アトミック物語:第4話 原子の中心に何がある?――ラザフォードの金箔実験
原子は、小さな粒の中に物質がぎっしり詰まっている。そう考えられていた時代。しかし、ラザフォードの金箔実験が、その常識を覆しました。アルファ粒子のほとんどは金箔を通り抜ける。ところが、ごく一部の粒子が大きく曲がり、さらにごくわずかな粒子は後ろへ跳ね返った。そこから導き出されたのが、「原子の中心には、極めて小さく重い原子核がある」という驚くべき結論でした。原子の大部分は、ほとんど空間だったのです。では、その原子核はいったい何からできているのか?
20世紀のはじめ。原子の中には、電子という小さな粒が存在することが分かってきました。しかし、まだ大きな謎が残っていました。電子は、原子のどこにいるのか。そして――原子そのものは、いったいどんな姿をしているのか。当時、有力だったのは、J・J・トムソンの原子模型でした。

原子は全体として正の電気を持ち、その中に負の電気を持つ電子が埋め込まれている。まるで、正の電気を持つ柔らかな球の中に、電子が散らばっている。そんなイメージです。ところが、この模型を根底から揺さぶる実験が始まります。

中心にいたのは、ニュージーランド生まれの物理学者、アーネスト・ラザフォード。彼は、アルファ粒子という高速で飛ぶ粒子を使って、原子の内部を調べようとしました。実験に使われたのは、驚くほど薄い金の箔。その金箔に向かって、アルファ粒子を次々に飛ばします。

もしトムソンの模型が正しければ、アルファ粒子は原子の中をほとんど邪魔されずに進むはずでした。多少の方向の変化はあっても、大きく跳ね返されることなど考えにくい。

ところが――実験を観察していた研究者たちは、信じられない現象を目にします。ほとんどのアルファ粒子は、予想どおり、そのまま金箔を通り抜けました。しかし一部の粒子は、大きく進路を曲げた。そして、ごくわずかな粒子は――まるで壁にぶつかったかのように、後ろへ跳ね返ったのです。

これは、ラザフォードにとって衝撃でした。原子が一様に広がった構造なら、これほど強く粒子を跳ね返すことは難しい。ならば、原子の内部には、正の電気と大部分の質量が極めて小さな領域に集中しているのではないか。

ラザフォードは、原子の新しい姿を描きました。

原子の大部分は、何もない空間。そして、その中心に、極めて小さく、非常に重い「原子核」がある。その周囲を電子が取り巻いている。原子は、ぎっしり詰まった小さな球ではなかった。驚くほどスカスカだったのです。

これは、科学史上の大転換でした。目に見えない原子の内部に、さらに小さな「中心」が存在していた。しかし、ここで新たな謎が生まれます。
原子核は、なぜ正の電気を持つのか。その正体は何なのか。そして――なぜ、原子核の周りにある電子は、原子核へ落ち込んでしまわないのか。原子は、さらに深い秘密を隠していました。

その中心には、まだ発見されていない粒子があったのです。そしてやがて、原子核の中には、陽子と中性子が存在することが分かっていきます。原子の世界は、電子。原子核。陽子。中性子。という、さらに複雑な世界へと姿を変えていきます。しかし、この小さな原子核こそが、やがて人類が手にすることになる、巨大なエネルギーの入口だったのです。
次回予告 第5話「原子核の秘密――陽子と中性子」
原子の中心に、「原子核」があることが分かった。
しかし、その原子核の中には、さらに謎の粒子が隠されていた。
正の電気を持つ陽子。そして、電気を持たない中性子。
では、原子の重さはどこから生まれるのか?
そしてなぜ、同じ元素なのに重さの違う原子が存在するのか?
原子核の扉が、もう一度開かれます。
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