【連載物語】コリンの話 古い友だちと新しい友だち②
コリンはお茶を飲んで、しばらくの間、考えるような顔でじっとしていた。オリオはそんなコリンの様子を見て、ちょっと肩をすくめた。もし何かコリンから聞きたければ、こちらもじっと待っているのが得策である。
「ねえ、オリオさん、その人間がどこにいたか、聞いてもいい?」
コリンはいった。
「ああ、もちろんさ。ここから十分くらい歩いたところに、ドウドウ川の滝壺があるね? その近くで見たそうだよ」
「じゃあ、ぼく行ってみるよ」
コリンはお茶をすすりながら、これを飲んだらね、すぐ行く、といった。
「何、コリン、もう行くのかい? そんなに気になるのかい。一体そのヒサカっていうひとはだれなんだ?」
「うん、ぼくの友だちでね」
コリンはお茶を飲みほしてしまうと、カウンターの上に小銭を置いてぴょんと椅子から飛びおりた。
「まだ何も食べていないじゃないか。季節のとっておきスイーツがあるのに」
オリオは実際、とても残念そうにした。コリンがよろこぶこと間違いなしだと思ったからだ。
コリンは身をひるがえし、首を高く持ち上げて、オリオに明るい茶色の目を向けた。
「それじゃあ、きっともどってきて食べるよ!」
オリオは、コリンがするりと扉の向こうへ消えるのを見て、またちょっと肩をすくめた。
「ならばうんとおいしく作って待っていよう、小さなかわいい、森の貴公子さん!」
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コリンは、ハルベリーのこの森に、人間がいたと知って、大急ぎでドウドウ川の滝壺へ向かった。耳の奥で、風がびゅんびゅん鳴った。
ほんの一、二分もすると、豊かな川の音が聞こえ始め、コリンは少し速度を落とした。滝壺には、もう三か月は行っていない。コリンは、体が場所を覚えているのに気がつくと、ほっとして、再び飛ぶように走った。
ドウドウ川の滝壺が顔を出すと、コリンは鼻に、細かな水しぶきを感じた。川の水が滝となって、盛大に落ちていくこの音は、どうしてか心をふるわせる。しかし今、コリンの心をふるわせているのは、それだけではなかった。コリンはさっとあたりを見回した。だれかの気配はない。コリンは泣きそうになった。やっぱり、現実というのは、こういうものなのか。コリンは頭をふった。ああ、ぼくは弱っている。こんなことで泣きたくなるなんてさ。
コリンは滝壺のそばへ行って、しばらくの間、その音に耳をかたむけ、水の落ちるのをながめていた。ヒサカもここにいて、この同じ滝を見ていたのかもしれない、とコリンは考えた。小さくも、堂々たる新鮮な滝の流れは、この森に命の音をひびかせているのだ。もしもヒサカも一緒にいたら、ずっとここでこうしていられるのに。
そのとき、コリンは、ふわりとなつかしいにおいに気がついて、後ろをふり返った。そのにおいに、あの、昔のときの感覚がよみがえった。そう、あのヒサカに会ったころの、さびしさ、うれしさ、そして幸せ。
においは、すぐ近くの岩の上に、最も強く残っているようだった。コリンの胸は高鳴った。やっぱり、ヒサカに違いない! ハルベリーの森に、ヒサカがいたのだ。ヒサカは、きっとまた会えるといっていた。それを信じていてよかった。直にヒサカに会えるに違いない。
コリンは岩の上で、なつかしさにひたりながら、どこに行けばヒサカに会えるか頭をめぐらせた。ヒサカは、もしかすると、ぼくを探しにこの森へ来てくれたのかもしれない。だが、ぼくを見つけられなかったヒサカは、人間だから、今はもう森を出て、村へ行ったのかもしれない。ワフル村は、ここよりハルベリー山をくだり、森をほんの少し出た山間のあたりに広がっていた。ここから一番近く、人間がたくさん住んでいるのはそこだった。
コリンはさっそく、ワフル村へ向かうことに決めた。
つづく
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