#21【実録】ある日突然ベンツの請求がきた話[後編]
裁判所からきた書類。
何度見ても
出頭と書かれていた。
あの請求書……本物だったの?
私の頭の中では
いろんな考えが
浮かんでは消えていく。
いくら考えても
答えは出なかった。
———
そんな時だった。
「ただいま」
旦那が帰ってきた。
その頃の旦那は
「スカウト」という名の
遊びなのか仕事なのか
よく分からないことをしていて
不定期に
家に出入りしていた。
仕事を始めたとはいっても
家にお金を入れることは
一度もなく
私からすれば
無職と何も変わらなかった。
———
私は
帰ってきた旦那の顔を見た。
裁判所から届いた書類。
ベンツの請求書。
そして
私名義の契約。
「裁判所から
呼び出されたんだけど」
唐突に発していた。
「え?何?俺?」
「ううん。私。」
「なにかしたの?」
「ベンツの件で
オリコから…」
———
旦那の顔が一瞬だけ歪んだ。
でも
すぐに元の顔に戻った。
「あー。あれね。」
その一言で
嫌な予感がした。
「詐欺だって
言ってたよね?」
「…いやさー、実は」
旦那は話し始めた。
———
私の名義で
先輩の車屋から
ベンツを購入したことにして
ローンを組んだこと。
オリコから
車屋に振り込まれたお金を
先輩と山分けしたこと。
そして
ベンツは実際には
購入していないこと。
さらに
ベンツを事故に遭わせたことにして
保険金で
ローンをチャラにしようと
計画していたこと。
———
何を言っているのか
よく分からなかった。
あまりにも非現実的すぎて
そして
自分の頭の中にない
考えすぎて
だから
怒るとか。
呆れるとか。
責めるとか。
そんな感情すら追いつかない。
あの時の私は
ただただ…
聞くことしかできなかった。
———
出頭日当日。
真相を知っている以上
全部話して
謝らなければと思った。
親友の運転で
約3時間半の道のりを
裁判所へ向かった。
旦那に頼る気は
もう更々なかった。
———
裁判所に着いた。
初めて入る裁判所。
預け先がなかった
1歳の娘を抱いて
私は出廷した。
何を聞かれるんだろう。
私がやったことじゃないのに…
でも
書類には私の名前がある。
不安に押しつぶされそうになるのを
必死で踏ん張った。
———
そして名前を呼ばれた。

裁判が始まってすぐ
「一度、別室で話し合ってください」
と言われ
私は2階の別室へ移動した。
そこで
相手の弁護士さんとオリコの方に
事情を話した。
そして謝った。
———
一通り話したところで
相手の弁護士さんが
口を開いた。
「事情はわかりました。
まだその旦那さんとは
ご結婚されているんですよね?」
「…はい」
「旦那さんのやったことは
立派な犯罪です」
「はい」
———
「そして今回の
1番の被害者は
オリエントコーポレーションさんです。
このまま裁判を
続けてもいいですが
裁判となると
費用もかかりますし
最悪の場合
旦那さんと共犯として
奥様まで
捕まる可能性があります」
その一言は絶望だった。
———
娘の顔を見た。
こんな時でも
いい子にしていてくれてる娘。
この子を犯罪者の子にしたくない。
ましてや
両親揃ってなんて…
堪えていた涙が流れた。
———
「どうしたらいいですか?」
「こちら側としては
お金さえ払って頂ければ
これ以上は
問題に致しません」
こうして私は
見たこともないベンツのローンを
払うことになった。
#22【実録】涙も枯れた…闇カジノで借金された話につづく…
【番外編】うちの父の話もどうぞ。
