ナイーブ長女は散歩の時に前置きを言わない
ナイーブ長女シリーズ第2弾
我が家のナイーブ長女は思春期症候群(甘えて不機嫌になる)をパパの前だけで発症します。
そんなナイーブ長女の観測記録。
第1弾
最近、また少し思春期症候群が強くなっている気がしていた。
案の定、今日の朝もご機嫌は斜め。
「今日は何するの!?」
「おなか空いたって言ってるじゃん!」
※初耳である
「なんでパンなの?嫌だ!」
本当は何か他に言いたい事があるのだろう…
でも、なかなか本心を出してくれない、難儀な朝。
窓を開けると、ふっと涼しい風が吹き込んできた。
「これなら行けるかな」
気分転換のため、長女に言う。
「長女ちゃん、パパとゴミ出し行こうか」
「行く!」
ものの数分で終わるゴミ出し。
それでも誘うと、さっきまでの不機嫌は嘘のようにナイーブ長女はいつだって嬉しそうに付いてくる。
「私が持つ!」と、重たいゴミ袋に体を傾けながら歩く姿が愛おしい。
途中で近所の人に会い、「おはようございます」と
私が挨拶すると、長女はすっと私の影に隠れた。
「長女ちゃん、挨拶は?」
「おはょぅ……」
消え入りそうな声。
「小さいのにえらいねぇ」と声をかけられると、
照れて小さな体をさらに小さくし、
完全に私の背中に隠れてしまった。
近所の人とも別れ、ゴミ出しも完了した。
「少し散歩しようか〜」
「うん!する!」
心が不安定になっている時、以前はよくふたりで
散歩に出かけていた。
外の空気が開放的だからだろうか、いつもなら出てこない本心が散歩の時は出やすいように感じていた。
しかし最近は次女が「私も行く」と泣いたり、厳しい暑さが続いたりで、なかなか行けずにいた散歩。
涼しい風を便りにした今日は久しぶりに、
ふたりだけで歩くことにした。
ふたりきりの散歩になると、ナイーブ長女は本当によく喋る。
「あ!ドーナッツ屋さんだ!食べたいな〜」
長女が見つめる先にあったのは、ボートや小型船が並ぶお店。看板には大きく「トーハツ」と書かれている。
「あれはトーハツって書いてあるんだよ」
「あはは!そうだね〜、間違えちゃった!」
ケラケラと笑う長女。
何度も通った道なのに、こんな間違いは初めてだった。
そっか、カタカナが読めるようになったんだな。
そんな小さな成長に、胸の奥が少しじんと温かくなる。
「私ね、中学校に行ったら上手な絵が描きたい」
将来なりたいものがコロコロ変わる長女から、また新しい言葉が飛び出した。
一瞬「意外だな」と思ったけれど、ふと気づく。
以前は「大人になったら」と言っていたのに、
今日は「中学校に行ったら」。
彼女の中で、未来のイメージが少しずつ具体的で
身近なものになってきているのかもしれない。
最近あったこと、目についたもの、そして未来のこと。
楽しそうに喋り続ける長女を見ながら、ふと気づいた。
外の空気が本心を言いやすくしているだけじゃ無い。
家の中にいるとき、娘は必ず「パパ〜」「ねぇ、聞いて〜」と前置きをしてから話し始める。
けれど、散歩のときにはそれがない。
外に出たことで、変わったのは娘だけじゃなく、私の方だったのだ。
家には次女が居て、テレビがあり、家事があり、スマホがある。
私は無意識のうちに、いつも「何かをしながら」長女の話を聞いていたのかもしれない。
ナイーブ長女もそれを分かっているからこそ、
「パパ、今から話すからちゃんと聞いてね!」という合図として、あの言葉を口にしていたのだろう。
これまでどれだけ、私はあの子の話に心を傾けられていただろうか。
少し胸が痛み、反省がこみ上げた。
ちゃんと心を傾けて見て、聞いてあげないと観測者として失格だと感じた。
だからこそ、長女の話を、ちゃんと顔を見て聞く時間を作るために。
やっぱりこれからも、ふたりで散歩に出かけようと思う。
この小さな手を繋いで歩いてくれるのは、
きっとあと数年なのだから。
第3弾
