旅行記④:ほっこり高知ひとり旅 〜2日目〜
1日目はこちら↓
2日目
この日は電車で移動し、桂浜エリアを探索してみた。
まず最初に向かったのは桂浜水族館。
ここへ海の生き物を見に来た、はずなのだが、
この水族館、展示の解説や案内板がいちいち面白くて、
センスがありすぎる。
ちょっとこれは、展示してる側の人間が面白すぎるな??
入って割とすぐのエリアに、金魚がぎっしり泳いでいる水槽がある。
ありえんほどの密度で、泳いでいる。金魚が。
見た目のインパクトがすごい。
平日だったが家族連れがちらほら来ていて、
小さい子が金魚の水槽に餌をあげて、楽しそうにはしゃいでいたので、
私はそっと場所を譲り、微笑ましく(不審者にならない程度に)見守った。
館内に入ると、ウミガメ用の大きな水槽の真ん中に柱があり、
その全面に、『干物』『唐揚げ・天ぷら』などの文字と共に、たくさんの魚料理の写真が印刷されているのが見えた。
……いやいや、水族館の中に、魚料理の写真ばっかり貼るんじゃないよ!
と、心の中でツッコみながら、その珍妙な光景をカメラに収める。
最高だよ、ここ。
そんな感じで、のんびり水の生き物を眺めたり、
またオモシロ看板たちを写真に収めたり、
動きが速すぎてどう足掻いてもピントが合わないカワウソたちをどうにか激写しようとカメラ越しに格闘したりと、
ゆっくり心ゆくまで、水族館を満喫した。
さて、そんな桂浜水族館でのベストショットはこちら。

水族館を出て、そのまま桂浜の海をのんびり眺めたり、
お茶屋さんで可愛いお団子をいただいたりする。
ちなみに、途中で雨が降ってきたので、休憩コーナーでしばし雨宿りをしていたら、すずめさんが近寄ってきた。

さて。
桂浜エリアを満喫し、高知市内に戻ってきた私は、こう思った。
「おいしい鮎が食べたい」
と。
おいしい鰹は食べられた。
ちなみに、初日も2日目も、鰹の塩たたきを食べた。鰹、おいしい。
だがしかし、市内のどこへ行っても、鮎が売っていない。
お店のメニュー表には鮎の写真があっても、いざ頼もうとすると売り切れになっている。
わたしは、おいしい鮎と鰹のために、ここへ来たのに。
鮎を諦めたくない。
ということで、『ここなら鮎が食べられるかも?』という場所を調べて、訪れてみた。
そこは個人経営の、小さな居酒屋さんだった。
Googleマップを頼りに市内の路地裏に入り、
『大丈夫かなここ、入っていいのかな……?』と若干心配になりながら、恐る恐る店内に入ってみる。
なお、私はこれまで、明らかに個人経営の居酒屋さんというものに、入ったことがなかった。
そのため、お店に入るときはなんかもう、ド緊張していた。
異空間に足を踏み入れるような気持ちである。
早めの時間に入ったが、店内には既に数人のお客さんがいた。
カウンター席に案内され、とりあえず、メニューが手書きれたホワイトボードを見る。
ある。
鮎がある。
やったぜ!!!
というわけで早速、鮎と日本酒を注文してみる。
先に席へ到着した日本酒は、2合弱くらいの小さめの瓶に入っていた。
え、あれ、普段あんまり日本酒頼んだことないんだけど、日本酒って瓶で出てくるものだっけ?
徳利とかじゃなく?
あれ?
と、若干戸惑いながら受け取る。
ちなみに、私は酒は飲めるけど、習慣的には飲んでいない。
ほんとうに、たぶん数えても年に数回とか、それくらいの頻度でしか、酒を飲んでいない。
久々のお酒で、いきなり日本酒を、二合弱。
まあ、自分で日本酒を頼んだのだが。
大丈夫かな、飲みきれるかな、と若干心配になりながら、コップに日本酒を注ぐ。
静かな店内、狭いカウンター席の右隣では、大量の料理の皿を机に並べた女性が、スマホを弄っている。
左隣には常連さんらしきおじいさんが座っていて、何やら店主さんと話をしている。
知らない人たちの隣で、ちょっとそわそわしながら、ちびちびと日本酒を呑む。
そんな風にして待っていたら、待望の鮎が登場した。
「ちっちゃいから二匹」
と、お皿を渡しながら、店主さんがひとこと付け加える。
たしかにお皿の上には、きれいに丸ごと焼かれた鮎が二匹乗っている。

