第25話 AIが評価を代行⁉ルーブリックとAIで生徒のやる気を引き出す探究学習実践報告
1 要点
AIに評価基準(ルーブリック)を読み込ませ、生徒の成果物を客観的に評価させる新しい試みを紹介する。
これにより教員の評価時間が大幅に削減され、支援が必要な生徒への個別指導の時間を生み出すことができる。成長プロセスが見えにくくなる課題はあるものの、発達にばらつきのある生徒や多言語対応の生徒のやる気向上など、得られる教育効果は非常に大きい。

2 きっかけと目的
先日、ある法人が主催するAIのイベントに参加した。その中で、私がリスペクトしている前多昌顕先生が総合的な探究の時間でAIを活用している実践発表を聞いた。前多先生は、ルーブリックと探究のテーマ設定などでAIを使用しているとのことだった。
そこで、私も普段課題に感じていることやこれまで実践してきたことを活用して探究学習でAIを活用できないかと考えトライしてみることにした。
3 本文:検証内容
【Gemを使った評価システムとは?】

仕組みは至ってシンプルである。
・あらかじめ決めておいたルーブリック(評価基準)をGemに読み込ませる。
・生徒が提出した成果物を、Gemに客観的に評価(A〜D判定)させる。
・評価だけでなく、どこをどのように直せば良くなるかのアドバイスも同時に出力させる。
生徒は自分の好きなタイミングで、何度でもAIからアドバイスをもらうことができるのだ。
【Gemを公開します】
〇今回は「科学と人間生活」の「物質の科学」中で、プラスチック×SDGsをテーマに探究学習を行いました。Gem内の知識には、あらかじめ準備したルーブリックを貼りました。お使いになるときは、ご自分が使用しているルーブリックに変更してください。
〇カスタムプロンプトには、ルーブリックの評価項目②および③についてのみ評価するよう設定してあります。ご注意ください。
〇共有Gemに任意のプロンプトを入れた後、コピーしてお使いください。Geminiのサイドバーにある「Gem」を選び、一番下に行くと「共有アイテム」欄にありますのでコピーできます。

【教員側のメリット:本当に必要な場所へ時間を注げる】
このシステムを導入して一番驚いたのは、全員の成果物をチェック&アドバイスする手間が劇的に減ったことだ。これまで個別の成果物を読み、評価・アドバイスしていた時間がまるまる浮いてくることになる。その時間を、例えばPCの操作補助、進度が遅れている生徒、日本語のサポートが必要な生徒に対する個別対応に充てることができた。
結果として、クラス全体の学びの底上げにつながり、取りこぼしを防ぐことができるのだ。これは大人数のクラスでも、手厚い支援が必要な少人数のクラスでも、同じように大きな効果を発揮する。
【教員側のデメリット:見えない成長の足跡】
一方で、少し寂しいジレンマも浮かび上がってきた。
生徒が自発的にAIとやり取りをして、どんどん成果物を修正して仕上げていってしまう。
そのため、私たち教員が知らない間に作品が完成してしまい、生徒の「試行錯誤するプロセス」が見えにくくなるのだ。
しかし、冷静に考えてみれば、教員ひとりで40人全員の思考プロセスをリアルタイムで追いかけるのは不可能に近い。
そうであれば、最初のハードルを下げるための励ましや軌道修正はAIに任せてしまう、と割り切るのも合理的かもしれない。
【生徒側のメリット・デメリット】
生徒側の様子も、観察してみると非常に興味深い。
・デメリット:最初はAIの操作に慣れるまで時間がかかったり、没頭しすぎてしまったりする。
・メリット:客観的な基準でAIから高評価をもらうと、素直に喜び、高評価でなくとも悔しがって挑戦するモチベーションにつながる。また、他生徒の対応している教師を待つ必要もなく、自分のタイミングで評価をもらえる。自ら教師に声をかけづらい生徒でも遠慮することなく評価をもらえる。
【今後の展望】
現在はまだ部分的な活用だが、そのうち「完全デジタル評価システム」を構築したいと考えている。
Googleフォームやドキュメント、スライドなど、複数のツールをすべてデジタルデータとして一括で管理する。
それらを単元のルーブリックと照らし合わせて一括で評価し、成績の算出まで自動で行える仕組みだ。
4 まとめ
今回の「実験」を通して、AIは単なる省力化ツールではなく、我々教師が本来行うべき「個別最適な学び」の時間を創り出す触媒だと確信した。
すべてをAIに委ねるのではなく、どこを教員の目で見て、どこをAIに任せるか。
これからは、そんな「教師のこだわり」や「さじ加減」がより大切になっていくだろう。
デジタルに関しては新米教師のような気持ちですので、もし詳しい先生がいらっしゃいましたら、ぜひアドバイスをお願いします。
また、”スキ”や応援のコメントもいただけると、クマのように喜びます。
5 追記
続編です。
Gemではなく、NotebookLMでも試してみました。ご一読いただければ幸いです。
