【気になるコーゾー外食ニュース#104】12月開業「中野アトレ」全73店舗公開。2011年に中野の路地裏からスタートした「マグロマート」新業態が駅ビルに登場するインパクト
〈ニュースのポイント〉
① 【12月9日グランドオープン】: JR中野駅直結の新駅ビル「アトレ中野」全73店舗が一挙公開。西側新改札や南北自由通路の開通と連動し、駅周辺の回遊動線が激変する。
② 【マグロマート新業態と新生・京鼎樓の強力布陣】: 中野の路地裏からスタートした「マグロマート(株式会社BOUT)」の新業態に加え、大和PIキャピタル傘下で国内強化・東南アジア進出へ舵を切った「JINDINROU(京鼎樓)」を配した強固なリーシング。屋上BBQも登場。
③ 【2005年恵比寿・2011年中野取材の交差点】: 2005年の京鼎樓日本1号店、2011年のマグロマート創業期から現場を追ってきた筆者の取材体験から読み解く、インディーズ魂とメガインフラの融合。
■ 15年前、中野の路地裏で目撃した「マグロマート」尾坂亮氏の「街づくり」の原点
私には、今回のマグロマートの駅ビル進出に対して、ひとつの大きな感慨がある。
今を遡ること15年前の2011年、私フードスタジアムの現場取材で中野富士見町の目立たない路地裏に生まれた「マグロマート」を訪れた際、その圧倒的な熱量に目を見張った。
「シンプルに魚本来の味を味わい楽しむ、原点回帰の魚業態」の筆頭として、希少部位を刺身や炙りで喰わせる強烈な商品力は、不利な立地すら軽々と跳ね返し、瞬く間に全国から客を呼ぶ大繁盛店へと駆け上がっていった。
さらに2016年、尾坂氏が東中野に2店舗目のネオ酒場「東灯(とうとう)」を出店した際、私の取材に対して語った言葉が、今でも鮮烈に記憶に残っている。
「飲食店を東京でチェーン展開していくよりも、街づくりに興味がある。その街と人が元気を取り戻すきっかけとなるような店を作りたい」
彼らは資本の論理で無機質に店舗数を増やすチェーン企業ではない。その街に寄り添い、愛され、なくてはならないコミュニティの場を「手作り」することに命を懸ける、純度の高いインディーズ魂を持った集団なのだ。
そのチームが「株式会社BOUT」へと進化を遂げ、満を持して新業態「鮪々 Sibisibi マグロマート」を駅ビルのド真ん中へとドロップする。路地裏のカルチャーが駅ビルの核へと昇華する、ひとつの到達点と言える。
■ 2005年恵比寿1号店の取材から20余年。大和PI傘下で「攻め」へ転じた京鼎樓の進化
そして、今回のアトレ中野のリーシングにおいて、マグロマートと並んでもう一つ注目したいのが台湾発の本格小籠包専門店「JINDINROU(京鼎樓)」の参戦である。
京鼎樓については、日本1号店として2005年3月にオープンした「恵比寿本店」の立ち上げ直後、私は現場へ足を運んだ記憶がある。当時、まだ日本に少なかった「スタイリッシュに楽しむ本格小籠包レストラン」というフォーマットの誕生に大きな衝撃を受けたことを今でも覚えている。
その京鼎樓を運営するJIN DIN ROU社は、新たな転換期を迎えている。株主がグロースパートナーズから大和PIキャピタル傘下の特別目的会社(DPIC J1)へと交代。これまで培ったオペレーション基盤と高いブランド力を維持しながら、さらなる国内展開の加速と東南アジアを中心としたグローバル展開を見据えた強固なバックボーンを手に入れた。
JR東日本による品川区広町の「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」への出店に続き、間髪入れずにこの「アトレ中野」へと連続投入する動きは、新体制下で「攻めの出店ドライブ」が本格始動した明確な証拠だ。
成城石井やWithGreenといった洗練された上質インフラが並ぶ中、京鼎樓の本格点心場が放つ湯気とライブ感は、タワマン住民やニューファミリー層の胃袋を確実にロックする強力な武器となる。
■ コーゾーの視点:牙を抜かれるな。巨大インフラの表舞台でローカルスターはどう化けるか
商業施設に入居する際、最も危惧されるのは、綺麗に整えられた箱に収まることでストリートが持っていた「牙」や「カオスな面白さ」が去勢されてしまうことだ。
だが、「マグロマート」はむしろ、この巨大なプラットフォームを逆手に取り、自分たちの持つ思想を、駅を利用する何万人もの人々の日常へ浸透させていくはずだ。
地元のソウルフード、ストリートブランドをビルの核に据えたアトレ中野。同じアトレグループの大井町トラックスに地元の立ち飲み人気店「8」を誘致したのに似ている。こうした飲食フロアの成否は、「駅ビルとローカルコンテンツの共生のあり方」を占う上で、極めて重要な試金石となるだろう。
(佐藤こうぞう)
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