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「貯金はある。でも使っていいのか分からない」を計算で終わらせた話。【Notion×Claude】


創薬・ライフサイエンス系の研究者です。

これまで、論文収集・筋トレ・旅行提案の仕組みを作った話を書いてきました。今回はお金です。

おいおい、なんで研究者が家計の話をするのか、と思われた方。少しだけお付き合いください。

批判覚悟でお伝えすると、研究者ってお金のことを考える場面が非常に多いと思います。理系大学院の学費が高い問題やポスドク時代の安月給問題、留学のための費用捻出に研究費の管理、、、

私自身こういった苦労があったからこそ、お金に誰よりも執着して、将来これでお金に困らないだろうかと幾度となく考えてきました。

あらゆる資産シミュレーターを使って“今いくいら貯めないといけないのか””資産運用に回す金額はどの程度がいいのだろうか”こういった計算を繰り返してきました。

そんな中でふとこう思いました。

- 私はお金を貯めることばかりに執着して、今を最大限楽しめているだろうか
-世の中にあるシミュレーターはいくら貯めるかばかりにフォーカスして、やりたいことをやる意欲を低下させているのではないだろうか

そこで、「いくら貯まるか」ではなく「使っても大丈夫か」を出すシミュレーターを自分で作りました。ちなみに私はプログラミングが専門ではありません。普段はウェットの実験をしています。

余談ですが、これは研究費の管理ツールにも応用できます。 予算が決まっていて、やりたいことがそれより多くて、どこで足りなくなるか見えていない。構造が同じでした。その話は別途書きたいと思います。

この記事では、なぜ作ったのかだけを書きたいと思います。中身の話は次回以降です。


研究では、実験の前に計算する

そう思ったとき、我ながら情けなくなりました。

私の仕事では、実験を始める前にシミュレーションを回すことがあります。条件を全部は試せないからです。時間も、試薬も、動物も有限です。だから先に計算して、どのあたりに解がありそうか、どこから先は無駄になるかの見当をつけてから、手を動かします。

学生のころから、そう教わってきました。やってみないと分かりません、では実験計画として通らない。 上司にも後輩にも、さんざんそう言ってきた側です。

なのに自分の人生では、それをやっていませんでした。

貯める側はあれだけ計算したのに、「使う」側を一度も計算していなかった。

旅行に行きたいと思うたび、頭の中に「でも将来大丈夫か」がよぎって、そこで止まる。根拠はありません。ただ、なんとなく怖い。 その処理を、何年も続けていました。

人には条件を振れと言っておいて、自分は片側しか見ていなかったわけです。研究でこれをやったら、間違いなく上司から呼び出されて説教ですね。笑


「いくら貯まるか」は分かる。でも知りたいのはそこじゃない

私が使ってきたシミュレーターは、どれもこう答えてきます。

65歳時点の予想資産:〇〇万円

これを見て、私はいつも同じところで止まっていました。

で、旅行に行っていいんですか。

貯まる金額が分かっても、使っていいかどうかは分からないのです。むしろ数字を見るたびに、使うのが怖くなる。減る方向の情報しか出てこないからです。

我が家には、やりたいことのリストがありました。家族旅行、日本一周、海外旅行、リフォーム、学び直し。

書き出したまま、何年も止まっていました。

たまに思い出しては開いて、「まだ早いかな」と思って閉じる。それを繰り返していました。自分や家族が健康で動ける時間には期限があるのに、その期限のほうが先に過ぎていく感覚だけがありました。

