【第3話】正答率90%では見えなかった――「さっきできたのに」の理由を答案から考えた
約1か月の全体正答率は90.1%でした。
ところが、例題で「3時30分」「4時30分」と答えた後、6時20分を示す時計にも、娘は「6時30分」と書きました。
数字だけを見れば、かなりできているように見えます。しかし答案へ戻ると、同じ「不正解」の中に、まったく違うつまずきが入っていました。
第1話では学習環境を変えた経緯を、第2話では紙の答案をAIで採点・記録する仕組みを書きました。今回は、その記録から見えたことを紹介します。
見つけたのは、娘の苦手単元の一覧ではありません。
娘がどのように情報を受け取り、どこで前の情報に引っ張られ、どのような説明なら進みやすいのか。その一端でした。
1. 649ページ、2,717問を記録した
7月20日から8月19日までに、採点対象として記録したのは649ページ、合計2,717問でした。
正解:2,449問
不正解:268問
全体正答率:90.1%
学習記録がある日:22日
1日平均にすると枚数は多く見えますが、1ページ当たりの設問が少ない短いプリントも含まれています。学習時間は休憩込みで最大2時間とし、枚数の達成は目標にしていません。
それでも、日付と単元をそろえて記録したことで、気になるところから実際の答案へ戻れるようになりました。
記録は、娘を評価するための成績表ではありません。
親である私が「次に何を説明するか」を考えるための索引になりました。

2. 時計が読めない、だけではなかった
単元別の結果を見ると、時計の問題で正答率が大きく下がっていました。
特に間違いが多かったのは、
今は○時45分です。15分後は何時何分ですか。
というような問題です。
現在の「45分」を覚えておき、そこへ「15分」を足し、60分になったら時刻を1時間進める必要があります。
時計の針を読むだけでなく、途中の情報を保ちながら、複数の処理を順番に進めなければなりません。
また、例題で「3時30分」「4時30分」と続けて解いた後、確認問題の時計が6時20分を示していても、「6時30分」と答えることがありました。
答案を並べて見ると、新しい時計を読み直す前に、直前の例題で繰り返した「30分」を当てはめたように見えました。
以前の私なら、
さっきできたのに、どうして間違えるのだろう。問題をよく読んでいないのではないか。
と考えていたかもしれません。
答案を並べてみると、娘なりに、例題で覚えた解き方を使おうとしていました。
ただ、前の情報をいったん手放し、新しい問題の条件へ切り替えるところで負担が大きくなるように見えました。
これは検査結果だけから断定できることではありません。それでも、ワーキングメモリに関する指標が相対的に低かったことと、日々の答案で見られる様子を一緒に考える手がかりにはなりました。
3. 例題は解けても、「仕上げ」で迷う
同じ傾向は、時計以外のプリントにも出ていました。
「すらぷり」では、一つの考え方を例題や確認問題で練習した後、「仕上げ」で複数の種類の問題が出てきます。
例題では解けていたのに、仕上げになると間違える。
仕上げでは、問題を解くだけでなく、
これは、さっきのどの解き方を使う問題なのか。
と、一問ごとに選び直す必要があります。
娘は、条件が変わったことを確認する前に、直前の例題と同じ方法で解き始めることがありました。
「例題が解けた」という結果だけでは、その考え方を別の形でも使えるかどうかまでは分からなかったのです。

