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〜わさび生い立ち記〜 Vol.4 ふわふわな天使と、消えたモルモット


【読者の皆様へ(閲覧上のご注意)】 本記事には、過去の家庭環境や虐待、精神的なショックに関する描写が含まれています。フラッシュバックや気分を害される恐れのある方は、閲覧をお控えいただくか、体調に合わせてお読みいただくようお願いいたします。



■【前回までのあらすじ】
原因不明のまま、ガラス張りの病室に入院させられていたわさび。退院後、身体的な暴力は収まったものの、母は学用品を用意しなくなり、昼間から酒に溺れるように。絵の具も習字道具もないまま、わさびは学校に通い続けるが、次第に授業についていくことすら難しくなっていく。そんな折、母の妊娠が発覚。臨月を迎えると、母は小学3年生のわさびを一人残し、さっさと実家へ帰ってしまった――。



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夫婦で何をどう話し合ったのかはわからない。

そもそも話し合ったのだろうか。

それすら危うい。

私はというと、呑気なものである。

母親が居ないというのに。

普通なら大変な騒ぎだし、なんなら、一緒に母の実家に行くはずだ。

ただ、うちの家に、普通はない。

よって、私も普通ではないと思う……

母が実家に帰ってからは、父が朝ごはんの用意をしてくれて、

必要に私にプレッシャーをかけてくる人もいなくなった。

父は、夜も、8時くらいには帰ってきて、ご飯を食べさせてくれた。

なにより、嬉しかったのは、学校で使う、お習字の道具や、絵の具セットを

買ってもらえたことだ。

今でもはっきり覚えている。

初めてお習字の授業を受けられたとき、嬉しかったし、楽しかった。

墨の香り、筆のふわふわ感、何をとっても最高だった。

字は下手だったが(笑)

それと、父と食べた食事も、美味しかった。

マナーは守るけど、それでも、のびのびと楽しく、父と会話をしながら食べ

た食事は最高の日々だった。

私は「いつまでも、母が帰ってこなければいい。」と、本気で思っていた。

しかし、現実は残酷である。

母が実家に行ってから、3か月くらいたった、ある日のこと。

学校から家に帰ると、突然、母がいた。

一瞬、誰だかわからなかった。

3か月ぶりに見る母の顔と、

その腕の中にいる小さな存在に、頭が追いつかなかったのだ。

小さくて、触ったら壊れてしまいそうな、ふわふわな天使を抱いて。

そう、私の弟である。

母は、実家から帰ってからというもの、優しくなった。

たぶん、弟が産まれてくれたおかげだ。

父の転勤で新しい土地に引っ越して、2年目くらいになると、

ご近所さんや、お友達、近所に住む父の上司の奥様とも仲良くなり、

母も忙しそうだけど、楽しそうだった。

あの忌まわしい生活とはおさらばできた。

私自身も、友達のおうちに遊びに行ったり、誕生日パーティーをしたりと、

毎日、楽しかった。

私は、引っ越ししてから、モルモットを飼っていたのだが、

赤ちゃんが生まれて家に来るからと、

モルモットを近所のクリーニング屋さんに預けられてしまっていた。

が、母が、そろそろ大丈夫だからと、

クリーニング屋さんに一緒に返してもらいに行くことになった。

8ヶ月ぶりに会うのだ。

元気にしていただろうか、ちゃんとご飯食べてたかな。

それよりなにより、今日からまた、一緒に暮らせる。

そんな気持ちでワクワクしていた。

ところが、店主さんが言うには、モルモットを散歩に連れて行ったら、

逃げてしまって、もういないと、言うのだ……

私は泣いた。

もう、これ以上涙がでないってくらいに泣いた。

でも、モルモットは戻ってこなかった___


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