〜わさび生い立ち記〜 Vol.2 父の仕事と、壊れゆく家族
【読者の皆様へ(閲覧上のご注意)】 本記事には、過去の家庭環境や虐待、精神的なショックに関する描写が含まれています。フラッシュバックや気分を害される恐れのある方は、閲覧をお控えいただくか、体調に合わせてお読みいただくようお願いいたします。
【前回までのあらすじ】
高度経済成長が終わりを迎えた不穏な空気の中で生まれたわさび。ミシンのセールスマンだった父と看護師だった母――当時珍しい共働き夫婦のもとで育つ。父がコーヒーの卸業者として独立すると、母も仕事を辞めて会社を手伝うことに。幼いわさびは母のそばで、時に駄菓子屋に内緒で通いながら、平和な日々を過ごしていた。そんな日々が、ある出来事をきっかけに一変する――。
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父の仕事は順調で、母も一緒に事務所で過ごす穏やかな日々が続いていました。
そんなある日、父の会社を一人の男性が訪ねてきました。
その日を境に、
男性は私たちの家にも頻繁に出入りするようになったのです。
今にして思えば、あの人が現れなければ、
私たち家族は今も幸せなままだったのかもしれません。
やがて父は会社をたたむことになりました。
正確には、あの男性の勧めで大きな会社に吸収されたのです。
ほどなくして、
私たちは誰も知り合いのいない見知らぬ土地へ引っ越しました。
それからというもの、父はほとんど家に戻らなくなりました。
私は言葉も文化も違う見知らぬ土地で、母と二人きり取り残されたのです。
きっと、母は寂しさに押し潰されそうだったのだと思います。
次第に私に対する態度は厳しくなり、
理不尽な暴言や暴力を振るわれるようになりました。
そう、今で言う「虐待」の始まりです。
当時の私はまだ小学校低学年で、
幼い頃から、地方特有の言葉の訛りがありました。
そのため引っ越し先の言葉に上手く馴染めず、
周りから馬鹿にされることもありました。
それでも持ち前の明るさで何とか乗り越え、
学校では毎日楽しく過ごしていました。
けれど、一歩家に帰れば、
母の
激しい叱責
に怯える日々が待っていたのです。
そんなある日のことでした。
洗濯物を畳みながら母に怒鳴られている最中、
ストレスが限界に達したのか、
急に視界が歪んで目の前が真っ暗になりました。
プツリと意識が途切れ、そのまま倒れ込んでしまった私。
どのくらいの時間が経ったのかはわかりません。
次に気がついたとき、
私は静まり返った病院のベッドの上にいました…………
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