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記憶の前で ── 入門篇


はじめて訪れた方へ


はじめまして。
このnoteでは、音楽、仕事、日常の違和感、社会や歴史の引っかかりについて書いています。一見ばらばらに見える題材も、私の中では「記憶に残る瞬間」という一点でつながっています。

昔聴いた音楽が、何十年も経って突然よみがえる。仕事の現場で、会場の空気が一瞬だけ変わる。何気ない日常の中に、うまく言葉にできない違和感が残る。そうした瞬間をもう一度たどり、言葉として残すために、このnoteを書いています。


迷ったら、まずこの4本から

どれから読めばいいかわからない方は、まずこの4本から選んでみてください。

1|三つの名曲の背景にいた、ひとりの女性

パティ・ボイドという存在が生んだ名曲たち

「Something」「Layla」「Wonderful Tonight」。
ジョージ・ハリスンとエリック・クラプトンが残した三つの名曲の背景には、パティ・ボイドというひとりの女性がいました。
けれど、これはロックスターに愛された女性の華やかな物語ではありません。そこにあったのは、愛、友情、裏切り、執着、そして、永遠には続かなかった幸福な時間でした。
人に見せられないような感情が音楽へ変わり、やがて当人たちの人生を離れて、世界中の人の記憶になっていく。その残響をたどった一本です。
→「パティ・ボイドという存在が生んだ名曲たち」を読む


2|「悪魔の植物」という物語は、誰がつくったのか

大麻は、いつ「悪魔の植物」になったのか

神社のしめ縄に使われ、赤ん坊の名前にも刻まれていた植物が、なぜ「絶対悪」になったのか。
アメリカでは、大麻を意味する「マリファナ」という言葉が、メキシコ系移民や黒人への差別と結びつけられ、恐怖の物語へ変えられていきました。その規制は、敗戦後の日本にも持ち込まれ、やがて「ダメ。ゼッタイ。」という言葉に姿を変えます。

大麻は、悪いから禁止されたのか。禁止されたから、悪いものになったのか。前編ではアメリカ、後編では日本を舞台に、その順番をたどっています。
→前編「アメリカがつくった恐怖の物語」を読む
→後編「日本に持ち込まれた『ダメ。ゼッタイ。』」を読む


3|高中正義の音の奥にいた、知られざる才能

TAKANAKAの音を支えたキーボード──小林泉美という天才

高中正義の音楽を聴き直していて、そのギターの後ろにあるキーボードの音が気になりました。弾いていたのは、小林泉美という音楽家でした。
小林泉美&フライング・ミミ・バンド、高中正義のバック、「ラムのラブソング」、そしてイギリスへ渡ったあとのクラブミュージックの世界。
ひとりの音楽家を追っていたはずが、1970年代の日本から1990年代のロンドンまで、40年分の音楽を旅することになりました。

大きな光を浴びなくても、いくつもの時代とジャンルに足跡を残した才能について書いた一本です。
→「TAKANAKAの音を支えたキーボード──小林泉美という天才」を読む


4|未来を売っていたブランドが、過去を売り始めた

NIKEは、いつから「欲しい靴」ではなくなったのか

2000年代、私はNIKEのマーケティングに関わっていました。
当時の目的は、靴を一足売ることではありませんでした。中高生たちにNIKEを好きになってもらい、その記憶を足元に残すことでした。
ところが現在、NIKEは直販や限定販売を強める一方で、小売店の棚や、普通に靴を買いたい人との距離を広げてしまったように見えます。未来を感じさせたブランドが、いつの間にか過去の名作とノスタルジーを売るようになった。

かつてNIKEの仕事に携わった経験から、ブランドが人の心から離れていくときに何が起こるのかを考えた一本です。
→「NIKEは、いつから『欲しい靴』ではなくなったのか」を読む


少しだけ自己紹介


浅川幸三です。1963年に北海道で生まれ、青春時代を仙台で過ごしました。

広告やイベントの世界で30年以上、企画や台本をつくり、光や音、空間を組み合わせながら、人の心が動く体験を形にしてきました。

長く仕事を続けるうちに、自分の中に残るのは、成功や結果だけではないと気づきました。本番前の沈黙、会場の空気がふっと変わる瞬間、撤収の夜の息づかい、音楽に救われた時間、歴史やニュースの奥に感じた説明のつかない違和感。
そうした記憶を自分の言葉で残すとともに、これまでの仕事や、現場で考えてきたことを次の仕事へつなげるために、このnoteを書いています。


記憶の前で ― はじめての10本

もう少し読んでみようと思った方へ。

ここからは、仕事、音楽、日常や歴史への視点が伝わる10本を、入口ごとに並べました。今の自分に近いところから、気になる一本を選んでみてください。


Ⅰ|企画と現場の仕事を知りたい方へ

アイデアを、現実の体験へ変えるまで


① NIKE ONE FOOT(2007)