止まっていた理由は、お金がなかったからではありません。いくらなら使っていいのかが分からなかったからです。

判断する材料がないから、判断を先送りする。

情報は足りていました。貯金額も、収入も、分かっています。足りていなかったのは、それを判断できる形にしたものでした。

例えば、以前に旅行プランは提案してくれる仕組みを紹介しました。
あとは実行しても問題ないのか?その背中をそっと押してくれる仕組みが必要でした。


欲しかったのは予測ではなく、境界線

ここが、既存のツールと決定的に違うところでした。

私が知りたかったのは「将来いくらになるか」という予測ではありません。どこまでならやっていいかという境界線です。

研究でいえば、こういうことです。

  • 予測 → この条件で回すと収率は何%か

  • 境界線 → どこまで濃度を上げたら系が壊れるか

実験で本当に知りたいのは、たいてい後者です。壊れる手前が分かれば、その内側は安心して攻められます。薬の製造プロセスもたいていそうやって設計します。

家計もそうでした。破綻点さえ分かれば、その手前は使っていい。

だから、「いくら貯まるか」ではなく**「使っても大丈夫か」**を出すものを作りました。


実際に計算するとこうなります

自分の数字だと生々しいので、架空の人で実演します。35歳・年収480万・現在資産700万という設定です。

■ 何もしない場合

やりたいことを1つもやらず、ただ働いて貯めた場合。

90歳時点:2億6,725万円

桁は間違えていません。運用込みで、これだけ残ります。

ただ、この数字にはあまり意味がありません。使わなければ残るのは当たり前だからです。既存のツールが出してくるのは、だいたいこの数字です。

■ やりたいこと5つを入れる

家族旅行、日本一周、海外旅行、リフォーム、学び直し。5つ全部にチェックを入れます。

90歳時点:3,094万円 — まだ足りる

2億6,725万から3,094万まで減りました。でも、0にはなっていません。

つまりこの5つは、やっても大丈夫だったということです。

……何年も止めていたリストが、計算してみたら全部通りました。

正直に言うと、この画面を見たとき、少し呆然としました。

我慢する必要は、最初からなかったわけです。 足りないから止めていたのではなく、足りるかどうかを確かめないまま止めていた。何年も。

6つ目に、憧れの車を足す

最後にもう1つ、車を足します。

資産寿命40歳 — 実現不可

赤いアラートが出ます。40歳で資産が尽きる、つまり5年後に破綻します。

3,094万円あったはずの余裕が、1つ足しただけで消えました。


この落差が、欲しかったものでした

大事なのは、車が買えなかったことではありません。

「5つはOKで、6つ目でダメになる」という境界線が見えたことです。

以前の私は、こうでした。

  • お金が不安 → 全部我慢する

  • 何が問題なのか分からない → ずっと不安なまま

いまはこうです。

  • 5つはやっていい(計算した)

  • 車は今は無理。でも45歳ならいける

  • だから、いま我慢するのは車だけ

我慢する対象が、6分の6から6分の1になりました。

不安が消えたわけではありません。不安の輪郭がはっきりしただけです。

でも、これが思った以上に効きました。「なんとなく怖い」は反論のしようがありませんが、「車だけ無理」なら付き合い方があります。45歳まで待つのか、グレードを下げるのか、別の何かを諦めるのか。選べる問題に変わりました。

研究でも同じで、「なんかうまくいかない」は手の打ちようがありませんが、「この工程で落ちている」まで絞れれば、あとは潰すだけです。あれと同じ感覚でした。

そして何より、残りの5つを、後ろめたさなしにやっていいということです。これが一番大きかった。


作るときに最初に決めた2つのこと

作り方の詳細は次回以降に譲りますが、思想の部分だけ先に書いておきます。ここが決まっていないと、何を作っても同じものになりません。

1. 「使っていい」で終わらせる

家計のツールは、放っておくと「このままでは足りません」という方向に寄ります。そのほうがインパクトが出るからです。

でも、それでは何も変わりません。私が欲しかったのは危機感ではなく、使っていいという確認でした。

諦めさせる材料ではなく、判断材料として出す。

2. 判定はツールに任せない

線が0に触れるかどうかは計算しますが、「だからやめろ」とは言いません。

やるかどうかを決めるのは本人です。破綻すると分かったうえで買うなら、それも本人の判断です。

論文の重要度をAIに判定させなかったときと、筋トレで実際にやるかを自分で決めたときと、旅行の日程を自分で入れたときと、同じ線引きです。計算は渡す。決定は渡さない。

読み取り専用の公開デモがあります。ログイン不要です。

https://life-spending-demo.vercel.app


おわりに


貯金額を見ても、使っていいかは分かりません。

必要だったのは、貯める計算ではなく、使った先の計算でした。

実験の前に計算するのと同じことを、自分の人生でやってみただけです。やってみたら、何年も止まっていたリストが動きました。

我慢していた期間に、意味はありませんでした。足りていたのに、確かめていなかっただけです。お金に執着してきたつもりで、実は向き合っていなかったのだと思います。向き合うというのは、不安がることではなく、計算することでした。

そして家計で作ったものが、そのまま研究費に返せそうだと気づきました。仕事のやり方を私生活に持ち込んだら、私生活で作ったものが仕事に戻ってきた。 これは想定していませんでした。

これこそが前にも述べた異分野を学ぶことの意義だと考えています。

そういうわけで、直接研究に関係しないものも含めて今後も発信していきます。まずは「こういうものを作っている人間がいる」というところから記憶に残れば幸いです。

冒頭に書いたとおり、今回は「なぜ作ったか」だけです。中身は一度に書き切れる量ではないので、今後に綴っていきます。

興味を持ってくださった方はぜひフォローお願いします。

今回作成したツールのデモ版はこちら
https://life-spending-demo.vercel.app/


創薬・ライフサイエンス系の研究者です。

AI時代に研究者がどう生き残るかを考えながら、ClaudeとNotionを使った効率化について書いています。

同じことで悩んでいる方に届けば嬉しいです。


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