ストーリーで学ぶ製造データ分析⑤ パレート図で不良の大物を掴む
はじめに — 今回の到達点
前回の第4回「三位一体KPIの初顔合わせ」では,品質・稼働・原価の3軸をそろえ,最優先で手をつけるべき品番として高圧・中型のGP-B10(不良数・粗利ロスとも1位)が浮かび上がりました.
これで重点的に対策すべき品番が絞れてきます.次に取り掛かることは,「どんな不良でロスが発生しているか」の確認です.
そんな時にまず作成するのが「パレート図」です.パレート図を作成することで,原因となっている項目と全体における割合を視覚的に確認することが可能です.ではさっそくパレート図の作成に移りましょう.まず最初に作成するのは,最終検査で不良となった製品の不良種類を確認しましょう.
最終検査 不良内訳パレート図で現状を押さえる
不良原因の把握
ではまずは最終検査工程における,不良内訳のパレート図を作成してみましょう.

今回の場合は,不良内訳第1位の「漏れ大」が不良内訳の99%を占める結果となりました.その他の騒音大,吐出大,吐出小はそれぞれ1%以下で稀な現象となりました.
にゃんこ精密ポンプ工業(株)では,最終工程における検査で初めてOK/NGが決定します.これは業種によって違和感を覚える方もいらっしゃるかと思います.途中の工程でNG判定が可能であればその場で製品を廃棄,もしくは再加工することで後工程での処理が不要となり良品生産に注力できるからです.しかし,今回の題材では前工程側で発生した特性を後工程側で合わせこみを行うことで合格ラインに乗せる,という運用をしていることとします.
最終検査における不良内訳のパレート図を作成することで,何が原因で不良品が発生しているか判明しました.
次に,この「漏れ大」が一体なぜ発生しているかさらに確認していきます.森から木を見るように徐々に原因をドリルダウンしていきます.
不良原因の把握(GP-B10)

こちらはGP-B10の最終不良原因になります.99.9%が「漏れ大」になっています.
全工程 不良内訳
にゃんこ精密(株)では,各工程の合否を記録しています.すべての工程内NGを種類別に集計して並べたものが図2になります.
全工程で発生している不良の把握

今回のパレート図は,教科書に出てくるような形となりました.確認すると,上位5つの不良で全体の約88%の不良となっていることが分かります.工程5の最終検査における不良「漏れ大」も第4位として入っていますが,その他は組立工程における(歯先)クリアランス系と熱処理工程における硬度系が多いことが分かります
補足:工程別

後工程の不良につながる前工程の不良を追う
「クリアランス大」が最上位の不良として抽出されました.ここで確認すべきことがあります.それは組立工程で「クリアランス大」となってしまったものが後工程である機能検査工程の不良にどの程度効いているか,です.
もし「クリアランス大」となった場合でも機能検査工程で「漏れ大」につながっていないならば,「クリアランス大」を改善したところで最終的な不良率低減につながらない可能性があります.よって,まずはどの程度関係していそうか確認してみましょう.

図4から重要な知見が得られます.工程5の機能検査工程で「漏れ大」不良となり製品ロスとなるものは,工程4において「クリアランス大」不良となっているものが61%も占めています.その他の工程4不良の項目は合計で1%にも届きません.
では,GP-B10ではどのようになっているでしょうか.今度は品番毎に同じ集計表を確認してみましょう.

GP-B10で漏れた1,436本のうち,組立時点でクリアランスが過大だったのはわずか20%でした.全体では61%だったのに,です.つまり残りの80%は,クリアランスが規格内なのに漏れている.高圧・中型のGP-B10は,組立で寸法を合わせ込んで上流のばらつきを吸収する設定なので,クリアランスはめったに規格を外れません.それでも漏れる——B10の漏れの正体は,クリアランスの規格外ではなく,もっと別のところにあります.
これは大事な分かれ道です.「クリアランスを直せ」という工場全体の処方は,平均には効いても,最優先のGP-B10にはほとんど効きません.主役の漏れを止めるには,主役を主役として追いかける必要があります.そこで次回からは,GP-B10一本に絞って,その漏れがどこから来るのかを突き止めていきます.
パレートで分かったこと
出荷を止めた不良を症状で分けると,99.3%が「漏れ」の一点集中だった
「漏れを直せ」では動けない.漏れは結果なので,要因の側からパレートを引き直した
製造中のばらつきは「歯先クリアランス」と「硬度」の2系統で約88%.ただし硬度は大量に出ても出荷を止めておらず,棒の大きさ=優先順位ではない(図2は地図)
工場全体では漏れの61%が組立クリアランス大.ただし相関であって因果とは限らない(交絡)
主役GP-B10では,漏れのうちクリアランス大は20%だけ.B10の漏れはクリアランスでは説明できず,別の出どころがある
現時点でまだ分からないこと
工場全体の「クリアランスを直せ」は,最優先のGP-B10には効かないと分かりました.では,B10の漏れは,いったいどこから来ているのか.クリアランスが規格内でも漏れるということは,もっと上流の,あるいは複数のばらつきが積み重なった結果かもしれません.それが「どの設備の流れ」で生まれているのかは,パレートだけでは見えません.
次は,GP-B10が5つの工程をどう流れ,どの設備を通って漏れに至るのかを,流れの上から追いかけます.
次回予告 — サンキーでGP-B10の流れを追う
次回 第6回「サンキーで工程の流れを可視化」 では,GP-B10が5つの工程をどの設備を通って流れ,どのパスで漏れが出ているのかをサンキー図で描きます.クリアランスでは説明できなかったB10の漏れ.その出どころを,モノの流れの上から探していきます.
改善ラボ
こちらのサイトでも発信しています.
