表情を読み、言葉を選び、予定を確認し、次の作業へ移る。職場では普通にできているから、自分ではまだ大丈夫だと思ってしまう。
でも、家に帰って、ようやく外向きの顔を外したとき、身体のほうが先に言う。
今日は、もう少し暗くしてほしい。
今日は、もう少し静かにしてほしい。
今日は、これ以上入れないでほしい。
その声が、部屋の明かりをまぶしく感じる感覚として出てくるのかもしれない。
休む前に、整えようとしすぎている
疲れている夜ほど、僕たちはなぜか休む前に何かを整えようとする。
洗濯物を片づけなきゃ。
明日の準備をしなきゃ。
スマホの通知を確認しなきゃ。
返信だけ先に返さなきゃ。
部屋が散らかっているから、少しだけ片づけなきゃ。
もちろん、生活を整えることは大事だ。明日の自分を助ける準備も、悪いことではない。
ただ、休む前の整え方が、いつの間にか小さな追加勤務のようになっていることがある。
帰宅後の部屋で、明るい照明の下、スマホを見ながら、頭の中ではまだ明日の予定を並べている。身体は休みたいのに、目には光を入れ続け、耳には音を入れ続け、脳には情報を入れ続ける。
それで落ち着かないのは、当然なのだと思う。
休めないのではなく、休む前の環境がまだ働く仕様のままになっている。部屋に帰ってきたのに、光も音も画面も、まだ日中と同じ強さで自分を起こし続けている。
だから、疲れている夜に最初にやることは、気合いを入れて片づけることではないのかもしれない。自分を励ますことでも、反省することでもない。
まず、刺激を減らすこと。
照明を少し落とす。
スマホの明るさを下げる。
テレビをつけない時間を作る。
音楽を流すなら、言葉の少ないものにする。
部屋を完璧に整える前に、自分の入力を少なくする。
それだけでも、身体は少しだけ、今はもう反応し続けなくていいのだと分かり始める。
暗くすることは、逃げではない
明かりを落とすことに、どこか後ろめたさを感じる人もいると思う。
まだやることがあるのに。
こんな時間からだらけていいのかな。
暗くしたら、何もできなくなりそう。
ちゃんとした大人なら、もう少し動けるはず。
でも、暗くすることは、生活を投げ出すことではない。
むしろ、自分の状態に合わせて環境を調整することだ。外が暑ければエアコンをつける。寒ければ上着を着る。お腹が空けば何かを食べる。それと同じように、刺激が強すぎる日は、光を弱めていい。
心が疲れている日に必要なのは、さらに自分を奮い立たせることではない。刺激の量を、自分が受け取れるところまで下げることだ。
僕たちは、強い明かりの下で頑張ることに慣れすぎているのかもしれない。
明るい部屋で、明るい画面を見て、明るい言葉を探して、前向きな自分に戻ろうとする。でも本当は、前向きになる前に、少し暗くしてもいい。静かにしてもいい。何かを足す前に、入ってくるものを減らしてもいい。
休むとは、自分を空っぽにすることではない。
これ以上、余計なものを入れないようにすることでもある。
まぶしい日は、弱っている日の合図ではなく、戻るための合図
部屋の明かりがまぶしい日、僕は無理に元気を確認しなくていいと思っている。
今日の自分はおかしいのか。
なぜこんなに敏感なのか。
もっと強くならなきゃいけないのか。
そうやって原因を探し始めると、休む前にまた頭が働き始めてしまう。
それよりも、今日は入力を減らす日なのだと決めてしまうほうがいい。
明かりを一段落とす。
画面を見る時間を短くする。
部屋の中で、いちばん目に入るものだけ片づける。
飲み物を用意して、何もしない時間を少しだけ置く。
考えごとは、明日の明るい時間に返す。
それは、特別なセルフケアではない。きれいな暮らし方でもない。ただ、今の自分に対して、少しだけ刺激を減らすという、ごく現実的な手当てだ。
疲れている日は、頑張り方を変えるより、受け取る量を減らすほうが先なのだと思う。
部屋の明かりがまぶしいと感じたら、それは自分が弱い証拠ではない。今日一日、思ったよりたくさん受け取り、たくさん反応してきた証拠かもしれない。
今夜、あなたが減らしてあげたい刺激は何だろう。
A. 明かり
B. 音
C. スマホや情報
よければ、今夜いちばん減らしたいものを一つだけ、心の中で選んでみてほしい。

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