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モーゼ物語:第1話 ナイル川に流された赤子 

古代エジプト。イスラエルの民が増えることを恐れたファラオは、ヘブライ人の男児をナイル川へ投げ込むよう命じました。そのとき、一人の母親が我が子を救うために作った小さな葦の籠。ナイル川へ流された赤ん坊は、やがてファラオの娘に発見されます。その子の名は――モーゼ。
エジプト王宮で育つことになる少年の、壮大な人生はここから始まります。


古代エジプト。ナイル川の恵みによって、巨大な王国が栄えていた時代。

その国には、エジプト人だけではなく、遠い昔にこの地へ移り住んだイスラエルの人々も暮らしていました。しかし、時が流れるにつれて、イスラエルの民は数を増やしていきます。それを見たエジプトの王、ファラオは恐れました。「もし戦いが起これば、彼らは敵と手を結び、我々に背くかもしれない」

そこでファラオは、イスラエルの人々に重い労役を課しました。彼らは苦しみながら、町の建設やさまざまな労働に従事させられました。それでもイスラエルの民は増え続けました。ついにファラオは、恐ろしい命令を下します。「ヘブライ人の男の子が生まれたならば、ナイル川に投げ込め」
生まれたばかりの男児を救うことのできない、厳しい命令でした。

そのころ、レビ族の一人の女性が男の子を産みました。母親は、その子がとても美しい子であることを見て、三か月の間、隠して育てました。しかし、いつまでも隠しておくことはできません。

そこで母親は、葦を編んで籠を作り、そこに防水のための塗料を施しました。そして、その籠の中に幼い息子を寝かせます。向かった先は、ナイル川の岸辺でした。

母親は、愛する息子を手放すしかありませんでした。籠は水面に浮かび、葦の茂みの間へと静かに流れていきます。

その様子を、姉のミリアムが遠くから見守っていました。やがて、ファラオの娘が川へ降りてきました。彼女は水浴びをしていました。そのとき、葦の間に一つの籠があることに気づきます。侍女に籠を取らせると、中から赤ん坊の泣き声が聞こえました。
「これはヘブライ人の子です」
ファラオの娘は、その子を見て、哀れに思いました。

そして、その赤ん坊を自分の子として育てることを決めます。
そのとき、姉のミリアムが近づいて尋ねました。
「この子のために、乳を飲ませる女を呼んできましょうか」
ファラオの娘がうなずくと、ミリアムは母親を呼びに走りました。
こうして、死を免れた赤ん坊は、思いがけない形で実の母のもとへ戻されることになります。ファラオの娘は、その子を「モーゼ」と名づけました。

ナイル川に流された小さな命。それはまだ、誰も知らないことでした。
やがてこの少年が、エジプトを出るイスラエルの民を率い、歴史上最も知られた人物の一人になることを。モーゼの物語は、こうして始まったのです。
(つづく)


※本シリーズは聖書の『出エジプト記』を中心としたモーゼ物語を基本とし、古代エジプト・古代オリエントの歴史的背景を尊重して構成しています。(全30話予定)


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