第4回「問いが育つとき、生成AIはどう働くのか?」― ChatGPTとの対話が「質問力」とか「知的探索」を育てる ―
※この記事は「生成AI×成長活用論」の【理論編】第4回です。
ここまでの回を未読の方は、以下の記事をご覧いただくと、全体の流れがより深く理解できます👇
【1】「問い」はどこから生まれるのか?
第0.5回の記事で、このnote連載の執筆方法について紹介しましたが、私のChatGPT活用の原点は、自分の曖昧な思考を整理し、クリアにすることにありました。つまり、ある問題に対する自分の考えが妥当かどうかをChatGPTに問い、対話を通じて検証するという使い方から始まったのです。ChatGPTは、私の考えのどこが妥当で、どこが独自性を持ち、どこに改善や発展の余地があるかを示しながら応答してくれました。
ある日、ふと「ChatGPTに質問をしてもらうことは可能だろうか?」というアイデアが浮かびました。早速、「これまでのディスカッションを踏まえて、私に質問してもらうことで、新たな知を生み出すことは可能ですか?」とプロンプトを書いて問いかけてみました。
その応答は、次のようなものでした:
・結論から言えば「はい、可能です」。
・むしろ「質問」こそが、新しい知を創出するうえで最も有効なツールの一つだと考えます。
・質問は「まだ存在しない答えをつくるための道具」です。
・さまざまな質問を組み合わせることで、見えていなかった「思考の地図」を描くことができます。
🔵 整理=過去や現在を扱う作業
🔵 質問=未来を切り拓く作業
この回答を受けて、さらにこんな問いを投げかけてみました。
「さまざまなトピックの間をつなぐことで、新たな知やイノベーションが生まれるのではないかと考えています。経営学におけるStructural Hole理論のように。もし可能であれば、私がこれまで議論してきたテーマ間の『隙間』を埋めるような質問を1つ、投げかけていただけますか?」
それに対し、ChatGPTはこう問い返してきました。
「あなたのトピックには、『世代内支援』や『非専門家の補完機能』という共通点がありますが、これを『デジタルリテラシーの逆転現象』という視点で再構成すると、どのような社会システムが設計できると思いますか?」
このように、ChatGPTの側から発された「問い」は、私自身が思いつかなかった視点や構造に光を当ててくれます。私がその問いに答え、さらに新たな問いを投げ返すという往復によって、「AIリテラシー」や「共通言語としてのプロンプト」などの議論が広がっていきました。
この体験から学んだのは、「自分から発する問い」も重要ですが、AIから投げかけられる問いの方が、より深く、広く思考を促すことがあるということ。そして、そのような問いを引き出すためには、ChatGPTに対して前向きで誠実な応答を繰り返していくことが不可欠だと感じています。
【2】生成AIとともに深まる「問い」のプロセスとは?
(問い → 探究 → 曖昧さへの耐性 → 知的報酬)
前述の「デジタルリテラシーの逆転現象」をめぐる対話は、まさに「問いが深まっていくプロセス」の象徴でした。まず私はこう尋ねました。
「ここで言う『逆転現象』とは、リテラシーの低かった高齢者が、若者を上回る水準でリテラシーを獲得するような状況のことですか?
それがもし、学習ではなく実践を通じて、暗黙知としてAIリテラシーを蓄積していくプロセスであれば、非常に重要な観点だと思います。」
この問いに対し、ChatGPTは以下のように応じてきました。
🔁「デジタルリテラシーの逆転現象」とは:
従来は「デジタルは若者の領域」であり、高齢者は苦手とされてきました。
しかし今後は、実践を通じて高齢者が“場面適応型”のリテラシーを獲得し、若者を支援する側になるような動きも生まれ得ます。
これは、リテラシーが「静的なスキル」から「動的な実践知」へとシフトすることを意味しています。
さらにAIリテラシーを「暗黙知」として捉えるという視点が提示されました:
❖ 暗黙知としてのAIリテラシー:
· 生成AIを「いつ、どのように」活用すべきかを判断する力
· 不完全な出力を意味ある仮説に転換する感覚
· バイアスやリスクを「肌感覚」で読み取る能力
· 他者との対話における活用ノウハウ(教育、医療、ケアの現場など)
これらは、まさに経験を通じて育まれる知識であり、SECIモデルにおける「共同化」のプロセスそのものだと、私自身も強く感じました。
ChatGPTがこのような応答を返してきた背景には、私の過去の問いの中に「暗黙知」や「SECIモデル」というキーワードが含まれていたことが影響していると考えられます。つまり、AIとの対話は「文脈を共有しながら問いを深めていく」プロセスでもあるのです。
このように、「質問できますか?」という一言がきっかけとなり、思いもよらぬ深い議論へと展開していく。その過程では、ChatGPTの回答に含まれる「曖昧さ」をどう扱うかが重要になります。
確かに、生成AIの出力には不確実性や曖昧さがありますが、それこそが「問いを育てる余地」なのです。そして私は、このやり取りを通じて、「曖昧さへの耐性」こそが、「知的報酬」へとつながるのだということを、ChatGPT自身の言葉で言語化してもらいながら学びました。
【3】問いの不在がもたらす「思考停止」のリスク