“1メートルを走る”世界最短レースの熱狂

走る距離は、わずか1メートル。それでも参加者はスタートラインに立つと真剣になり、会場には通常のレースとは異なる熱気が生まれました。

短すぎる距離だからこそ、瞬発力や競争心がむき出しになり、競技としての緊張と、どこか馬鹿馬鹿しい笑いが同時に立ち上がります。
制約を弱点にするのではなく、企画の中心に置くことで、どこにもなかった体験へ変えていく。シンプルな発想をイベントとして成立させた仕事の記録です。
→「NIKE ONE FOOT――“1メートルを走る”世界最短レースの熱狂」を読む


② Google「渋谷で空を飛ぶ」

Googleで検索された言葉を風船に変え、その浮力で人を空へ飛ばす。言葉だけを聞けば、ほとんど冗談のような企画です。

しかし、夢のような発想を渋谷の街で実現するには、安全検証、会場選定、風の影響、風船の管理、周辺交通への配慮など、多くの現実的な課題を越えなければなりませんでした。
画面の中にある「検索」という行為を、人が身体で感じる体験へ変換する。デジタルと現実の空間をつないだ仕事について書いています。
→「Google『渋谷で空を飛ぶ』」を読む


③ 銀座100年を照らす光

伝統と未来をデザインした一夜

銀座通連合会の創立100周年を、どのような一夜として表現するか。

帝国ホテルを舞台に、観世宗家の能、松本幸四郎の歌舞伎、泰明小学校の金管バンドを一つの時間の中に配置し、会場までの導線には、銀座の過去から未来へ歩く「時間の回廊」をつくりました。
式典を進行するだけでなく、銀座が積み重ねてきた100年を、光、音、映像、人の動きによって体験へ変えた仕事の記録です。
→「銀座100年を照らす光」を読む


④ 文化摩擦はなくならない。でも設計できる。

銀座マナーブック制作記録①

訪日外国人が急増した2015年、銀座では買い物客と店舗、地域の間に小さな摩擦が生まれ始めていました。

当時は「観光客のマナー」という言葉でまとめられていましたが、問題は観光客でも、日本人でもありませんでした。文化の違い、誤解、店舗の負担が整理されないまま、感情だけが先に動き始めていたのです。
注意文を書く前に、まず問題を分解する。銀座マナーブック制作の出発点となった考え方を記録した、全5回の連載のその第1回です。
→「文化摩擦はなくならない。でも設計できる。」を読む


Ⅱ|音楽を人生の一部として聴いてきた方へ

記憶から、音楽の流れをたどる


⑤ 松田聖子を、ただのアイドルだと思っていた。

当時の私は、松田聖子を華やかなアイドルとしてしか見ていませんでした。しかし、長い時間を経て聴き直すと、その歌声には、作詞家や作曲家がつくった世界を自分のものとして引き受ける強さがあります。明るい曲の奥にある切なさや、声の細かな表情も、若い頃には耳に入っていませんでした。

歌手が変わったのではなく、聴く側の自分が変わったことで、ようやく見えてきたものについて書いた一本です。
→「松田聖子を、ただのアイドルだと思っていた。」を読む


⑥ ビートルズからクラプトン、そしてホテル・カリフォルニアへ

ジャマイカで生まれたスカやレゲエのリズムは、移民とともにロンドンへ渡り、ビートルズの音楽にも入り込んでいきました。
その扉をさらに広げたのが、エリック・クラプトンによる「I Shot the Sheriff」です。レゲエは異文化として説明されるのではなく、ロックの中にある少し重心の違う「揺れ」として受け取られました。

カリブ海からイギリスへ、さらにアメリカ西海岸へ。リズムが土地と人を渡りながら姿を変え、『Hotel California』へ響いていく道をたどった一本です。
→「ビートルズからクラプトン、そしてホテル・カリフォルニアへ」を読む


⑦ J.D. Souther『A Natural History』

若い頃、好きな人にカセットテープを渡し、言葉の代わりに選んだ曲で気持ちを伝えようとしたことがあります。その記憶の中に、J.D.サウザーの音楽がありました。彼は表舞台の少し後ろにいながら、イーグルスやリンダ・ロンシュタットの音楽の芯を支えた人です。

若い頃の歌を年齢を重ねた声で歌い直すとき、思い出は単なる懐かしさではなく、長い時間を引き受けた記録へ変わります。
→「J.D. Souther『A Natural History』」を読む


Ⅲ|日常や歴史の違和感から読みたい方へ

当たり前の手前で、少し立ち止まる文章


⑧ 意味にたどり着けない言葉たち

――だいたい分かったふりをしている

会議室には、アジェンダ、コンセンサス、エビデンスといったカタカナ語が飛び交い、意味を確かめないまま話が進んでいきます。
明治の日本人は、西洋から入ってきた概念を咀嚼し、「社会」「経済」「文化」「哲学」といった新しい日本語をつくりました。それに対して、現代の言葉は、意味に着地しないまま使われることが増えています。

