ルージュで伝言、来年の夏休み前の私へ。
二人の娘の母である私は、7月に入ると慌てて「子ども ワークショップ 東京」や、「お出かけ 室内 安い」と検索しだす。著名人が来るようなスペシャルなワークショップは初夏に応募を締め切られているし、「これなら行ってやってもいいか」なイベントは大抵土日開催。
いやいや、平日ワンオペ時でないの意味ないのよ。
そうしてろくな計画も持たない丸腰のまま、終業式が前のめりに倒れ込んできて、娘たちの夏休みは始まる。40日の専属保育士期間。白目だ。ママ友たちには、「いざとなったら白目剥いて気絶しよう」なんて言って互いの健闘を祈りながら手を振る。
案の定、白目剥くことはあった。
でも今年の夏は、一つ幸せなことに気づいた。
夏休みは、娘たちが赤ちゃんに戻るのだ。
特に小3・8歳の娘が。
普段は小学校・幼稚園という社会に揉まれている娘たち。うちではほぼ地上波は見ないのに、気付けば「すきすーぎて、めっつぅぅ!」っておでこにチョリス⭐︎してるし、逆にろくにメンバーの名前も覚えていないのに、「長女ちゃんの推しはぁ、HANA♡」とか言ってたりする。
推しが欲しい。ボンドロシールが欲しい。ヘソだしたい。ママ、その口紅塗って。
そんな彼女の姿は、おかしく、かわいく……でも確かに、ざわっとする。夫から女の影を感じたことはないが、娘からは「社会の影」を感じる。成長は喜んであげるのがポリシーなんだけれど……でもさ、無理して背伸びはしなくていいんだよ?
娘たちの日焼けが進むにつれ、そんな社会の気配みたいなものが、だんだん消えてくる。
寝る時間が遅くなっても、次の日寝坊しても、大抵のことは「まぁいっか」。朝、仕事にいく夫を寝室で手だけ上げて見送って、わたしは冷房の効いた部屋で布団にくるまりながら、娘たちの寝顔をじーっと見る。
娘たちの閉じた目が開く瞬間を見るのが好きだ。薄目で、ゆっくりママを確認する。長女はふにゃっと笑って、次女はぶすっと口を尖らして、でも二人ともうにうにと私の布団に入ってくる。
先週、娘たち二人と無印に行ったときのこと。なんかやたら買い物しづらいな〜って思ったら、長女と次女が両腕に巻き付いていた。ただ手をつなぐだけではなく、ぶら下がったり、撫でさすったりして、通路も歩きづらいし商品も手に取れない。
「もー!見づらいから離れて!」と、ペンの試し書きコーナーに彼女たちを追いやる。大人しくなった娘たちを遠目に、落ち着いて口紅を吟味する。するとたちまち、エアコンの冷気で腕が冷たくなってくる。

母として、夏休み唯一頑張ったと言えるのは、しゃーなしに数回連れて行った市民プールだ。
ふと思いついて、「水の中だとママをおんぶできるんじゃない?」って言ったら、娘たちの目がキラッと輝いた。「やってみる!」と、彼女たちは私の脚だけ脇に挟んで引きずりだす。顔を水につけたくない私は、クリオネのように腕で必死に水を掻く。長女と次女がそれを見てケラケラ、キラキラと笑っていた。
細い腕、小さな手。
ずっと変わんない、目尻の下げ方。
だんだんと黒光りする娘たちに透けて、赤ちゃんだった彼女たちがたくさん見えた夏休みだった。
結局、ワークショップなんて一つも行かなかったな。
無印で買った新しい口紅で、来年の私へ伝言だ。
夏休みは、娘たちの中にいる「赤ちゃん」を見ること。
毎年、これだけで十分だよ。
こちらの記事は、「#エッセイしりとりコンテスト」として繋いでいただいたバトンを受け取り、書いたものです。
⬇️マイキーさん主催の、コンテスト概要
今回、私に「る」で繋いでくださったのは、桃瀬めぐさんです🍑
ご自身の感じたことを、文章に変換するのがうますぎると同時に、感じたこと(例えそれがかっこ悪いことでも)から絶対に逃げないという姿勢がマジでかっこいい書き手さんです。あと「めぐ節」とも言える、日常をおもしろおかしく描くエッセイが最高です!夏休みという子育て繁忙期にも毎日更新を続けたらして大尊敬……👏✨
桃瀬さん、楽しいバトンを回していただきありがとうございました☺️
企画の締切が明日までなので、私からバトンをお渡しするのは控えますね〜!
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