そこで次回からは、「問題をよく読みなさい」と言うだけでなく、解く前の確認を次のように変えてみようと考えています。
何を答える問題なのかに線を引く
数字や条件へ丸を付ける
前の問題と違うところを口にする
どの解き方を使うか決めてから書き始める
頭の中だけで切り替えさせず、見る場所と考える順番を外へ出す方法です。
4. 正答率63.2%の日に混ざっていたもの
日別に見ると、8月12日の正答率は63.2%でした。
数字だけを見れば、この1か月の中でも特に「できなかった日」に見えます。
この日に取り組んだのは、点と点を線でつなぎ、見本と同じ図形を作る問題でした。
答案を確認すると、間違いの一つは、一度引いた線を消し切れず、2本の線が残っていたものでした。
親の目では、意図した図形は読み取れたため、考え方そのものは理解できているように見えました。一方、集計上は「見本と同じ完成形になっているか」という基準にそろえ、不正解として記録しました。
これはAIの誤判定ではなく、親が元画像を確認したうえで決めた採点結果です。
ただし、娘へ伝える際には、考え方の間違いと同じ扱いにはせず、「線を消し切れなかったもの」として分けて考えました。
別の問題では、見本の図形から、どの点とどの点を結ぶのかを読み取るところで間違えていました。
こちらは単なる消し忘れではありません。
ただし、これも娘だけの問題とは決められませんでした。
見本のどこに注目し、点の位置や線の向きをどう対応させるのか。私の説明が十分ではなかった可能性もあります。
正答率63.2%という一つの数字には、
問題の考え方が分からなかった
見本から必要な情報を読み取れなかった
消した線が薄く残っていた
親の説明が十分ではなかった
という、性質の異なる出来事が入っていました。
CSVに残るのは正解か不正解かという結果です。しかし、次の学習方法を考えるには、その不正解がなぜ起きたのかまで答案へ戻る必要がありました。
5. プリントの外でも、同じ傾向が見えた
自由研究で「宝石石鹸」を作ったときにも、よく似た様子がありました。
娘は、最初に説明書を読んで手順を理解するより、完成写真や途中の写真を見て、使いそうな材料を入れ始めようとしました。
どの材料を使うのか。どのくらいの量を入れるのか。どの順番で作業するのか。
そうした文章を十分に確認する前に、写真から「おそらく、こう作るのだろう」と判断し、作業へ移ろうとします。
やる気がないわけではありません。むしろ、早く作りたいという気持ちは強くありました。
ただ、一目で分かる写真に比べて、文章から複数の条件を読み取り、順番を保ったまま作業することには負担があるように見えました。
プリントと自由研究は別の出来事です。それでも、
例題や写真から全体を推測する
文章にある条件や分量を飛ばす
前の情報に引っ張られる
始めてから手順を確認し直すことが難しい
という共通点がありました。
そこで工作でも、説明書を一度に理解させるのではなく、使う材料を並べ、分量へ丸を付け、一工程ずつ読んで、終わったところへ印を付ける方が進みやすいのではないかと考えました。
写真を使わないのではありません。写真は完成形を知るために使い、分量と順番は別に確認できる形へ分けます。
6. 1ページ5円でも、習慣にはならなかった
第1話では、7月30日から、家庭学習のプリント1ページにつき5円を渡すようにしたことを書きました。
正解数ではなく、取り組んだことに対する5円です。
娘は貯めたお金で、雑貨屋の文房具や小物を買いました。
しかし、1ページ5円を始めても、毎日の学習習慣ができたわけではありません。
勉強をしたくないという気持ちは、今もあります。新しい仕組みへの興味が薄れると、取り組まない日も増えました。
記録期間の終盤、8月16日以降に学習したのは、16日と19日の2日だけでした。
7月30日の前後で学習日の平均ページ数を比べても、5円を始めた後に増えたとは言えません。プリントの難易度や問題数も異なるため、正答率の変化も5円の効果とは判断できません。
では、どのようなときに取り組むのでしょうか。
もう一つ、できる日とできない日の違いとして見えてきたのは、勉強を始めるまでの支援です。
わが家でも、言葉で「そろそろ勉強しよう」と伝えるだけでは、返事をしてもすぐ机へ向かえるとは限りませんでした。
そこで、取り組むプリントと教材を選んで机の上に開き、本人の様子を確かめながら、最初の一問を始めるところまで一緒に進むようにしました。
口頭で伝えるだけの日より、
取り組むものが決まっている
教材が机に開かれている
最初にすることが見えている
親が開始地点まで一緒に進む
という状態の方が、少なくともわが家では始めやすいように見えました。この方法でも毎回取り組めるわけではありませんが、「自分で始めなさい」と開始までの手順をすべて娘の中に持たせるより、最初の一歩を外から用意する必要がありました。
今回、娘が比較的取り組みやすかったのは、目標がすぐ近くに見えているときでした。
たとえば、
明日は雑貨屋へ行く。
という予定がある日です。
欲しいものがあり、財布にいくら入っているかが分かる。そして、あと何ページ取り組めば買えるかもしれない、と考えられるとプリントへ向かいます。
「夏休み明けの算数を頑張る」や「中学受験に向けて勉強する」という遠い将来の目標では、娘の行動にはつながりませんでした。
それよりも、「明日、雑貨屋で欲しいものを買いたい」という、今日や明日の具体的な目標の方が分かりやすかったのです。
1ページ5円は、勉強を好きにしたり、学習量や習慣を自動的に変えたりする魔法ではありませんでした。
それでも、「これをやると、自分の欲しいものへ少し近づく」という、本人に分かる理由を加えることはできました。

7. 記録から見えたのは、娘を変える方法ではなかった
約1か月の記録を残しても、娘が毎日進んで勉強するようになったわけではありません。
正答率90.1%も、学習方法の効果を証明する数字ではありません。
それでも、記録がなければ、私は今も「さっきできたのに」「問題をよく読んで」と言い続けていたかもしれません。
時計、図形、工作を別々の失敗として見るのではなく、前の情報から新しい条件へ切り替える場面や、複数の情報を順番に扱う場面に注目するようになりました。
勉強を始める場面でも、口頭のお願いだけで気持ちを切り替えることを期待するより、教材を開き、最初にすることを見える形にして、開始地点まで一緒に進む方が取り組みやすいように見えました。
1ページ5円についても、習慣化の成功とは言えませんでしたが、遠い目標より、今日や明日に結果が見える目的の方が取り組みにつながりやすいことが分かりました。
これらを並べたことで、娘を「できる・できない」で見るのではなく、情報をどのように受け取り、どこに負担がありそうなのかを考えられるようになりました。
変えるべきだったのは、娘の気持ちではありません。
一度に渡す情報を減らす。見る場所を示す。手順を紙へ出す。前の問題との違いを確認する。そして、本人に分かる近い目標を作る。
記録から見えたのは、娘を仕組みに合わせる方法ではなく、説明と環境を娘に合わせるための手がかりでした。
この3回では、家庭学習の方法を変えた経緯、AIで採点・記録する仕組み、そして約1か月の記録から見えたことを書きました。
この取り組みを家庭で試すとしたら、次のどれを詳しく知りたいでしょうか。
仕組みを知りたい方
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気になる番号を一つ、コメントで教えてください。同じような困りごとがあれば、一言添えていただけると今後の参考になります。
いただいた声は、今後の記事や、必要に応じて実践ガイドとして整理する際の参考にします。
※この記事は、一家庭で行った学習の記録です。正答率の変化から、学力の向上や特定の学習方法の効果を示すものではありません。
※WISCの一つの指標だけで、子どもの行動や学習上のつまずきを説明することはできません。記事中の内容は、検査結果と日々の様子を踏まえて親が考えた支援方法です。
※AIの判定には誤りが含まれる可能性があるため、元画像と公式解答を親が確認しています。
