旅行記③:ほっこり高知ひとり旅 〜1日目〜
2026年6月末、わたしは高知県を訪れた。
人生初の、四国上陸。一人旅。
あれから2ヶ月が経つが、高知旅行の思い出は私の中で、小さな宝物のような記憶になっている。
じんわり光を放っている感じである。
楽しかったなあ。
人のあたたかさに、たくさん触れた旅だったなあ。
色々な場所に行って、色々なことをした3日間だったけれど、とくに現地で出会った人たちとのやり取りにフォーカスして、あの思い出を文字にしてみようか。
1日目
6月末の日曜日、わたしは残してきた仕事のことを憂いながら飛行機を降り、高知の地に降り立った。
じめじめと蒸し暑い、真夏日。照りつける日差しが眩しい。
駅のホームを歩きながら、わたしは努めて、仕事モードから休日モードへと気持ちを切り替える。
初日は、高知市内を観光する予定になっていた。
せっかく来たのだから、めいっぱい楽しんで帰りたい。
なお、旅行先に高知を選んだ理由は、『おいしい鰹と鮎が食べたいから』だった。
観光ももちろん楽しむが、一番の目的は海産物である。
おいしいもの、たくさん食べられたらいいな。
市内では、ちょうど日曜市が開かれている時間帯だった。
折角なのでローカルフードを楽しみ尽くしてやろうと、日曜市の屋台で、高知名物のアイスクリンと、ひやしあめという甘い飲み物をいただく。
日差しで火照った身体に、冷たい食べ物と飲み物がありがたかった。
そのまま通りに沿って歩き、日曜市の屋台を巡ってみる。
野菜に、果物に、工芸品。色とりどりの商品が並べられている。
あ、これ、お土産によさそうだなあ。
とあるお店の工芸品をじっと眺めていると、店員さんに話しかけられた。
どこから来たの?と尋ねられ、東京です、と答えると、「遠いところからよく来たね」と驚かれる。
応対してくれたのは優しそうなおじいさんで、にこやかに商品の説明をしてくれた。
これください、と自分へのお土産を選んでみたら、おじいさんは
「おまけもつけちょるけんね」
と、根付ストラップがたくさん入った容れ物を出してきて、好きなものを選ばせてくれる。
え、そんな、いいんですか、はわわ。
と震えながら、ちゃっかりおまけを戴いてしまった。
このおじいさんが、高知で最初に話した地元の方だった。
私は次に、ひろめ市場というグルメスポットに向かってみた。
ここで高知の鰹を味わってみよう、という算段である。
Googleマップに示されたひろめ市場のピンに向かって歩き、入り口を探してみる。
あれ?
ドアがないぞ。
一通り辺りを見回してみたが、市場に入るためのドア的なものが見当たらない。
代わりに見つけたのは、カーテンのように下ろされた不透明のビニールに、ジッパーが取り付けられた、たぶん出入り口?のようなものだった。
縦に長いジッパーを開ければ、人が通れそうだ。
え、なんだこれ。これが扉なのかな?
開けていいものなのかな?
えーっと、これってほんとに出入り口?
大丈夫?入っちゃいけないとこだったりしない?
開けたら怒られたりしない?
ジッパーの前で暫しそわそわしていると、通りすがった女性が「入りますか?」と、さらっとジッパーを開けてくれた。
どうやら、これが出入り口で合っていたらしい。
ああああ、ありがとうございます。
私はぺこぺこと頭を下げる。
女性のおかげで、私は無事に市場に入り、鰹の塩たたきをいただくことができたのであった。
さて。
ひろめ市場を出た私は、Googleマップでたまたま見つけた面白そうな場所に寄ってみる。
その建物の名前は、オーテピア。
なんてことない、公立の図書館である。
図書館である、はずなのだが。
外観がとても、独特な形をしている。そして綺麗。
遠目にその姿を見て、最初は『市民ホールか何かかな?』と思っていた。
こんな風に偶然の出会いを楽しむのも、旅の醍醐味。
ということで、図書館に入ってみる。
どうやら比較的最近できた建物のようで、図書館の中は明るく清潔である。
明るい木目のブラウンと白を基調にした、ほっとできる空間が広がっていた。
そしてなんだか、建物の構造が面白い。
ひとつの大きな空間の真ん中に、ガラス張りの部屋がもう一つある?ような感じ?である。
なにこれ楽しい。
え〜、うわ〜。いいなぁ〜。
こんな図書館が近くにあったら、ワクワクして、毎日通い詰めちゃうだろうなぁ〜。
いいなぁ〜。
なんて、ワクワクドキドキ浮かれる気持ちと、羨ましがる気持ちを同時に抱えながら、私は並べられた本たちの間を歩く。
せっかくなので、地域コーナーの本棚を眺めてみたりした。
高知出身の作家さんの本が並んだ本棚を眺め、面白そうだなーと思った本のタイトルを、そっとスマホのメモ帳に書き留める。
今ここで本を借りることはできないけど、帰ったら、この本を探して読んでみよう。
旅先で出会った著者さんたちの本のタイトルをお土産にして、帰ってから本を読んで、楽しんでみる。
うん、なかなか素敵なアイディアなんじゃないだろうか。
えへへ。
高知市内は、路面電車が通っている。
ホテルへと向かう道中、私は来たときに買っておいた高知専用のICカード、『ですか』をピッとして、路面電車に乗り込んだ。
乗り慣れない路面電車のシステムにちょっとドキドキしながら、座席に腰掛けてみる。
柔らかな座面のクッションに、ふわっと体が沈み込んだ。
乗りながら様子をみてみたが、どうやら路面電車というものの基本的なシステムは、バスと一緒らしい。
次の駅で降りるというタイミングになったら、近くのボタンを押して運転手さんに知らせる、という形式である。
私はホテルの最寄り駅でボタンを押して立ち上がり、前方のカードリーダーに、また『ですか』をピッとする。
運転手さんに「ありがとうございました」を伝えながら、路面電車を降りた。
2日目へ、つづく。
