アトミック物語:第5話 原子核の秘密――陽子と中性子
原子は、単なる小さな粒ではなかった。その内部には、想像を超えるほど強い力が存在していたのです。
原子は、スカスカだった。その中心には、極めて小さな「原子核」がある。
ラザフォードの実験によって、その事実が明らかになりました。

しかし――新しい謎が生まれます。原子核はいったい、何からできているのでしょうか。まず姿を現したのは、陽子。水素原子の中心にある、正の電気を持った粒子です。

1917年、ラザフォードは、窒素原子にアルファ粒子を衝突させる実験を行いました。すると、窒素から水素の原子核が飛び出してくることがありました。ラザフォードは、水素の原子核がさまざまな原子核を構成する基本的な粒子だと考え、それを「陽子」と呼びました。
原子の種類を決めているのも、この陽子の数です。陽子が1個なら、水素。2個なら、ヘリウム。6個なら、炭素。8個なら、酸素。つまり、原子番号とは、原子核にある陽子の数だったのです。

しかし、ここで奇妙な問題がありました。原子核の質量を調べると、陽子だけでは説明できない。たとえばヘリウムの原子核には、陽子が2個あります。ところが、その質量は陽子2個分だけでは足りません。

「原子核の中には、もう一つ何かがあるのではないか?」
この謎を解いたのが、イギリスの物理学者ジェームズ・チャドウィックでした。1932年。チャドウィックは、原子核の中に、電気を持たない粒子が存在することを突き止めます。その名は、中性子。陽子とほぼ同じ質量を持ちながら、電気的には中性。これによって、原子核の姿が一気に明らかになりました。
原子核は、陽子と中性子からできている。そして、その周囲を電子が取り巻いている。原子という世界は、まるで小さな宇宙のような構造を持っていたのです。

ところが、ここでさらに不思議なことが起こります。同じ元素なのに、原子の重さが違うものが存在する。たとえば炭素には、炭素12や炭素13、炭素14があります。陽子の数は同じ。だから、すべて「炭素」です。しかし、中性子の数が違う。このような原子を、同位体と呼びます。

そして、この違いは、原子核の安定性にも関係していました。原子核の中では、陽子同士が互いに反発しています。それなのに、陽子と中性子は、非常に強い力によって結びついている。その力こそ、強い核力。原子核という極小の空間の中で、巨大な力が働いていたのです。
ここから、人類は一つの重大な問いへ近づいていきます。もし原子核を作っている粒子たちが、これほど強く結びついているのなら――その結びつきの中には、いったいどれほどのエネルギーが隠されているのか。

その答えを示すことになるのが、アルベルト・アインシュタインのたった一つの式でした。E = mc² わずかな質量が、巨大なエネルギーに対応する。
原子核の世界と、エネルギーの世界が、ついに一本の線で結ばれようとしていました。
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