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『ホロン革命』アーサー・ケストラー著 │ 工作舎

 全体と部分のロールを入れ替えて、いわゆる亞全体なるものを作る方法をホロンという。『機械の中の幽靈』から引用すれば、「それ自体が全体であり、かつ、より大きな全体の部分でもある」存在のことだ。禅で云えば、一即多、多即一が近いか。写眞は工作舎50周年記念出版として刊行された新装版である。横須賀の草叢で撮った。

 ケストラーはブダペスト生まれの科學ジャーナリスト。1983年『ホロン革命』が最初に出版された日、彼はロンドンの自宅で自裁し、77歳で生涯をとじた。パーキンソン病と白血病をその理由として遺書に挙げている。晩年の彼は、

目に見えぬインクで書かれた文字

という表現で感覺や概念で認識できない究極のリアリティを追っている。不立文字よりも色氣があって、私はひと目惚れした。幾十年かまえに「凡てを棄て果てたあとに、なおひとつ残るものがある」と師から云われた言葉と私の裡で重なる部分がある。

 ところで、吉原の遊女であった高尾太夫がしたためた戀文のなかには、

忘れねばこそ、想いださず候。

といった詩がある。片時も忘れぬが故に、想い出にならないということであろうか。片時が一期を占めるとき、私はホロンとくるのである。

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