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数学Ⅱ_第1章_式と証明 No.7

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1_7 恒等式

例えば、次の2つの等式を見てください。

$$
(x+1)(x-2)=0  (x+1)(x-2)=x^2-x-2
$$

これらの等式を満たす $${x}$$ の値を考えると、左の等式は $${x=-1,2}$$ で成り立ちますが、それ以外の $${\bm{x}}$$ の値では成り立ちませんね
一方で右の等式は、左辺と右辺が同じ式を表しているので、どんな $${\bm{x}}$$ の値を代入しても成り立ちます

このように、特定の値でしか成り立たない左のような等式を「方程式」といい、どんな値でも成り立つ右のような等式を「恒等式こうとうしき」といいます。
一般的に式の展開や因数分解、分数式の通分や部分分数分解などの式変形によって得られる等式はすべて恒等式となります。

今回はこの「恒等式」について学んでいきます。



両辺が $${x}$$ についての多項式で表されている恒等式には、次の性質があります。

性質2については、右辺を「 $${ \bm{0} \cdot x^2+\bm0 \cdot x + \bm0 }$$ 」と考えれば、性質1から導くことができます。

これらの性質を活用して、多項式の係数を定める問題を解いてみましょう。


【問題】
等式  $${7x-2=ax(x+1)+b(x+1)(x-2)+c(x-2)x}$$  が $${x}$$ についての恒等式となるように、定数 $${a,b,c}$$ の値を定めよ。

この等式が恒等式であれば、左辺と右辺の同じ次数の項の係数がそれぞれ等しくなります。まず、右辺を展開して $${x}$$ について整理しましょう。

$${ax(x+1)+b(x+1)(x-2)+c(x-2)x}$$
 $${=ax^2+ax+bx^2-bx-2b+cx^2-2cx}$$
 $${=(a+b+c)x^2+(a-b-2c)x-2b}$$

右辺を展開して整理すると上記のようになるので、左辺の $${7x-2}$$ と係数を比較すれば、次の連立方程式が得られます。

$$
\begin{cases}
  a+b+c &=   0 & \cdots  ①\\
  a-b-2c &=   7 & \cdots  ② \\
  -2b &= -2 & \cdots  ③
\end{cases}
$$

後は連立方程式を解けば $${a,b,c}$$ の値を求めることができます。

$${-2b=-2}$$ から $${b=1}$$
これを①と②に代入して整理すると、
 $${a+c=-1 \cdots}$$ ④
 $${a-2c=8 \cdots}$$ ⑤
④-⑤より $${3c=-9}$$
すなわち $${c=-3}$$
④より $${a=-1-c=-1-(-2)=2}$$
したがって $${a=2,b=1,c=-3}$$

このように、多項式を整理して係数を比べる解き方を「係数比較法」と呼びます。恒等式の性質から係数を決定する問題では、この方法が基本となります。


【問題】
等式  $${\displaystyle \frac{x+4}{(x+1)(x+2)}=\frac{a}{x+1}+\frac{b}{x+2}}$$  が $${x}$$ についての恒等式となるように、定数 $${a,b}$$ の値を定めよ。

与えらえた等式が分数式の場合も考え方の基本は同じです。まず、分母を払うために両辺に共通の多項式を掛けて、分数式を多項式の形に整理します。

両辺に $${(x+1)(x+2)}$$ を掛けて、
 $${x+4=a(x+2)+b(x+1)}$$

後は先ほどと同じように係数比較法で解きます。

右辺を $${x}$$ について整理すると、
 $${x+4=(a+b)x+(2a+b)}$$
係数を比較して、
 $${a+b=1 \cdots}$$ ①
 $${2a+b=4 \cdots}$$ ②
②-①より $${a=3}$$
①に代入して
 $${b=1-a=1-3=-2}$$
したがって $${a=3,b=-2}$$

余談ですが、この問題の左辺の分数式を右辺のような「いくつかの分数式の和や差」で表すことを部分分数分解といいます。

これは、数学Bの「数列」の単元でも登場するので、今のうちに覚えておきましょう。

【数学B:一般項が分数式の数列の和(未完成)】


恒等式の問題を解く際、「係数比較表」の他に「数値代入法」と呼ばれる解き方もあります。問題の形によっては、こちらの方が圧倒的に早く解ける場合があります。

【問題】
等式  $${7x-2=ax(x+1)+b(x+1)(x-2)+c(x-2)x}$$  が $${x}$$ についての恒等式となるように、定数 $${a,b,c}$$ の値を定めよ。

先ほどはこの問題を「係数比較法」で解きましたが、3つの文字を含む連立方程式を解くのは少し大変でしたね。
ここで、恒等式が「どんな $${\bm{x}}$$ の値でも成り立つ等式」であることを思い出しましょう。この性質を利用して、計算が楽になるような $${x}$$ の値を代入し、文字を減らしていくのが「数値代入法」です。

右辺の式をよく見ると、$${x,x+1,x-2}$$ という因数が組み合わさっていますね。

$$
ax(x+1)  b(x+1)(x-2)  c(x-2)x
$$

そこで、$${x=0,-1,2}$$ をそれぞれ代入してみましょう。すると、特定の項が $${\bm{0}}$$ になり、文字を消去することができます

$${x=0}$$ を代入すると、$${a,c}$$ が消えて、
 $${7 \cdot 0-2=b \cdot (0+1) \cdot (0-2)}$$
すなわち $${-2b=-2}$$ から $${b=1}$$

$${x=-1}$$ を代入すると、$${a,b}$$ が消えて、
 $${7 \cdot (-1)-2=c \cdot (-1-2) \cdot (-1)}$$
すなわち $${3c=-9}$$ から $${c=-3}$$

$${x=2}$$ を代入すると、$${b,c}$$ が消えて、
 $${7 \cdot 2-2=a \cdot 2 \cdot (2+1)}$$
すなわち $${6a=12}$$ から $${a=2}$$

係数比較法と比べて、かなりスピーディーに解けましたね。こんな感じで、数値代入法は問題によっては暗算でも解けてしまうほど強力です。

しかし、大きな注意点があります。

実は、上記の手順だけで終わらしてしまうと、解答としては不十分なんです。何故なら、この解き方では十分性が保証されていないからです。


数値代入法で求めた結果は、あくまで「 $${\bm{x}}$$ が $${0,-1,2}$$ のときだけは成り立つ」ことを保証したにすぎません。恒等式の定義は「すべての $${x}$$ について成り立つこと」でしたので、$${\bm{0,-1,2}}$$ 以外の値でも等式が成り立つことを示す必要があります

そのため、数値代入法を使った場合は、最後に必ず次のような「逆の確認(十分性の確認)」の記述が必要になります。

逆に、これらの値を元の式に代入すると、右辺は
$${2x(x+1)+(x+1)(x-2)-3(x-2)x}$$
 $${=(2x^2+2x)+(x^2-x-2)+(-3x^2+6x)}$$
 $${=7x-2}$$
となり、左辺と一致するため、この等式は $${x}$$ についての恒等式である。
したがって $${a=2,b=1,c=-3}$$

このように、数値代入法は「計算は楽だが、論理的な詰めが必要」という特徴があるので、注意して扱うようにしましょう。



次回は等式の証明について学びます。

演習をしたい方は[こちら]へ

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