「パクってなくても即アウト」の最強権利。特許法が認める20年間の独占ライセンスに、AIが絶対に参戦できない理由
特許権。
発明家以外にはとんと縁がなさげなこの言葉。
しかし、日々開発と改良を繰り返している製造業においては、一番身近な権利なんだと知りました。
ざっくり言うと著作権と同じく「人間の頭の中から生まれたもの」を守るための法律ではあるんです。
ただ、著作権が「作った瞬間」に自動で宿るお守りで、あくまでも「表現」そのものを守り「技術やアイデア」は守らないのに対し、特許権は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」――つまり「世の中を便利にする新しい仕組みや技術・モノ」を守る権利です。
著作権が「私だけの表現を大切にしていきたいの」という個人の願いを国家が優しく見守るスタンスなのに対して、特許権は国とのビジネスライクな「取引」で得る最強の独占ライセンス。
発明者が「俺の技術だ。誰にも渡さん!」と囲い込もうとするところを、国家が「そんなことしたら社会の技術が発達せんやろがい! 原則として出願から20年間はお前が独占して好きに値付けしてええから、その代わり技術の設計図をどどーんとみんなに一般公開したらんかい!」と、ギブアンドテイクを迫る雰囲気なのであります。
特許は厳しい申請制
著作権は人間が作った瞬間に自動発生しますが、特許権はそうはいきません。
特許庁への申請・審査・登録という高いハードルを越えなければいけませんし、「世界初であること(新規性)」「簡単には思いつかないこと(進歩性)」という厳しい要件も求められます。
この話の中で瀬織津媛が「社会が成熟してくると偉業が眠る未開の大地は踏み荒らされ、先人の足跡が残らぬ業績はそうそうなくなってくる。ちっとやそっとでは崇拝されなくなる」と英雄論を語ってましたが、特許も似たようなもんではないでしょうか。
あんまり「これ素敵! 欲しい!」って思うような家電とか、見かけなくなりました。数多の技術が社会に最適化されて、完成されてきた感があります。
有体に言うとアイデアが出来切ってんじゃないかな、というね。
いや、AIという技術が特許対象そのものの発明としてありましたか。
だからこそ、登録できたときの特許権はめちゃくちゃ強い効力を発揮します。
著作権の場合、いくら見た目がそっくりな作品であっても、地球の裏側の人が「相手の作品を全く知らずに、偶然自分で思いついて作った(依拠性がない)」のであれば、基本的には侵害になりません。
しかし、特許権は違います。
他者がこちらの特許の存在をこれっぽっちも知らず、独自に同じ技術を発明したとしても、それを商売に使った時点で「特許権侵害」として一発アウトになります。
「パクったかどうか」の動機は一切無関係。
先に登録したもん勝ちの、絶対的な独占権なのです。
恐! そして強!
AI時代の特許権にAIは参戦できるのか?
こうなりますと、気になるのはAIの存在です。
人間の発想による「新規性」や「進歩性」のハードルが高くなっている今、短時間で大量のアイデアを吐き出せるAIを「発明者」にできれば最強ではないか、と。
アウトです。
著作権と同じ扱いになります。 「特許法上の『発明者』は自然人(人間に限る)」という世界共通のルールの元、AIを発明者として特許を申請する試みは、日本・米国・欧州のすべてで却下されているのが現状です(知財界隈では「DABUS事件」として超有名なお話。これはまた別の機会に)。
つまり、AIが完全に自律してポン出ししたアイデアは、誰の権利でもない「パブリックドメイン(みんなの畑)」になってしまいます。
それでも企業がそのアイデアをビジネスで独占したい(囲い込みたい)なら、ルートは2つしかありません。
AIの出した突飛な答えをヒントに、人間が実験や改良を重ねて「人間の発明」として特許を取り直すか。
あるいは一切外に漏らさないよう社内の「営業秘密(ノウハウ)」としてガチガチに鍵をかけて隠し通すか。
SNSのポストでは「著作権」ばかりが話題になりがちですが、あっちの法律を締めればこっちの法律ですり抜け……と、知財の世界はまるで地詰めの陣取り合戦のようです。
だからこそ難しく、術策に満ちていて最高に面白いんですよね。
※本記事は知的財産検定3級の学習記録をもとに、知的財産権にかかわる条文と各社の調査報告書を参照してまとめたものです。
法的な判断・アドバイスを提供するものではありません。
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