問題はカタカナそのものではありません。意味を決めず、分かったことにしてしまうことで、結局は何も決まらない。その不思議を考えた一本です。
→「意味にたどり着けない言葉たち」を読む


⑨ 文明とは、時間を省略することなのか

築地では寿司屋が減り、見た目の華やかな海鮮丼の店が増えています。寿司には、職人が長い時間をかけて身につける技術が必要でした。しかし海鮮丼
は、材料とマニュアルがあれば、誰が作っても同じような形に整えられます。同じことは、仕立服、写真、デザイン、音楽にも起きています。

技術が消えたのではなく、その技術が育つまで待つ人が減ったのかもしれない。文明とは、積み重ねられた時間を省略していく仕組みなのか。築地の風景から考えた一本です。
→「文明とは、時間を省略することなのか」を読む


⑩ 邪馬台国はなぜ“見つからない”のか

――史書は“答え”ではなく“意図”でできている

邪馬台国はどこにあったのか。その答えを求めるとき、私たちは『魏志倭人伝』を客観的な記録として扱い、『日本書紀』を政治的な史書として疑いがちです。けれど、国家が編纂した歴史書に政治的な意図が含まれるのは、中国の史書も同じです。外から書かれた記録だから正しく、自国で書かれた記録だから信用できないと考えること自体に、偏りはないのでしょうか。

邪馬台国の場所を推理するのではなく、私たちが史書の権威をどのようにつくっているのかを問い直した一本です。
→「邪馬台国はなぜ“見つからない”のか」を読む


私の仕事について


このnoteは、これまで手がけてきた仕事と、現場で考えてきたことを記録し、次の仕事へつなげるための場所でもあります。

広告、イベント、式典、文化プロジェクトなどで、企画、構成、台本、演出、現場制作に携わってきました。主な実績や仕事の経歴は、こちらにまとめています。

これまでの仕事を知りたい方へ

→「私の職務経歴」を読む

企画の方向が定まらない、台本がうまく組み立てられない、プロジェクトの情報を整理できない。そうした段階から、内容を一緒に整理する仕事も行っています。

完成してから依頼するのではなく、まだ何が問題なのかも見えていない段階で、第三者の視点が役立つことがあります。

企画や台本について相談したい方へ

→「まだ形になっていない企画や台本を、一緒に整理します」を読む


この先の歩き方


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

気になった一本から、もう少し同じ世界をたどりたい方のために、このnoteには四つの入口を用意しています。


🎨 仕事場の記憶

広告やイベントの現場で、アイデアがどのように形になり、人の心を動かす体験へ変わっていったのか。
企画の背景だけでなく、会場探し、安全検証、台本、演出、運営など、完成した風景の裏側にあった仕事を記録しています。

仕事場の記憶シリーズ扉へ


🎵 記憶の針を落とす

音楽を入口に、自分の記憶と、その曲が生まれた時代をたどるシリーズです。
名盤や歌手を紹介するだけではなく、音楽がどこから生まれ、どのように人から人へ渡り、長い時間を経て別の意味を持つようになったのかを書いています。

記憶の針を落とす【総合】扉へ


👁 世の中おかしい

歴史や社会の中で、いつの間にか当たり前になっている説明を、もう一度立ち止まって見直すシリーズです。
通説を否定することが目的ではありません。その説明はどこから生まれ、誰の視点で語られてきたのかを、自分なりに確かめています。

世の中おかしいシリーズ扉へ


🌙 音と記憶の間に――ひとりごとの記録

日常の中でふと引っかかった言葉や、心に残った小さな違和感から書き始めるシリーズです。
身の回りの出来事を扱った短い文章もあれば、そこから文化や社会、歴史へと考えが広がっていく記事もあります。その日の気分に近い題名から、自由に読んでみてください。

「音と記憶の間に――ひとりごとの記録」マガジンへ


記憶の前で

音楽、仕事、日常、歴史。扱う題材は異なっていても、私が見つめているものは、それほど違いません。

なぜ、その音楽は長く心に残ったのか。
なぜ、その体験は人の表情を変えたのか。
なぜ、その言葉や出来事に違和感を覚えたのか。

記憶に残る瞬間には、そこに至る理由と構造があります。
このnoteでは、それを自分の経験や記憶と照らし合わせながら、できるだけ丁寧にたどっていきます。

どこかの一文が、あなた自身の記憶や仕事とつながったなら、気になった記事をもう一本、読んでみてください。

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浅川幸三 共感でも、違和感でも。 何かが残ったなら、それで本望です。 サポートは次の一行のために。