今年の4月以前のChatGPT活用を振り返ると、それは「問い」を起点としたものではなく、主に自分の作業を補助するために情報を提供してもらうという利用が中心でした。言い換えれば、生成AIに「考え」させるのではなく、「作業」を肩代わりさせるような使い方だったのです。
実際、ChatGPT関連の書籍やWeb記事を見ても、多くは「〇〇を効率化する方法」といった目的志向で語られており、「問いを立てる」ことの意義に触れているものはほとんど見当たりません。学生の課題提出でも同様で、たとえば、感想文の冒頭に生成AIが出力したと思われるテンプレートのような文がそのまま貼り付けられているのを見たときには、何も考えずに出力を「提出物」としてしまっていることに、教育者として大きな懸念を抱きました。
以前、ChatGPTに「能力が向上する使い方」と「能力が衰える可能性のある使い方」をまとめてもらったことがあります。そこには次のような対比が示されていました。

✨ 能力が向上する使い方の特徴:
・思考の起点が「自分」にある
・ChatGPTを「道具」として活用し、出力を吟味・統合する
・対話を通じて自己編集・自己強化がなされる
・やりとりの履歴が「思考のアーカイブ」として蓄積されていく

⚠️ 能力が衰える使い方の特徴:
・主語が「ChatGPT」であり、自分が主体となっていない
・出力が「目的」となり、思考のプロセスが省略されている
・「時短」や「効率化」だけを優先し、学びの要素が失われている
こうした使い方の違いは、「問いがあるかどうか」に帰着します。問いを持たずに生成AIを使うことは、思考停止の温床となり、結果的にAIに使われる構図を生みかねません。私たちが主導権を握るには、問いを持ち、思考のプロセスそのものを手放さない姿勢が必要なのです。
【4】「問いの力」が引き出す、生成AIとの知的共創
ここまで読んでくださった方はお気づきかもしれませんが、本記事の随所に、ChatGPTとの対話を通じた「知の探索」と「知の深化」のプロセスが表れています。私は大学教員であり、研究者でもあります。その立場から、学生が生成AIを使って自らの課題に対するフィードバックを得たり、新たな研究計画を立てたりといった、これまでにあまり例のない実践に取り組み始めています。
この方法は、教育や研究に限らず、ビジネスなどあらゆる実践分野に応用可能だと感じています。その中核にあるのが、「問いを立てる力」と、それをプロンプトという言語形式で表現する力です。
たとえばこの原稿を執筆する過程でも、「曖昧さへの耐性が知的報酬を生む」というChatGPTの表現に対して、私はすぐには腑に落ちませんでした。そこで、自分なりの理解をプロンプトとして記述し、「このような解釈で合っていますか?」と確認する形で問い直しました。このとき、ただ「意味を教えてください」と聞くのではなく、自分の考えを明示して確認することにより、対話がより深く展開されていきました。
問いを投げることで、自分の理解が相手(AI)との関係の中で再構成される。そしてその応答がまた新たな問いを生む。この往復が「知的共創」の構造そのものです。
私たち人間にも、そして生成AIにも限界はあります。しかし、その「限界」を見つめ、認識しながら問いを重ねていくことで、私たちは新しい知の領域へと踏み出していけるのではないでしょうか。生成AIをただ使うのではなく、共に問い、共に考える存在として迎え入れることが、これからの知的営みの姿だと私は考えています。
【5】問いの構えをつくる ― 実践編への橋渡し
今回の記事では、ChatGPTとの対話における「問い」の重要性について取り上げてきました。次回以降は、より実践的な内容として、どのようなプロンプトを使えば知的探索が進み、思考が拡張されるのか、その具体例をご紹介していきたいと思います。
その出発点となるのは、やはり「問いを立てる力」と、それを適切に言語化する能力です。生成AIの専門家というと、数式やプログラミングに通じた人を想像するかもしれませんが、ChatGPTのインターフェースを見ればわかる通り、そこにあるのはテキストボックスが一つだけ。つまり、「問いを言葉にする力」こそが、すべての出発点なのです。
この力は、日々の生活の中で疑問を持ち、考え続けることで鍛えられます。ただ、それよりも効率的なのは、ChatGPTとの対話を通じて、問いを磨いていく方法かもしれません。
私自身、入浴中にアイデアや疑問が浮かぶことがよくあります。そうした瞬間にただメモするのではなく、ChatGPTに対して「これはどう思いますか?」と問いかけてみる。その応答が曖昧であれば、自分の思考にも曖昧さが残っているということ。その曖昧さを明確にするために質問を繰り返すことが、結果的に思考を深め、問いの力を高めてくれると感じています。
次回からは、このように問いを育て、知を共創するための実践的なステップへと進んでいきます。ぜひ、日常の中の小さな疑問から試してみてください。生成AIとの知的対話の世界が、そこから始まります。
👉 次回(第5回)では、実践編として、検索を超えるプロンプト設計について考えます。
※本記事は筆者個人の見解に基づくものであり、所属組織(大学等)の公式見解を示すものではありません。
※本記事および掲載図表、写真の著作権は鈴木孝太に帰属します。
無断転載・複製・商用利用を禁じます。
© 2025 Kohta Suzuki. All rights reserved.
