共感したら、同意しなければいけない?|相手を尊重しながら「NO」を伝える方法
「気持ちは分かる。でも、その意見は採用できない」
職場では、そんな場面がよくあります。
部下からの提案に共感できる。
その人が不満や不安を感じていることも理解できる。
でも、会社やチームとしては、その意見をそのまま通すことができない。
そんなとき、
「ここで共感したら、相手の意見に賛成したことになるのでは」
「分かるよ、と言ったあとにNOを伝えたら、矛盾していると思われるのでは」
と迷う管理職の方もいるのではないでしょうか。
でも、私は、
共感と同意は、別のもの
だと思っています。
相手がそう感じたことを理解することと、その意見を採用することは同じではありません。
むしろ、この二つを分けて考えられるようになると、相手を尊重しながら、必要なことを率直に伝えやすくなります。
共感は、「あなたの意見に賛成します」という意味ではない
たとえば、部下から、
「この新しいやり方は手間がかかりすぎるので、以前の方法に戻したいです」
と言われたとします。
上司としては、
「確かに負担は増えている」
と思うかもしれません。
でも、会社全体の運用を考えると、以前の方法に戻すことはできない。
こんなとき、
「そうだね。じゃあ元に戻そう」
と答えるのは「同意」です。
一方で、
「新しい作業に時間がかかって、本来やりたい仕事まで圧迫されているんだね。それは負担に感じるよね」
と返すことは「共感」です。
相手の意見を採用したわけではありません。
ただ、
「あなたがそう感じていることは、受け取っています」
と伝えているのです。
ここを混ぜてしまうと、
「賛成できないから、共感もできない」
となってしまいます。
でも、本当は、
「気持ちは分かる」
と、
「その意見を採用する」
の間には、きちんと距離があります。
意見の奥にある「背景」を聴いてみる
相手の言葉だけを聞いていると、話はすぐに、
「賛成か、反対か」
になってしまいます。
でも、その意見が出てきた背景を聴いてみると、見えるものが変わることがあります。
「どうして、そう思ったの?」
と聞いてみる。
すると、
「入力作業が増えて、ほかの仕事に手が回らない」
「間違えるのが怖い」
「新しい方法にまだ慣れていない」
そんな本音が出てくるかもしれません。
そこで、
「それだけ時間を取られていたら、焦るよね」
「慣れない中で進めるのは不安だったんだね」
と、その気持ちを受け止める。
意見を変えさせる前に、
その人が、なぜそう言いたくなったのかを理解する。
それだけでも、相手は、
「ちゃんと話を聞いてもらえた」
と感じやすくなります。
人は、意見が通らなかったこと以上に、
「話を聞いてもらえなかった」
「最初から否定された」
と感じたときに、心を閉じることがあります。
「でも」ではなく、「その上で」と伝える
共感したあとに、こちらの判断を伝える必要があります。
そのとき、私は「でも」という言葉を少し意識してみてほしいと思っています。
たとえば、
「負担に感じていることは分かったよ。でも、会社の方針だから変えられない」
と言われると、
相手には、
「結局、分かってもらえていない」
と聞こえてしまうことがあります。
そこで、
「その上で」
とつないでみます。
「入力作業に時間がかかって、負担になっていることはよく分かりました。
その上で、今回は情報を一つにまとめて管理するという目的があるので、この方法は続ける必要があります」
こうすると、
「あなたの話は受け取りました」
と、
「私たちはこう判断します」
を分けて伝えることができます。
そして大切なのは、
なぜ、その判断になるのか
も伝えることです。
「決まりだから」
「上が決めたから」
だけではなく、
何を守るための判断なのか。
どんな基準で決めているのか。
そこを丁寧に言葉にすることで、意見が採用されなかったとしても、相手の納得感は変わってきます。
「NO」を伝えても、対話は終わらせなくていい
上司として判断しなければならない以上、すべての意見を採用することはできません。
ときには、
「今回は、その提案は採用できません」
と伝えなければならないこともあります。
でも、「NO」を伝えることと、対話を終わらせることは同じではありません。
判断を伝えたあとに、
「私からの説明について、何か確認したいことはありますか?」
「この方法を続けるうえで、ほかに困っていることはありますか?」
と聞いてみる。
すると、
「提案は通らなかったけれど、自分の声は聞いてもらえた」
という感覚が残ります。
心理的安全性とは、すべての意見が採用される職場をつくることではありません。
違う意見を言っても、
反対意見を出しても、
困っていることを伝えても、
きちんと受け止めてもらえる。
その安心感があることです。
共感と同意を分けると、率直に話せるようになる
相手の気持ちを大切にしたいと思う人ほど、
「NOを言ったら傷つけるのでは」
と迷うことがあります。
でも、相手を尊重することと、何でも受け入れることは同じではありません。
「そう感じたんですね」
と受け止める。
「そう考えた理由も分かりました」
と背景を理解する。
その上で、
「私はこう考えます」
「今回は、この判断で進めます」
と伝える。
そして最後に、
「何か確認したいことはありますか?」
と、もう一度相手に返す。
共感とは、相手に合わせることではありません。
相手の気持ちを受け止めながら、自分の考えも大切にすること。
その両方を持つことが、アサーティブな対話につながります。
相手を尊重すること。
そして、必要なことを率直に伝えること。
そのどちらかを諦めるのではなく、両方を大切にしていく。
それが、信頼関係を壊さずに「NO」を伝えるコミュニケーションなのだと思います。
今日のひとこと
「でも」ではなく、「その上で」。
きょうもいい日になりますね🌹
「共感すると、NOが言えなくなる」。
これは性格ではなく、共感と同意が混ざっているだけです。
アサーティブ・コミュニケーション研修として、御社の現場に合わせて設計しています。
【職場のコミュニケーション研修をご検討の方へ】
管理職の対話力・1on1・心理的安全性をテーマに
企業研修・講演を行っています。
▶︎ 研修のご案内・実績・よくある質問はこちら
▶︎ お問い合わせはこちらまで
「検討段階」「費用感だけ知りたい」で大丈夫です。
◇完全オーダーメイドによる課題に合わせた研修スタイル詳細なヒアリングをもとに、業種・階層・組織課題に合わせて 毎回ゼロから設計→実施します。
株式会社プレシャスK(サービス・お問い合わせ):https://precious-k.com/
【おすすめ記事】
「聴くこと」と「伝えること」について、こちらにも書いています。
・職場の信頼関係は「聴き方」で育つ|対話を生むコミュニケーション
・「どうして、そう思ったの?」を言葉にしないと、話し合いは始まらない
Profile
桐生 純子|コミュニケーショントレーナー
法人を中心に30年・延べ15万人の研修現場に立ってきました。
「伝わらない」の多くは、言葉ではなく姿勢の問題です。
その気づきを、記事を通してお届けしています。
著書『こころのスイッチ』
PS. 公式LINEでは
日常の中で取り入れやすい小さなワークや、
心の整え方についてのコラムも配信しています。

いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ、サポートお願いします!!情報発信の活動費に使わせていただきます。