「ツキイチ」を「シューイチ」にしたら、成績が半分になった
こんにちは、クロンです。インフラエンジニアの管理職をしながら、AI(Claude Code)と一緒に日本株のスイングBotを自作しています。プログラミングもデイトレも素人です。
これは連載の4本目です。前回まではこちら↓
「月1%」が「月0.6%」に。バックテストの数字を26年でならしたら
バックテストの次は「フォワードテスト」。口座ゼロでも今日から始められる
損切りもショートも効かない。効いたのは地味な「分散」だけだった
僕のBotは「毎月1回、銘柄を入れ替える」設計です。うちでは ツキイチ と呼んでます。今日は、これを「シューイチ(毎週1回)」に速めたらどうなるか試しました。
結果は、年利が半分、下げはむしろ深く。「こまめに動いたほうが機敏で得なはず」という思い込みを、データにきれいに裏切られました。この記事で分かるのは、次の2つです。
売買の頻度を上げると、なぜ成績が落ちるのか(手数料の話じゃない)
「ゆっくり回す」こと自体が、実は下手な動きを防ぐフィルタになっていること
まず、ツキイチって?
4本目から読む人のために、ざっくりだけ。
僕のBotの戦略は、毎月1回、その時いちばん"勢い"のある大型株に入れ替えるだけ。個別の業績や割安さは見ません。過去の値動きの強さ(モメンタム=勢い)だけで機械的に決めます。月イチで入れ替えるから「ツキイチ」。
これに「相場全体が崩れたら株を減らして現金で待つ」安全弁と、「金を少し混ぜておく」分散がついています。詳しくは前回まで。
「毎週入れ替えたら、もっと儲かるのでは?」という思いつき
ツキイチは月1回しか動きません。相場が動いても、次の月末まで待ちます。
これ、待ってる間がもったいなく感じるんだよね。「もっとこまめに見て、勢いが変わった瞬間に乗り換えたほうが機敏で得なんじゃないか」と。
というわけで、入れ替え頻度だけを変えて試しました。他の条件(勢いの測り方、持つ銘柄数、安全弁、金の分散)は全部そのまま。月イチ → 隔週 → 週イチ、の3パターンです。
使ったのはバックテスト(=過去のデータで作戦を試すこと)。日本の大型株、過去およそ21年分で回しています。
やってみた:月イチ → 隔週 → 週イチ
結果はこうなりました(すべて過去データ上の数字です。将来を保証するものではありません)。
入れ替え頻度 年利 最大の落ち込み リスク効率 月イチ(現行) +10% -29% 0.72 隔週 +5% -36% 0.41 週イチ +5% -37% 0.41
年利がほぼ半分(+10% → +5%)。
最大の落ち込み(=いちばん資産が減った時の下げ幅)は、浅くなるどころか 深くなった(-29% → -37%。条件によっては -46%くらいまで)。
「リスク効率」(=取ったリスクに見合うリターンが出ているか。数字が大きいほど良い)は 0.72 から 0.41 に崩れました。
期間を前半・後半に割っても、どちらも週イチのほうが悪い。つまり「たまたま最近が合わなかった」でもない。
機敏に動いたら、機敏に負けました。
手数料のせいだと思った → ゼロで回しても負けた
最初は「そりゃ週イチにしたら売買回数が増えて、手数料で削られるよな」と思っていました。実際、売買回数は月イチの約1,275回に対して、週イチは約5,520回(21年で)。4倍以上です。
じゃあ手数料を犯人にできるか。手数料をゼロにして、もう一度回してみました。
入れ替え頻度 手数料あり 年利 手数料ゼロ 年利 月イチ +10% +12% 週イチ +5% +7.6%
手数料ゼロでも、週イチは +7.6%(月イチのゼロ手数料 +12%)に大負け。
つまり、手数料の問題じゃないんだよね。速く回すこと自体が、成績を落としている。
(ちなみに、検証は「手数料あり」と「手数料なし」の両方で回すと、負けた原因が「コスト」なのか「仕組み」なのか切り分けられます。これは今回いちばんの収穫でした。)
なぜ速いとダメなのか:往復ビンタ
僕の解釈はこうです。
勢いのランキングは、半年くらいの値上がり率で作っています。この「本物の順位」は、1週間くらいではほとんど変わりません。
でも、直近の値動きには"ノイズ"がある。たまたま今週たくさん買われた、たまたま今週売られた、という短期のブレです。週イチで見ると、このノイズで順位がコロコロ入れ替わります。
すると何が起きるか。
たまたま先週弱かった銘柄を売る → その直後に戻る
たまたま先週強かった銘柄を買う → その直後にしぼむ
買った直後に下げて、売った直後に上げる。これを頻度を上げたぶん、もっと食らう。往復ビンタです。
月1回しか入れ替えないと、この週次のノイズは自然にならされます。「ゆっくり回す」こと自体が、下手なタイミングで飛びつくのを防ぐフィルタになっていたわけです。
「ツキイチ」の"ツキ"は伊達じゃなかった
名前を「ツキイチ」にしたのは、正直なんとなくでした。でも検証してみたら、"ツキ(月)"にちゃんと意味があった。
頻度を上げる=反応が速くなる。ここまでは直感どおり。
でも同時に、ノイズも拾いやすくなる。反応の速さとノイズの増幅はセットなんです。
半年くらいの勢いを見る戦略には、月1回くらいの「間」がちょうどよかった。
ついでに言うと、いちばん悪かったのは「勢いをもっと短い期間で測る(速い信号)× 週イチで入れ替える(速い回転)」の組み合わせでした。速い信号と速い回転はノイズを増幅し合います。
今日の教訓と、次にやること
頻度を上げる=賢くなる、ではない。反応の速さとノイズの増幅は、セットでついてくる。
一般にも「リバランス(=資産配分の入れ替え)はやりすぎると逆効果」「年1回くらいが目安」と言われます(参考:マネーポストWEB)。ただ、そこでの説明はたいてい「手数料がかさむから」。今回、僕のデータでは 手数料ゼロでも負けた ので、理由はもう一段深いところにあります。仕組みとして、速い回転がシグナルを壊している。
ライブの運用は、これまでどおり月イチのまま。9月末の入れ替えも予定どおりやります。
次は、米国株バージョンの検証で「生存バイアス」(=今生き残っている勝ち組だけを見ていると、成績が実際より良く見える問題)をどう外すか、をやる予定です。
同じように「こまめに売買したほうが得なのでは」と思っている人へ。答えは「自分の記録で、頻度を変えて試してみる」です。しかも「手数料あり」と「手数料なし」の両方で回すと、負けた理由まで見えます。地味だけど、これが一番はっきりします。
※この記事は僕の開発記録です。特定の銘柄や手法をすすめるものではありません。投資は自己判断で。
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