い、いいんですか、二匹もいただいちゃって。はわわ。
と、あわあわしながら、ちゃっかり受け取ってしまう。
久々に食べられた鮎は、癖がない味わいで、ほどよい塩加減で。
ああ、勇気を出してここに入ってよかったなあ、と思った。
ウキウキで鮎を食していたら、左隣の、常連さんらしき男性が話しかけてきた。
どこから来たの?と尋ねられる。
東京です、と答えたら、男性は驚いたような顔をした。
「自分も昔、東京にいたことがある」
東京では、どこどこの地域にいたんだ。
この地名は知ってる? ここは?
と、男性は様々な都内の地名を挙げる。
私は頷いたり、首を傾げたりする。
そうしてしばし東京トークを繰り広げていたが、
会話が落ち着いた頃、今度は右隣に座っていた女性が、
「あの」と、私に話しかけてきた。
私より少しだけ年上っぽいその女性は、
どうやら、京都からやってきた観光客だったらしい。
こちらに話しかけてよいものかと、タイミングを伺っていたのだとか。
女性が身の上話をしてくれる。
「私、大学を中退してて、シングルマザーなんですよ」
と、女性がさらっと打ち明けるので、私は驚いた。
小学5年生のお子さんがいるらしい。
「実は、私も大学中退してて、母がシングルマザーなんです」
と、私も打ち明けた。
大学を中退して、シングルマザーになった彼女と、
シングルマザーに育てられて、大学を中退した私。
「なんか、大変なところだけ、ちょこちょこ似ちゃってますね」
かなしいような面白いような、不思議な気持ちで私は笑う。
女性は「色々ありますよね〜」と、
やわらかく、朗らかな笑みを浮かべた。
そうだね。
人生って、色々あるね。
女性はビールを追加注文して、
「よ~し、今日は酔い潰れるぞ〜!」と、高らかに宣言する。
つよい。
ここに来る前に、漢方を飲んできたんですよ、と女性が話す。
ここでお酒とお料理を楽しんで、最後は近くのお店のしじみラーメンでシメて、
徒歩で帰れる距離にあるホテルに帰って、
明日の朝は遅めに、11時にチェックアウトする予定なのだと。
酒に全力投球したプランである。
ガチである。つよい。。
気づけば店内の客は、少し増えてきていた。
観光客も常連客も入り混じって、なごやかに談笑し合っている。
私の左側の常連客は、2人に増えていた。
私が市の中心部で鰹を食べてきた話をしたら、
2人の常連客が口を揃えて、「この辺の鰹はあんまり良くない」と言う。
ええ、うそぉ。おいしいと思ったけどな。
どうやら高知には、もっとおいしい鰹が食べられる場所があるらしい。
その場所の名は、『中土佐町』。
地元の人たちもわざわざ食べに行くくらい、有名なのだとか。
中土佐町、中土佐町、と、私は、2人から聞いた地名を頭の中で繰り返す。
鮎の他にも、色々なメニューを食してみる。
折角なので、一度も食べたことがないものを優先して注文してみた。
こちらはイタドリ。呪術廻戦でしか名前を聞いたことがなかった植物だ。

食べてみると歯ごたえが割としっかりしてて、
シャキシャキと心地よい感触がする。
え、うっま。
そしてこちらは、りゅうきゅうの酢の物。

ハスの仲間だそうで、さわやかな味わいである。
(いや、酢の物なんだから、さわやかなのは当然っちゃ当然なのか?)
そしてこちらは、『あめご』というメニュー名になっていた焼き魚。
地域によってはアマゴとも呼ばれている魚、だと思われる。

見た目は鮎にそっくりである。
こっちの方が、見た目も身の食感も、ちょっとふっくらしてる感じ。
鮎以外の川魚、初めて食べたかもなあ。
私、好きな食べ物を聞かれたら大体「鮎の塩焼き」って答えてるんだけど、
ちょっとこの『あめご』も、同率くらいで好きな味わいかもしれない。
まあ、ジャンルとしては鮎とほぼイコールかもしれないけどね。
すごくおいしいね。
え、いいな〜〜。川魚が美味しい地域って、いいな〜〜。
普段滅多に食べる機会のない川魚料理を、私は満喫する。
店内の会話はどんどん弾んでいく。
私の2つ左隣に座っていた常連さんは、
どうやら昔、私の地元の地域で働いていたことがあるらしい。
まさかこんな遠いところで、地元トークが通じる人を見かけるとは。
びっくりである。
後ろのテーブル席にやって来ていた常連さんは、よくよく話を聞いてみると、
私の右隣の観光客の女性と、共通の知り合いがいたらしい。
「こんな奇跡があるなんて!」と、話が盛り上がっている。
世間って、狭いんだなあ。
今回の旅行、折角だから旅先で出会った人となにか話せたらいいなぁと思ってはいたけれど、
まさか、人見知りの自分がこんなに打ち解けて色々喋れるだなんて、想像すらしてなかった。
これが、酒の力なのか。
旅先という、非日常空間の力なのか。
はたまた、この土地の文化と、地元の人々の朗らかな人柄に影響されたのか。
飲みきれるかなと心配していた日本酒の瓶は、いつの間にか空になっていた。
なんだか名残惜しいが、私は一足先にお暇することにする。
右隣の女性に声をかけると、
「またぜひ、ご縁があれば!」
と、彼女は明るく会釈した。
「そうですね、ご縁があれば!」
私も笑って手を振ってみる。
旅先でたまたま出会った、名前も連絡先も知らない、住んでる地域もぜんぜん違う人。
たぶん、もう二度と会うことはできないだろう。
でも、きっとどこかで、縁は繋がっている。
だってどうやら世間は、こんなにも狭いみたいだもんね。
ほろ酔いのまま、帰りの路面電車に乗り込む。
それからホテルに帰っても、
「めっちゃ楽しかったー!」という気持ちがずっと残ってて、
浮かれた心地のまま、眠りについた。
つづく。
